地面師と闘うのだ その4

地面師と闘うのだ その対策編

こんな土地が、
こんな地主が狙われる

 

地面師詐欺のような大きな犯罪は

舞台となるような不動産や、それを
所有している人の数は限られている
と思うので

実は、私たち司法書士にとっても
それほど一般的な話題ではありません

ですが、軽微な不動産詐欺は
表に出てこないものも含めると
かなり行われているのではないでしょうか
(個人の感想です)

 

そうした地面師や、さらには
もっと身近な犯罪(!)である不動産詐欺

に遭遇しないための方法を
考えたいと思います

 

そもそもそうした地面師または詐欺師が
どのようにしてターゲットを発見して
捕捉するか、という観点からの
考察です(まさしく素人考えですが)

 

まず、獲物の不動産をみつける

 

詐欺事件の舞台となる土地は

まず考えられるのは
所有者が死亡しているのか
単に登記上の住所に住んでいないのか
それらが不明で

いずれにしても地主(または相続人)が
どこにいるのかわからないという
土地です

売ってもらおうと、そこに手紙をだしても
「宛先に尋ね当たらず」という
郵便局のスタンプが押されて
配達されずに帰ってきてしまう
というような。

もちろんそれなりの価値があることが
大前提ですが

こうした土地は
地面師が目をつけることが多いと
されています

長い間相続登記を怠っていると
こうした犯罪を引き寄せることにも
なるわけです

 

先日、都内のある場所を歩いていたら
「ここは売り地ではありません!
地面師に注意」
という看板を見ました。

ニュースで地面師という言葉を
みることがあっても
実生活で遭遇したのは初めてだったので
感動しました

 

ですが、たとえば
登記名義人が実は生存していても

登記が50年前にされたものだったりすると
おそらく、本人はご高齢である可能性が
非常に高いと思われます。

さらに、一人暮らしまたは
高齢者の二人暮らしだったりすると
簡単に悪事の餌食にされてしまうことも
あるようです


現在では、今年の4月から相続人申告制度が施行されているので、相続登記が終わらないまでも相続人のうち1人または複数人が相続人であると申告する登記がされる運びとなりました
(本人の申告によって職権でなされる登記です)


この申告登記がされると
登記上の所有者が生存していないことは
明らかです

そうすれば少なくとも
こうした詐欺の対象にはなりにくいかな
と思います

 

ひとり暮らし高齢者を騙す

 

あとは、一人暮らしの高齢者で(判断力が多少
衰えていても普通に日常生活がおくれる)

オレオレ詐欺の標的にされるような方だと
不動産詐欺の犠牲にもなりやすいです

 

何となく仲良くなった人(実は最初から
その土地を狙って近づいてくる人もいる)

「実はあそこに土地を持っててね~」などと
世間話のつもりで打ち明けたら最後

いいように騙されて意思に反して
やられてしまうケースも聞きます

 

この場合だと
書類の偽造をする手間がかかりません

通常の売買取引をするだけです

ただ、売買代金だけが
所有者ではなく
詐欺師のもとに流れ込むだけです

または、結果として
本来の価値の数十分の1の価格で
売却を承諾させられてしまった、など。

 

ここで脅して言うことを聞かせたとしたら
脅迫罪が成立しますが

意思能力が微妙になっている高齢者は
特に脅かす必要もなく
いったん信用した人の言いなりです。
(逆に猜疑心の塊のような人もいますが)

詐欺罪や横領罪には該当します

 

本気で、詐欺から身を守る

 

やはり、それを生業にしている人と
単に、犯罪から身を守ろうとしている人
とでは

見ているものが違います

生業にしている人は本気です

その仕事(悪事)が成功するかどうかが
収入に直接かかわってくるわけなので

それこそ必死で仕掛けてくると思った方が
よさそうです

身を守る側は、一度
仕事をする側の観点から考えてみるべきです

私って、
美味しいお客さんにされているのでは?と。

 

不動産犯罪は、原則として
不動産を所有していない人は
ターゲットにされることはありません

ただ、若い人だったりすると
資産形成というハナシに載せられて
とんでもない物件をつかまされる可能性は
あります

二束三文の不動産をつかまされた挙句に
過重なローン負担が課せられる、ことも
あります

ま、これは別のハナシですが。

 

 

身近な人の力を借りる

 

お身内にこのような微妙な状態の
高齢者の方がおいでになるときは

家族の方などは、意識して
頻繁に連絡をとってあげることが肝要です

日々の情報を丁寧に確認することで
そのような詐欺に巻き込まれることは
かなり防げます

 

また、ご自身がこの状況にあるときは
身内の人と気軽に話ができるような関係を
作っておくとよいです。

何かあったら相談できる習慣があれば
これを言ったら叱られる、とか
嗤われる、とかいうためらいが
少なくなります

 

高齢者が騙される原因のひとつとして
誰にも相談しないで
大胆な決断をしてしまう、ということが
あります

相談する相手がいないというなら
仕方がないですが

離れて住むまたは別々に暮らす家族が
いるのにも関わらず誰にも相談しないのは

相談すると叱責されたり、嘲笑されたり
という過去があるから、ではないですか

 

高齢者は、というか、人はだれでも
当然それなりにプライドがあるし
わざわざ傷つきたくはないものなので

家族に相談することによって

「また馬鹿なことをしでかして、どうするつもり?おとなしくしてればいいのに。余計なことを考えないで静かに家にいて」
などと言われることを危惧します。

何度かこれを言われたら、それこそ
大きな買い物や売り物の相談はしないで
自分で何とかしよう、自分でできるはず
ということになります

 

たとえば、

屋根を直す契約をするつもりである
(今だけ半額セールですって)

台所のリフォーム工事の人が来た
(すぐに直さないと水漏れがひどいらしいの)

ふかふかの新しい布団のセールスが来た
(肩こりが治るらしいし、今月いっぱいは
特別に値引きしてくれるの)

そして

お父さんが遺してくれたあの土地を
売ることにした
(今回特別に高く買ってくれるそうよ)

 

自分で出来るもん、と、全ての判断を
自分ですることはそれはそれで
大切なことではありますが

プロの詐欺師にかかったら
赤子の手をひねるより簡単に
多くの一般市民はひっかかってしまいます

 

これらを相談されたお身内の方は
頭ごなしに馬鹿にしたり
𠮟りつけたりしないで、

きちんと話を聞いてあげましょう

布団とか、浄水器とか電位治療器とか、
そんなようなものの時にも
きちんと話を聞いてあげれば、

土地を売るようなハナシになっても
気軽に正直に
打ち明けてくれることになります