相続登記は自分で!

質問;
相続登記は自分(本人)でできますか

 

お答え;
状況によってできることもあります
できないこともあります

 

中には、登記はすべて司法書士に
頼まなければならないのでは?
とお思いの方がおいでですが
そんなことはありません。

どんな登記であっても、当事者全員が
それでよいのであれば
当事者全員または当事者の一人から

登記を申請することには全く問題ありません

 

なさる方の基本スキルの状態によっても
かなり結果は異なりますが

本当に簡単な相続登記であれば
数回、法務局の窓口に相談に行けば
おそらく何とかなります ですが

どうにもならないこともあります

 

少なくとも
かなり複雑な相続登記だった場合は
登記を仕事にしていない一般の方が
一人でやり遂げるのは
かなり難しいと思います

どれほど時間がかかっても
よいというのであれば
絶対不可能とは言いませんが、おそらく
想像しているよりは遥かに大変です

ただ、どのように複雑困難面倒な
相続登記であっても時間と情熱があれば
大丈夫。可能です

そして
複雑困難面倒なこの登記を
成し遂げるためには、さらに
根性と体力も必要です

だからこそ、この登記を専業にする
専門職(司法書士)が存在している
という事実をお忘れなきように。

 

相続登記の流れ

 

相続登記は、次のような流れで行います

 

ざっくり言うと

 

  1. 戸籍など相続資料を集めて
  2. 相続人全員で相談して
  3. 申請書を作って
  4. それから申請
  5. 問題なければ登記完了

 

相続資料とは?

 

まずは、戸籍などの相続資料を収集しないことには始まりません

具体的には

  • 戸籍
  • あれば遺言書
  • 住民票
  • 不動産の資料として全部事項証明書
  • 固定資産評価額証明書

これらが必要です

 

戸籍?

 

相続資料としての戸籍とは

被相続人の
出生から死亡までの戸籍に加えて
相続人全員の方々の戸籍もいります

被相続人については

転籍(分籍したり結婚したり本籍地を動かしたり
離婚したりなどで本籍地が動きます)
を何度も
しているとすべての戸籍が必要なので

遠方の地だったりなどすると
収集も大変です

例えば茂原市で生まれてそこで結婚して
死亡したのであれば、割と簡単に
収集ができるわけです。ですが
もしも子どもがいないときは相続人は
兄弟姉妹なので
両親の出生時からの戸籍も必要になります

被相続人が茂原市で出生死亡したとしても
その両親がそれぞれ
鹿児島と北海道で生まれたということだと
そこからの戸籍が必要になります また
法律が変わって改製が行われると
そのたびに新しい戸籍も必要です

 

なお
令和6年3月1日から改正戸籍法が
施行され、戸籍情報連携システムに
つながっている自治体の戸籍であれば
最寄りの自治体窓口で請求することに
よって日本全国の戸籍証明書を
取り寄せることが可能となります 

(コンピュータ化されていない
戸籍除籍は除かれることに注意!)

この方式だと、相続人ご本人が最寄りの
市町村の窓口で手続きすることによって
日本中の各本籍地から戸籍を
取り寄せることができますが

これができるのはご本人だけです。
代理人(司法書士を含む)からは
できません

なので、司法書士や弁護士の
職務上請求書を使用しての取り寄せも
同様にできないことになります

 

遺言書?

 

遺言書は必ず相続登記に必要な書類では
ありません

遺言書がなければ
相続人全員で粛々と遺産分割協議を
するだけです

 

自筆遺言書は家庭裁判所で
検認をうけなければ相続登記には
使えません

必要書類(戸籍など)をそろえて
被相続人の最後の住所地を管轄する
家庭裁判所に検認申立てをすることに
なります

 

公正証書遺言はそのまま
登記手続きに使えます(検認不要)

法務局保管の遺言書であれば
「遺言書情報証明書」を取得すれば
そのまま手続きに使えます(検認不要)

 

不動産の情報と評価額

 

これをもとに申請書を作成するので
これらの不動産情報は必要です

新しい登記情報を確認せずに
古い謄本を元に作成したりすると

地目や地籍(面積)はては
行政区画が異なっていたりすることが
あるので、要注意です

申請書の記載が間違っていると
法務局から呼び出され
窓口での補正を求められます
(書面申請の場合です)

また、評価額がわからないと
登記時に納める登録免許税の計算が
できません

 

ネック(障害)となりそうなのは

 

自分でできないとしたら
問題となるのはおそらく次の点です

 

戸籍の収集が困難

 

相続人であっても
先祖の戸籍が取れないこともあります

例えば亡くなった伯母さんの戸籍などは
その子どもに頼んで
取得してもらうしかないです。

つまり直系の先祖の戸籍は取れますが
傍系(兄弟など横のつながり)の戸籍は
取得するのは難しいです

 

遺産分割協議をする

 

相続人全員で協議して
分割方法を決めます

その前にまず、協議の前提として
相続人を確定することが必要です

ずっと昔に開始した相続などで
そのあと何人も亡くなったり
養子に行ったり、戻ったり
いろいろあった時など

はて、一体、今現在の相続人は誰なのか
悩むような事案もあります

でも、相続人全員で協議をすることが
絶対条件なので、ここは大事です。

相続人は誰なのか、このあたり
漏れのないように慎重に
確認しないといけないです。

 

そのあとで

どの財産を誰が相続するのか、とか
全部放棄する代わりに代償金が欲しいとか
ハンコ代だけでよいとか
そのあたりを相談するわけです

 

相談がまとまりさえすれば、あとはそれを
書面にするだけです

内容が決まれば書面の作成方法は
インターネットで簡単に調べることが
可能です

一堂に会することが難しい場合は
持ち回りでの決議も有効です

ただし、一人でも反対する人がいると
協議はなかなか進みません

全員の合意がないと
相続手続きはできません

外国に住んでいる人がいるときも
印鑑証明書の取得が
できないでしょうから

サイン証明プラス宣誓供述書など
それぞれの事情に応じた書類も
手配が必要になってきます

 

行方不明者がいる

 

行方不明というほどではなくても
長年連絡の取れない相続人がいるなど。

そのままでは
全員で協議をすることができません

探偵を雇って捜索するか

本当に行方不明であれば

裁判所に申し立てて不在者財産管理人を
選任してもらうことになります

 

申請書の作成

 

申請書は、文書の作成に苦手意識が
なければ
大したことではありません。

ひな型はインターネット上に
公開されています

しかし、普段
パソコンで文書を作ったことがないとか
手書きで全部書く、とかいうのだと
これはけっこうな高さのハードルでは
ないでしょうか。

それでも、この部分は
相続登記の一連の手続きの中では
一番簡単な部分です

 

 

自分でできる相続

 

自分でもできるかもしれない簡単な
相続登記は、次のパターンです

 

1 そもそも共同相続人がおらず
相続人が一人しかいない

この場合、遺産分割協議の必要がないので
戸籍等をそろえるだけです

 

2 公正証書遺言があり
自分が相続した分だけ相続登記をする

戸籍と住民票等があれば、これもやはり
遺産分割協議の必要がないので
手続きは簡単です

 

上記が簡単にできる相続登記の筆頭ですが
あとは

 

3 被相続人がわりと若くして亡くなって
残された家族間で争いがないとき。

ただし
未成年の子がいないときに限ります

(未成年の子がいても法定相続をするのであればカンタンですが遺産分割協議が必要なのであれば未成年の子のために特別代理人の選任~家庭裁判所に選任してもらう~が必要となるため)

集める戸籍が少ないし
相続人の確定や分割協議に悩まなくてすみます

 

4 なお、何人か相続人がいるときに
法定相続持分で共有登記をするのであれば
これも登記はカンタンです。

遺産分割協議がいらないからです

しかし
カンタンだからといって
不動産を共有名義にしてしまうということは
争いの種を将来に遺すということでも
あります

 

相続人間で仲がよいときはともかく
何十年かのちに何人もが亡くなり
名義人の数が数十人にもなったりして
そうなったら売却するにも
ひと苦労です

相続人の数十人の中には
行方不明の人や
ブラジルの奥地に探検に行ったきりの人や
未成年がいたりなどして

このように人数が多いだけで
話は難しくなるものです。

売却でも何でも
話はまとまらないことの方が多いです

よほどの事情がない限り、共有相続は
問題の先送りに過ぎないことを
お忘れなく。

 

 

おまとめ

 

力試しとか、勉強のためとか、単に
費用節約のためなど。

自分で登記をなさりたい方は
いろいろおいでです。

時間も情熱もたっぷりあるなら
強いて止めるものではありませんが

限られた時間は
もう少し大切に使いたいものではあります

 

登記の素人の方が
相続登記を試みるのは

(機械に弱い力が弱い不器用注意力がない根気がない)
パンクしたタイヤの交換を試みるような
ものです

 

きちんとできれば、おそらくは
素晴らしい達成感があることでしょう。
もちろん、倹約にもなります。
新しい知識も増えます。

ただしその代わりに

交換作業中に指を挟んだり
脚を挟んだりはたまた大きなケガを
するかもしれないですし

仮に一見きちんとできたように見えても
後日、大事故につながるようなやり方
(タイヤがきちんと装着されてない?とか)
をしてしまうかもしれません。

 

相続登記に関しては
そうした、物理的な事故というのは
考えにくいですが

司法書士であれば見逃すはずのない
負担登記・・のもろもろ
買戻登記 古い抵当権 古い仮登記 差押え等・・
そのまま気づかず
名義だけを変えてしまって
将来に禍根を残す、ということがあるかも
しれません

 

やはり、専門職に依頼するということは
費用もかかる代わりに
それなりの見返りはあるわけです

 

ですが
ご自身でどうしても親の相続登記をしたい
という気持ちはよくわかります

 

(計算苦手簿記の知識ゼロ計算苦手計算苦手不注意根気がない計算苦手)もかつて、確定申告を税理士に頼まず
自分でやったことがあります

修正申告が必要になりそして延滞金が発生し
おまけに申告のあとは
過労と心労ストレスから
39度近い熱がでました やりがい?(WWW)

 

相続登記のご相談は
どうぞお気軽に

 

なお、あいにくですが税金関係は
対応できませんので
税理士、税務署にご相談ください