不在者財産管理人をえらぶ!

不在者財産管理人を選ぶ

行方不明の人がいたら、もう遺産分割は
できないの??

 

遺産分割協議書にハンコをもらおうとしたら
連絡がつかずその人の家族にたずねても
一体どこにいるのかわからない、
と言われるということが、まれにあります

 

連絡がつかない人がいると遺産分割協議は
できません。
遺産分割協議には、相続人全員の同意と
署名捺印および印鑑証明書が必要なので
たったひとり足らないだけで、
この協議をすることはできないわけです

一部の相続人だけでされた遺産分割協議は
無効です

 

こうなると行方不明の人が帰ってくるまで
遺産相続ができないのではないか、と
愕然とします。
未来永劫、出来ないのかも!  

でも、大丈夫。

 

不在者(ふざいしゃ)財産管理人を選任し
その遺産分割協議をしてもいいという許可
をもらいさえすれば、OKです。
いずれも家庭裁判所の審判手続きです

 

選任申立

 

家庭裁判所に対して申立をします

管轄 不在者の住所地・居住地・最後の
住所地を管轄する家庭裁判所

申立できる人 利害関係人
(推定相続人・配偶者・債権者など)か
検察官

必要書類 
申立人と不在者の戸籍・住民票
不在者の不在であることを証する書面
(郵便が不到達であるなど)
財産目録
不動産評価額証明書
不動産登記事項証明書
利害関係を証する書面
管理人候補者の戸籍住民票身分証明書
登記されてないことの証明書
収入印紙 800円
切手 1000円位 (裁判所によって違う)

申し立て後1ヶ月ほどで問題なければ
(裁判所によってはもう少しかかる)
財産管理人選任の審判がおります

管理人候補者 
利益相反するおそれのある人は候補者としない方が得策です

例えば、
遺産分割協議のために管理人を
選ぶのであれば、
共同相続人を管理人としてしまうと
利益相反行為となって、
権限外行為の許可がされないことになって
しまいます。

遺産分割だけのために選任するのであれば
管理人の資格は特に問われないので、
候補者は親戚の人とか、知人とかで
問題はありません。
成人していた方がよいとは思いますが。

一方、
遺産分割ではなく財産の管理が目的であれば
弁護士とか税理士とか、
それなりのスキルのある人を
候補にたてた方がよいかと思います

 

裁判所の許可が必要

 

家庭裁判所によって選ばれた
不在者財産管理人は、不在者の財産を
管理する義務を負うため、
通常の管理行為には
裁判所の許可はもちろんいりません。

  • 単なる保存行為民法103条 保存行為、利用改良行為
    を始めとして、
  • 不在者本人が売却した不動産の
    所有権移転登記手続き、
  • 期限の到来した債務の弁済についても
    特段の許可は不要です

ですが、
その権限を超える行為については
裁判所の許可が必要です

売買 交換 抵当権の設定 
賃借権の設定・更新 遺産分割 
訴訟行為  (応訴については許可不要)

 

不在者管理人は、
その不在者である相続人に代わって
遺産分割協議に参加することができます
正確に言えば、事前に許可を受けた
協議内容を記載した分割協議書に
署名押印できるだけ

つまり、
どのような遺産分割協議をなすのかについて
家庭裁判所の許可が必要です

 

遺産分割協議書はこのように

 

相続人全員の同意があれば、
不在者がおらず、相続人本人全員が協議に関われるという場合
相続人Aだけが遺産を取得し、残りの
BCDEは何も取得しないという協議は
全く問題なく可能です。
全員が同意していれば、
どんなふうに分けてもOKなので。

ですが、
不在者の代わりにその管理人が
参加する場合は、そういうわけには
いきません。

 

この制度はそもそも
不在者及びその残留財産につき
利害関係を有する第三者の利益を
保護するため
にあるからです。

 

なので、
不在者財産管理人が選任されている場合は
不在者の利益を害することの無いように
遺産分割協議に際して
裁判所の許可を得ることが必
要、
とされているわけです。

よって、
法定相続分を代償金としてうける
という内容で許可がされることが
多いようです

 

A案
妻A子がすべてを取得し、代償金として
相続人E(不在者)は金〇〇円を取得する

というような内容になります

 

 

または、
不在者が帰ってくる見込みがほとんどない、
と判断される場合は、本来ならば失踪宣告を求める
事案のときに、それだと時間がかかりすぎるため
比較的短時間で登記が可能となる不在者の制度を使う場合など

帰来時(きらいじ)弁済型と言われる、

B案
妻A子がすべてを取得し、将来不在者Eが
帰来したときは、A子はEに対して
金〇〇円を支払う

とされることが多いようです

 

 

両者の違いは、

A案だと、不在者Eの取り分を保管して
おくのは不在者財産管理人です
よって不在者が帰来するまで管理人の職務は終わらない

B案では、取り分を保管しておくのは、
相続人A子です
遺産分割協議の終了とともに管理人の職務は終了

 

帰来時弁済型にしたいというときでも、
財産が多額である、とか、
不在者に子どもや孫がいる、などの場合は、
難しいようです。(裁判所の判断)

なので、

遺産分割協議の内容については、
許可申立に際して事前に裁判所と
相談しておいたほうが良いかもしれません

 

では、登記の時に必要なものは

 

ちなみに、遺産分割協議書に押印するのは
管理人の実印であり、
添付する印鑑証明書はその印鑑証明書です

 

これを用いて相続登記をするときは、

  • 遺産分割協議書(全員の印鑑証明書つき)
    許可を受けた内容と同一であること
  • 不在者財産管理人選任審判書
  • 権限外行為の許可書(分割協議)

以上3点が必ず必要となります

 

 

おまとめ

 

不在者財産管理人の申立はわりと簡単に
することができます。

書類を集めるのが多少面倒かもですが。

 

司法書士も、
選任申立及び権限外行為許可申立書類の
作成ができます。

ご相談はどうぞお気軽に。