公証人の本人確認義務とは

公証人の本人確認義務

 

定款の認証や
遺言書作成など

公証人には
それらのさまざまな手続きの際に
面前の人の、本人確認をする義務
定められています

 

そのあたりの本人確認状況については
よく、公正証書の文末あたりに
「本職の面前にて署名し、印鑑証明書にて
本人であることを確認した」
という意味の
文言を見かけます

そのたびに
おや?これはリアリ?  
思ったものでしたが やはり

司法書士に課せられている
確認義務と比べると、かなりゆるいと
感じます

 

司法書士の本人確認

 

たとえば、売買登記において
特に登記義務者・売主に関しては
司法書士の本人確認が印鑑証明書のみ!
でされることはまずありません。

印鑑証明書と実印を所持しているからと
いって、その人が本人ではないことは
いくらでもあります

 

また
登記義務者(この場合は、売主)が
法人であれば、印鑑証明書を所持しかつ
会社実印を押印できる人であれば
本人(真正な名義人である法人の代表者)
またはその会社の役員か、少なくとも
担当者であろうという推定ができますが

自然人については
印鑑証明書と実印を
所持しているからといって、それが
その人であることの証明にはなりません

 

登記簿の名前から、ああ、女のひとね、と心積りしていたのに、いきなり
男の人が「私が売主です」と出てきたことがありました「ご本人がいらっしゃらないと決済は難しいです」と多少上から目線で言ってみたとき
実は名前が女性名であっただけでその人は売主ご本人に間違いなかったというような駆け出しの頃の焦った思い出がありますが。
印鑑証明書には性別が書かれていて、自分の頭の硬さを思い知らされました

 

それはさておき、司法書士は
登記に際してかなり厳重な本人確認をする
義務を負っていることで知られています

写真付きの身分証明書
(運転免許証や個人番号カード、パスポート)
それらがないときは
健康保険証や年金手帳など
ご本人に間違いないかどうかを
あの手この手で調査というか、探査します

これらの証明書類をひとつも所持してないときは本人確認義務が果たせないので手続きをお断りせざるを得ません
この場合、間違っても、印鑑証明書と実印を所持してる事実のみをもって本人であることの確認をすることは不可能です 懲戒まっしぐら・・・

 

公証人の本人確認

 

当然、似たような仕事をしている
(と世間では思われている)公証人も
同様の義務を負っているのではないかと
思いますよね。私だけ?

 

あまり一般的ではないですが
公証人は不動産手続きにおいて
権利証紛失したときの
本人確認情報(私署証書)作成も
することができます

 

この認証証書があると
権利証がないときでも通常通りの
(権利証を提供した時と同様の手続きが行えます

 

公証人は、通常は不動産登記においては
出番があまりないのですが
この時は実は強い味方なのです
(費用が格安と言われています)

 

権利証って?

 

売買登記の時など、売主は
権利証(登記原因証明情報)の提供が
求められますが
それができないときに、一つの方法として
司法書士による本人確認情報の作成
というものがあります

ただこれは要件がわりと厳しいことに加えて
費用もそれなりに発生するのが
ネックではあります

作成状況と担当司法書士によるのですが
下は1万円位から上は数十万!というのを
聞いたことがあります

 

そこで登場するのが
公証人による本人確認証書です

魅力的なのは、何と言ってもその費用。
数千円、らしいです

某地面師事件でもこの
公証人による本人確認書類で登記がなされた
とのことで

その事件をきっかけに
この制度を知った方も
少なくはなかったようです

 

 

公証人本人確認義務の範囲

 


この本人確認書類のために求められている
確認義務の程度が
司法書士と公証人とではけっこう異なります

 

某地面師事件の裁判では
司法書士に対しては本人確認等義務違反が
認定されましたが

公証人に対しては義務違反は
認定されませんでした

なんということでしょうか

公証人の本人確認義務が低いレベルでしか
求められていないからということです

 

曰く
公証人の行う不動産登記法第23条4項2号の認証については単に申請人が登記義務者であることを確認するために必要な認証にすぎず登記義務者であることの認証ではないこと等から

面前の嘱託人と登記義務者との
同一性をも確認する義務まで負うものでは
ないということのようです。

 

何とも意味がよくわからないですが
要するに
公証人のする本人確認は
ゆるくても問題ない、ということですね。
たぶん。

 

結果として
司法書士には損害賠償判決が
下されることがあるような事件であっても

公証人はそのような目にはあわない
ということなのです。

 

遺言書や会社定款の定番の認証文である
・・印鑑証明書をもって本人であることを
自認した 
的なものは、まあ
どう考えても茶番(失礼!)であると
言っても過言ではないでしょう。あくまで
司法書士の確認義務に比したハナシですが

 

公証人は公務員ではなかった!

 

公証人は、公務員的な仕事をしていますが
公務員ではありません
びっくりしませんでしたか?

実際のところ
法務大臣によって任命されており
執務場所である公証役場も
法務大臣によって指定された地に
設けるように定められているところなど

あたかも公務員のような外観ではあります

 

その上
国の公務である公証作用を担う
実質的な公務員であるというのに、実は
その身分は公務員ではないのです

そうなると当然ながら
国から一切の金銭的給付も受けていないので
手数料制の公務員とも言われています
(一部、公証人連合会のホームページより引用)

 

さらに、公証人の行う認証の効力は
その文書の成立の真正を証明するにとどまり
内容の真実性や正確性を証明するわけでは
ありません

 

公証人は、内容の真実性や正確性ではなく
公証人法第26条の規定により
文書の内容が
違法、無効等なものでないかどうかという
観点からの審査をしなければならず
法令に違反した事項や無効な法律行為等の
記載がないかどうかを
審査するというものです
(同じくホームページより引用)

 

公証人法26条
(証書を作成することができない場合)

公証人は法令に違反したる事項、無効の法律行為および行為能力の制限によりて取り消すことを得べき法律行為につき証書を作成することを得ず(原文はカタカナ)

 

なるほど納得の内容でした

それ以上でもそれ以下でも
ないということです

 

それほど
恐れなくてもよいということなのかな・・
ですが、どう考えても公権力側の存在ですよね。

 

 

さてと

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