建物の登記をしないと罰金!?

建物の登記をしないと罰金がくるのでしょうか?

 

 

法律上、過料の規定があります

 

建物を新築した人や所有権を取得した人は、その日から1ヶ月以内に建物の表題登記を申請しないと、過料(いわゆる罰金のこと)に処せられます。
(不動産登記法第47条)

 

 

ですが、知り合いの土地調査士さんに聞いたところ、これで過料になった人は聞いたことがない、ということ。
(開業時に数人の調査士さんに聞いてみました。20年以上前です)
もしかして、努力目標?なのかもです。

 

表題登記とは、何なの?

 

ところで、建物の表題(ひょうだい)登記とは、
司法書士ではなくて、土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)の仕事です

 

登記記録が全くない状態のところへ、この登記をすることによって、この建物の登記記録が国に備えつけられることになります

 

ここにこんな建物がありますよ、の登記

 

誰によって建てられたのか(工務店とか大工さんとかではなくて。)も、
登記されます
たいていは、お金を出した人。または、
誰かに家を建ててもらった人の名前が載ります)

  • 所在地千葉県茂原市上の林184番地
  • 家屋番号184番地1
  • 構造 軽量鉄骨造二階建て床面積1階150㎡2階150㎡
  • 新築年月日平成元年10月10日
  • 茂原市上の林184番地 片山りえ

 

というような感じで登記されるのですね

 

これだけでは、まだ、識別情報ができない

 

これだけだと、まだ、登記識別情報通知は、出来ていません。

なので、所有権を移転したり、抵当権をつけたりすることは、この段階ではまだちょっと待ってね、状態です

 

必ず、建物の保存登記が必要なのか

 

表題登記が完了してその後、ようやく、所有権の登記が司法書士によってされることになります。これによって、登記識別情報通知がされます。

 

念の為ですが、土地家屋調査士及び司法書士は業としてこれらの業務を行うことのできる職業であって、ご自分で建てた家屋を、ご自分で表題登記や建物保存登記をなさることは、全然、問題ありません。

 

 

で、罰金はこないとしても、表題登記そして保存登記をやらなくてもいいのか、という問題です。

 

未登記だと税金はどうなるのか

 

まず、課税関係をご心配になるかたがいます。

市役所から、「建物ができたら登記をするように」という指導をうけたと言う話を聞きます。

でも、建物が建ったら、登記の有る無しに関係なく、ほぼ漏れなくきちんと固定資産税の請求はきます。

むしろ、建物を壊してしまっても、課税され続けることは多いです。

この場合は、その旨市役所に伝えるだけで大丈夫です。

 

表題登記・保存登記をしないことのデメリットは?

 

抵当権を付けられない

 

建物を担保に融資を受けるにあたって、多くの場合は、抵当権設定の登記がされます。理論上は、建物を担保に融資を受けるのは、建物があればOKなのですが。

万が一、に備えて、抵当権の登記をします。
万が一、というのは、貸したお金を返してもらえないときのことですが、登記がされていれば、即、不動産競売を申し立てることが可能なのです。

これが、どういうことかというと、
通常、不動産を担保に貸付をして、返してもらえないときには、裁判を起こしてそれに勝訴してからでないと競売にかけることはできません。
おそらく、早くても数ヶ月はこのためだけに費やされることになります。

ですが、抵当権登記がされていると、即、競売にかけることができるのです。

貸した方にとっては非常なメリットがあるため、実務上は抵当権をつけることが普通です。

つまり、建物の登記をしてないと、融資を受けられない、ということになります。

 

 

所有権移転の登記ができないこと

 

所有権の移転は、その旨の口約束だけで有効です。さらに、売買契約書もあれば、大丈夫なような気もしますが、やはり、登記簿にそれが書かれていて欲しいとか。第一、権利証(登記識別情報通知)がないのでは、やはり、心もとない気がしたりします。
そのような、もっぱら買い手側の事情により、建物の保存登記を求める方がいます。でも、
建物の表題登記がされてないとそれができないのですね。

 

要は、新築したばかりの建物であれば、土地家屋調査士にたのんで表題登記をしてもらい、そのまま司法書士に建物保存登記を依頼すれば、それで、OKなのです。

 

ですが、

 

登記したくてもこんな事情が、、、

 

新築でない建物の場合。ときどき、困ったことが起こります。

 

大きな敷地に以前から古い母屋が建っていて、このほど、その脇に、長男夫婦が銀行融資を受けて、家を新築した。というような場合。

銀行は、多額の融資の担保として、
その敷地全体と新築家屋、さらに、以前からの古い母屋も必要である、
と判断しました。

 

新築建物を登記するのは、多くの場合簡単にできます。

 

敷地も、相続登記が完了していれば、これに抵当権をつける登記は簡単です

 

問題は、以前からある古い建物。

 

この古い建物は、表題登記はなされていました。
先々代の名前です(ずっと昔に死亡)

 

ここが、現存している方の名前であれば、そのまま保存登記をするだけなので、問題はないのですが。

 

目的は、抵当権を付けて融資を受けること

 

そのための方法は、

 

1 建物を壊してしまう

当たり前ですが、ものがなければ、登記はできません。

 

2 大きな敷地を、新築家屋部分と古い建物部分とに分割してしまう
(土地分筆の登記を行う)

そうすれば、その古い建物及びその敷地部分に抵当権を付けなくてもよい可能性があります(担保価値の問題がありますが)

 

3 先々代 の相続人全員から登記用の書類をいろいろもらう

付き合いのない人もかなりいるのではっきりとはわからないが、たぶん、30人から40人くらいになりそう、とのことです。となると、ちょっと現実的ではないです。

 

で、以上を踏まえて依頼人との協議の結果、次のようになりました。

1の、壊してしまう、のは、論外でした。
古いけれども立派な建物で、実際に今も年寄り夫婦が居住しています

2の、敷地を分割する案は、銀行によって却下されました。
担保価値が足らなくなる、のが理由です

 

で、どうにもこうにも、3の、相続人の全員から書類をもらって、手続きをすること以外に妙案が浮かばないため、その方向で行かざるを得ません。

そして、

約2ヶ月近くかかって、戸籍をそろえました。

 

集めた戸籍は厚み約8から9センチ。相続人の数、35名。
亡くなった人たちにそれぞれ何人もの子孫があって、皆、健在です。
この時点で、申し訳ないことですが、当職は、
経験上、この事案がおそらく不首尾に終わることを予感しました。

当事者が二人しかいなくても駄目な時は駄目ですが、これだけ人数が多いと、しかも、関係性がかなり、遠いものになっている場合は、全員から書類をいただくことは、とても難しいです。

先々代には、別れた妻がいて、その妻との間にも子が何人かいました。
その子達が全員亡くなっており、
さらにその子達(先々代から見ると孫)から、書類をもらわないといけないわけです。

別れた妻はその後再婚して遠くの地へ嫁ぎ、元の配偶者であった先々代及びその一族とは、全く行き来がないという、このような状況はままあると思うのですが、こうなると、孫同士は、どう考えても他人です。

 

この状況で、孫の内の一人である依頼人の名義にするための書類が必要なのです。

具体的には、

  • 遺産分割協議書(相続権ある人全員の実印での署名捺印)
  • 印鑑証明書

    が必要です。

関係の薄い、ほとんど気持ち的には赤の他人からの依頼に、印鑑証明書をすんなりくれるかどうかはかなり微妙ではないでしょうか

 

このように、銀行融資を受ける際は、敷地だけ担保にいれるとか、建物2軒あるうちの一軒だけを担保から除外するとかは、あまり考えられないことです。

返済が滞ったときに競売申立をするにあたって、土地も建物も抵当に入っていないと、非常にまずいのですね。
たとえば、この場合に建物に抵当権の登記がされてなかったとしたら、敷地は競売にできても、建物は競売申立することができないのです。

 

なので、銀行融資をお考えの際は、古い未登記建物がネックになることもある、ということを覚えておきましょう。

 

古い建物の所有権移転の登記をしたい。

 

所有権移転については、これほど事情はきびしくないのか、と思います。

 

新築建物であれば、ともかく、先が長いので、登記はあったほうがよいかと思います。
が、築60年とか、古い木造の建物については、わざわざ登記するのも大変かな、という感想(個人の感想です)を持っています

建物の評価も限りなく低かったり、資産価値は限りなくゼロ、だったりするわけです。

そこで、よく行われるのが、土地建物売買契約書に、
「建物は未登記のまま移転する」とか記載する方法です。

建物の表示の仕方については、よくわからなければ、
「この敷地上にある建物の一切。」とか。
そのように作成された契約書をよく見かけます。

ただし、厳密に言えば、第三者対抗要件を欠く、ということにはなります。
また、たとえば、先々代の作った家を現在の敷地所有者が売却できるのか、
という問題もあるのですが。

 

建物についてはそれぞれの事情があるので、詳細についてはこれ以上お伝えすることができません。

ご相談いただければ、最適解を探すお手伝いができると思います。

ご健闘を祈ります。