自分でやる相続放棄

相続放棄を、自力でやってみる

 

相続放棄は、裁判所に申述をすることによってします。

原則として、被相続人が亡くなってから
3ヶ月以内に手続きをしなくてはなりません。

 

窓口で、その旨を申述するだけでも良さそうなものですが、
実務では
「相続放棄申述書」というものを
裁判所窓口に持参又は郵送することによって行います

 

その時に収入印紙、切手、戸籍謄本、住民票、なども合わせて提出します

 

心配なのが、書類の不備ですが、
追完(ついかん)と言って、
後日、提出することができるので、
足らないものがあったからといって
無駄足にはなりません。大丈夫です。

 

本人が持参するとき

 

ご本人が自分で放棄をするために
窓口に出向いた時は手続きはとても早く進みます。

裁判所書記官が書類のチェックをして、
申述意思の確認ができれば、
こちら側(放棄する人)の仕事としては
ひとまず完了です。

 

裁判所は最寄りの裁判所でいいのか

 

被相続人(亡くなった人)の
最後の住所地(亡くなったときに住民登録のあった住所)
を管轄する家庭裁判所、です

「相続放棄 管轄」で検索すると簡単に調べられます

持参するのも、郵送するのも、裁判所はいっしょです

 

話を分かりやすくするために、このような家族構成としてご説明します

  • 父と母
  • 祖父母は数年前に死去
  • こども3人(いずれも成人・一人だけ未婚)
  • 死亡したのは、父

残された家族全員で相談した結果、債務はないので、
「こども全員が放棄をして財産全てを母のもの」
と決定しました。そこで、

長男が3人を代表して裁判所窓口へ赴く、
という事案です。

 

必要書類、ほか

 

1 戸籍謄本 各1通(重複するものは1通のみでよい)

  •   被相続人(お父さん)の死亡事項の載っているもの
  •   放棄をする人のもの(結婚したこども2人分)

未婚の子は、通常父母の戸籍に入っているので、
この場合は重複して取得する必要はありません

2 住民票

  •   こども分 各1通
  •   お父さんの除住民票 1通
    (裁判管轄の確認のため)も必要です

3 収入印紙

一人分800円 この件では2400円分

4 切手

  • 裁判所によって多少異なります
  • 82円を10枚、10円を5枚、というように
    合計額ではなくて、細かく組み合わせで必要です。
  • 念のために、窓口に聞いてみたほうがいいですね。

 

5 相続放棄申述書 3人分

  • 裁判所が近くにあれば、窓口でもらえます
  • 書き方もそこで教えてもらえます。
    そんなに難しいものではないですが。
    署名のみ自筆でします(全文自筆でも、もちろんOK)
  • 裁判所のサイトからプリントすることもできます
    書き方もそこに載っています

    印紙や切手を売っている裁判所もありますが、
    売っていない裁判所もあります。

    管轄の裁判所がどちらなのかわからない時は、
    電話をかけて確認した方がいいと思います。

郵送する場合

 

持参するのと同じものを郵送します

もしも不足があると、
追完のために時間がかかるのが心配なので、
事前に電話で相談確認してからの方が安心です。

宛先もしっかり確認してください。
大きな裁判所の中で行方不明になったりしたら、大変です。

裁判所から、放棄の意思確認がされる

この事案だと、長男については、
その場で放棄の意思確認ができるのでいいですが、
他の二人のこどもについては、郵便で意思確認が
されます。

具体的には、

  • 数日から数週間の間に
  • 本人の住所あてに
  • 相続放棄の意思が間違いないかどうか、
    について
  • 裁判所から照会状が届きます

たぶん、3~5枚の紙です。

そこに、わかることは回答し、
わからないことはその旨回答し、

返送します。

 

さらに大事なこと

 

裁判所で正式に相続放棄の申述が受理されると、
郵送で

「相続放棄申述受理通知書

というものが送られてきます

(これは無料で自動的に発行されるものです)

ですが、例えば、相続放棄によって
不動産の登記を父名義から母名義に変えたいときなどには、
これでは不十分です

「相続放棄申述受理証明書

が必要です。
1通(1人分)150円で、
そのように頼まないともらえません。

  • 最初の申し立ての時に、いっしょに
    依頼しておいた方が、面倒がないので
    おすすめです。

    それには、

  • 相続放棄申述受理証明書交付申請書
  • 印紙450円(3人分なので)
  • 返信用封筒と切手82円
    が必要です。

    もしも用途がいくつもあって、
    原本が何通も必要だとしたら、
    印紙も返信用切手もさらに必要になります。
    窓口で確認しましょう。

 

もっともっと一番大事なことがまだ、あった

 

以上のような感じで子供3人の相続放棄は完了して、
相続放棄申述受理証明書ももらえました。

やれやれ、と安心してはいけません。

 

というか、放棄をしよう、と思った時点で
とても大事なことを見落としていました


法定相続の順番は、

第1順位 子ども

第2順位 親

第3順位 兄弟姉妹

配偶者はどの順位の時でも必ず法定相続人


以上をふまえて、順位の見方は、

  1. 第1順位が最優先で(つまり、子ども)と妻
  2. 第1順位の相続人がいない時は、第2順位(つまり、親)と妻
  3. 第2順位がいない時は、第3順位(つまり、兄弟姉妹)と妻

と定められています

 

この例にあげた事案では

第1順位がいない
(相続放棄をすると最初からいなかったことになる)
場合に該当するので、
次の第2順位の「親」が相続人になるわけですが、
既に故人なのでさらに、

第3順位の兄弟姉妹と妻が相続人ということになります。

 

なので、
お母さんだけに財産を継がせたい、
のであれば、さらに、
お父さんの兄弟姉妹の全員から
同じように相続放棄をしてもらうか、
遺産分割協議によって、
「お母さん1人に相続させるという書面」に
署名捺印をしてもらわなくてはなりません。

兄弟姉妹の中で亡くなっている人がいたら、
その子ども(達)に相続権は引き継がれるので、
その人達にも同様の手続きを
してもらわなければならないのです。

 

最初から、兄弟姉妹
(こどもたちから見れば叔父伯父叔母伯母)から
相続放棄の同意を取り付けてあれば安心ですが、
もしもそうでないのであれば、
快くハンコをくれる人ばかりではありません。

中には、
お父さんと仲が悪かった兄弟もいるかもしれないし、
未だに何かしら怨恨があって、
この機会に恨みを晴らそう(!?)と思っている人も
ひょっとしたらいるかもしれません。

 

 

では、どうすればよかったのか

 

お父さんが一人っ子で、兄弟姉妹がいなければ、
相続放棄は問題なかったと言えます。

 

債務がなく、子ども3人の意思が決まっているなら、
放棄ではなく、遺産分割協議をすることをおすすめします。

 

「財産の全てはxxxx(妻)が取得する」

これでこども全員の署名捺印(実印)と
xxxxの署名捺印があれば、完了。
3人分の印鑑証明書をつけて完成です

裁判所の関与も不要なので、
こちらの方が面倒くさくない分、
債務の心配がなければ、おすすめです。

 

叔父は行方不明、亡くなった伯母の子は、協力するのは嫌だと言っている

このように、関わる人の数が増えるほど、

  • 行方不明の人や、
  • 意思の疎通が難しい人、
  • 話もできないほどに非協力的な人、

が出現しやすくなります。

ですが、

ほとんどの場合、解決方法はあるので、
大丈夫です。

その時は
ご相談ください。