遺言発見そのあとで 自筆遺言

遺言発見そのあとで。
自筆遺言書編

 

遺言書を発見したら、可能であれば
中身を確認したいものです

細かいことを言わないで
あけてみれば良いのでは?と
お思いかもですが

ですが

もしもそれが
自筆の遺言書であった場合は

勝手にあけると、罰金!(過料)
ということになるかもしれません

何よりも
発見者が勝手に開けてしまったことで
あとで、問題が生じないとも
限らないのが怖いです

封印がされている場合です。
封筒に入っているだけなら読んでも大丈夫
封筒に入っていないときはもちろん
読んでください

 

特に自筆遺言の場合は
本人が好きに書いただけのもの
(このようにいってしまうと身も蓋もないですが)
なので

これが本人の手になるものなのか
そうでないのか、に始まって

いろいろとデリケートな問題が
生じがちなものです

 

自筆遺言書を発見したとき

 

自筆の遺言書(封筒の表書きに遺言書
書かれているのでそれと知れる)

それがもし封印されていたとしたら
勝手に開封すると過料(罰金)という
法律があるため
検認手続き(裁判所で行われます)までは
開けて読むことができません。

また、封筒に入っていなくても
文面を読めば遺言書だということは
わかるので、これももちろん同様に
検認手続きを経る必要があります

なお
封筒に入っていなくても
封がしてなくても
形式的には全く問題はありません

たとえば、チラシの裏であっても
形式的要件を満たしてさえいれば
それは有効な遺言です

 

  • 全文自書  (財産目録のみ印刷でも可
    ただし各ページに署名捺印が必要)
  • 日付はっきり
  • 本人の署名と捺印 

 

以上が、自筆遺言書に求められる
形式的な要件です

ひとつでも欠けると、原則として
内容に関わりなく無効です

あくまで原則です
これでも良いはず、という信念がある方は
弁護士にご相談ください。
形式的にこの3つが足りていなくても
有効とされた判例がいくつかあります

なお、形式的に大丈夫だということと
その執行が可能かどうかは
別の問題です

検認手続きが支障なく完了しても
遺言が必ずしも執行されるとは限りません

 

遺言書の検認

 

検認手続きは
自筆遺言書にのみ必要な手続きです

(遺言書の検認)
民法第1004条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後
遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して
その検認を請求しなければならない。
遺言書の保管者がない場合において
相続人が遺言書を発見した後も
同様とする

2 前項の規定(検認のこと)は
公正証書による遺言については
適用しない

3 封印のある遺言書は
家庭裁判所において相続人または
その代理人の立会がなければ
開封することができない

(過料)
1005条
前条の規定により
遺言書を提出することを怠り
その検認を経ないで遺言を執行し
または家庭裁判所外において
その開封をした者は
5万円以下の過料に処する。

 

検認手続き

自筆遺言書を発見したら
封がされていてもいなくても
裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する
家庭裁判所です)
に検認の申し立てをし

検認期日(相続人全員を呼び出して、その前で
遺言書を開封する)
を経る必要が
あるわけです。

これをしていないと
その遺言を執行することができません
たとえば
不動産の名義を変えたり
預金を解約して相続人の名義にするなど

執行するには、必ず
検認証明のついた遺言書
が必要になるからです

 

で・す・が

し・か・し・な・が・ら

中身を確認しないで
そのまま検認手続きに至る、というのも
かなりの冒険ではないでしょうか

故人から
この内容の遺言書だから、死亡後は
よろしく頼む、
と託されていた場合は
ともかくとして

いきなり遺言書が出現したときは
一体何が書かれているのか
不安ではないでしょうか

 

あまり考えられないことではありますが

被相続人には財産らしきものは何もなかったはず。これはもしや、どこかに隠された財産があったのか!!と喜び勇んで検認期日を迎えたものの、いざ開封してみるとびっしり書かれた世迷言(あんまりな言い方ですが。まあ、執行に適さないというか、執行の余地のない、私小説のようなというか、ポエムだったり、ありがとう、とか、許しますとか、要約すると世迷言・・・)の羅列に過ぎなかったりしたら、目も当てられません。

当然、遺言した方は
これを言い置かなければ死ぬに死ねない
という切実な思いで
お書きになったのでしょうが

財産の処分について
書かれていない遺言書は
わざわざ検認手続きをする必要の
ないものでした。

 

開封すると過料、5万円以下
という法律があるのですから
仕方ないと言えば確かにその通りです。。

 

事前に何とか
中身を確認できるとよかったのですが。。

 

検認申立てに必要な書類

検認申立ては
家庭裁判所に対して行うものですが
その際は
共同相続人全員の戸籍を添付します。

さらに、相続人全員の住所も
明確にしないといけません。
(そうしないと、裁判所から相続人に対して
検認期日の通知ができないからです)

共同相続人全員の戸籍ですが
関係の離れた親戚だと、おそらく
申立人からは戸籍の取得ができません。

よって、司法書士や弁護士に依頼するか
または
その相続人本人に依頼して
取得してもらうことになります

 

つまり、手間も費用も
それなりにかかる手続きなのにもかかわらず
開けてみたらあらびっくり。
ポエムだった。。。

これでは、ちょっと寂しいものがあります

 

ですが、言うまでもなく

お書きになった方の気持ちを考えれば
これはこれで切実なものがあるのです

不平を言うどころではありません

それがその方の
生きた証です