事前通知・もっと詳しく

事前通知についてもっと詳しく説明します

 

登記申請にあたって
必要な権利証(登記識別情報)がない時に
事前通知という制度があります

このような際の他の救済措置
(司法書士または公証人によるもの)とは
大きく異なり、これは法務局が職権で
やってくれる方法です(無料)

ですが
その場ですぐにできる方法ではないし
それなりの時間と手間がかかる
手続きなので、選択できるのであれば
他の代替手段
(司法書士・公証人によるもの)の方が
断然有利です。

しかしながら、これらの便利な方法は
司法書士や公証人と
面談をしなければならず
費用も別途発生することになり

また特にご高齢の方など
写真付きの身分証明書をお持ちでない方は
事前通知を選択せざるを得ないというか
他に選択肢がない、ということも
あるかと思います

 

 

手続の流れ

 

事前通知を選択したときは
次のように進行します

 

①(権利証なしのままで)登記申請をする

通常の登記の如く委任状や印鑑証明書他一式が
必要です

②そうすると法務局から義務者あてに
事前通知書(照会状)が届く

このような登記が出てますが
これで進めてよいですか、というお尋ねです

これは、本人限定受取郵便という書留
郵送されるものです

  • ご本人以外は受け取れません
  • 委任状があっても、代理人が
    受け取ることはできません。
  • 転送届がされていても、
    転送はされません
  • ご本人だけが、
    本人であることを証明できる書面
    (運転免許証など)を提示して
    受け取ることができます。
    というか
    提示しないと受け取れません

③受け取ったその申出書に署名捺印する

この内容で間違いないです進めてください、という
意思表示です

④期限内にその申出書が法務局に到達する

窓口に持参するか郵送する

期限は事前通知の発送日から2週間です

(外国の場合は、4週間)

一刻を争うときなどは速達費用を納めれば
速達扱いしてもらうこともできます

⑤他に問題なければ登記が進み完了する

 

 

各パートに
注意しないと失敗しかねない
関所があります

これがまたそれぞれに面倒です。
関所というか落とし穴ですから。

陥りがちな落とし穴の
全部を説明したい!と思いますが
通常の人は情報量が多すぎて
全体像がわからなくなります。ので
要点だけをお伝えするのですが
いたるところに罠が仕掛けられています

そしてどこか一つでも
うまくいかないことがあると
予定していた登記が完了しないことに
なります

具体的には
期限内にきちんとした申出書
(署名捺印がされている・かつ期限内)
法務局に到達しないと
期限切れ!という事態を招きます

期限切れとなったら
登記をいったん取り下げて
再度、登記の出し直し、という
羽目になります

 

こうなると

年度内に決済したかったのに
日程的にできなくなった

売主が委任状等を作成した後で入院して
しまったので、決済が不可能になった

この日しか休めない買主だったので
それに合わせて日程を組んだのに
今更やり直し、とか言われても困る
これでは、この物件を買うことができない

記念日を売買の日にする予定だったのに
これでは全然話が違う
もう何が何だかわからない

など など など

 

 

しかし、それは仕方がないことです。
通常の添付書類である
権利証(登記識別情報)を
提供できないのですから少々の不便は
あきらめるしかないです

 

他に、方法がないわけです
他の代替手段を選択できれば
当然そちらの方が簡便なので
そちらを選択していたでしょう

 

つまりは
これらの不利益というか不便さを
理解した上で、それでもなおかつ
他の方法が使えない等の理由によって
この制度しか選択の余地がなかった
ということでしょう。

いろいろと面倒さはあるけれど
それにも関わらず名義を変えたいのだ
というようなご希望には
沿うことができるものです

 

司法書士や公証役場に出向く必要もなく
特段の費用もかかるわけでもなく

多少の面倒ささえ我慢できれば
何とか、名義変更にたどり着くことが
可能となるわけです。
有難い制度ではないでしょうか

 

躓きがちなポイント

 

しかしながら
流れを説明したからと言って、当事者は
登記を仕事にしているわけではないので
そこかしこにトラップが控えています

ほとんどは説明すれば納得のいわゆる
いわゆる凡ミスというものなのですが。。。

 

申請時

まず、登記を申請する時点で
ひと騒動になることがあります

この方法は
通常の決済なしで、つまりお金の授受が
ないのに
登記だけを出さないと始まらないわけなので
そこが不安ということです。

これはわかります。

特に仲介業者や司法書士と信頼関係が
築けてなかったり
過去に、人に騙されて手ひどい事故を
経験している方は
二の足を踏みたい気持ちになるのかも
しれません。

印鑑証明と委任状を提出してしまったら
権利証なしでも登記はできると
聞いたことがあります大丈夫ですか??
まだ手付金しかもらってないのに!!

という人もいたりして
ご心配になるのはもっともです

万が一、手違いで、権利証がないのに
このまま登記が終わってしまったら
どうなる?
というようなことです。

そのあたりは、司法書士が言葉を尽くして
ご説明するわけですが、それでも
納得していただけないときは
仕方ありません。

この手続きを使うことができないことになります

 

そのような時は

万難を排して
本人確認情報等(司法書士が作る書類 これがあると
権利証があるときと全く同じように手続できます)
を作成
させてもらえるように説得するしか
ありません。

それも受け入れられないとなったら
ご本人自ら手続きをしてもらうほかないです
それならば、人に預けて不安
とかいうようなことはないのですから。

 

事前通知の受領と押印

 

法務局からの事前通知を
受け取れない可能性もあります

登録住所と別のところに住んでいるまたは
たまたま入院した、などの
事情があったとしても、それらの事情を
考慮してもらうことはできません

また、法務局からの通知には
実印で押すようにとは書かれていません

何故に書かないのか、と私も思いますが
書いてないです

「申請書または委任状に押印したものと
同一の印を用いて押印するように」

書かれていますが、この同一の印」
というものが実印であることには多くの場合
気が付きにくいものなので
予めその旨お伝えするのですが、うっかり
実印以外の印鑑を使ってしまうことも
ないとは言えません

物件の記載

 

その通知には、〇番の土地他(ほか)
書かれているので

他(ほか)、ではどの不動産のことなのか
いまいち不安。
売却する予定ではない土地まで名義を
変えられてしまうのじゃないの??

とご心配になる方もいます

これは当然のご心配です。
何筆あってもきちんと全部
書いてもらいたいものですが、

そのあたりは、申請書の写しをお示しして
納得していただけるように
ご説明することになります

 

押印が不鮮明 署名がされてない

 

印鑑を鮮明に押してないと
印鑑照合ができないので登記はできません

なのに
不鮮明な押印をしたまま
登記所に届けてしまう

または署名するのを忘れてそのまま
郵送してしまう  など。

法務局の窓口に提出した場合は
印鑑と署名についてはおそらく
チェックされるので、この心配はないですが

郵送で提出するとそのチェックが
されないまま登記所に到達し

再度送り直す時間は通常はないので
時間切れとなって、登記の出し直し

となってしまいます

署名忘れ、実印の押し間違い、これらは
わりと頻発することなので

直接法務局に提出(特に郵送)しないで
司法書士に事前にチェックをさせて
ほしいわけです。

 

決済が済んでないのに

 

お金受領前に
回答書を提出してしまう

署名捺印した回答書を法務局に届けると
登記が終わってしまいます

贈与等で、お金が動かない登記であれば
問題ないですが

売買については、ほとんどの場合
代金授受と回答書の提示は同時履行です

つまり
署名捺印の済んだ回答書と引き換えに
残金決済をするわけです

そのやりとりが済んでから提出したい!
と念押ししても、なにしろ
法務局からの通知書には
「登記所に届けるように」というような
指示が書かれているので

代金を受領してないのにも関わらず
さっさと届けてしまうという事象が
多発します

 

それでもさすがに
代金まだ払ってないのに
登記がおわったぜよラッキー!

そのまま支払わなかった方には
お目にかかったことはないですが。

ま、私が関わるのは地元の不動産が
ほとんどなので
そこまで高額でないのは救いです。

 

まとめ

 

この事前通知という手続きを
選択するときは
司法書士もできるだけの注意を
払っていますが

当事者の協力なしでは
到底できる手続きではありません

なので、当事者の方は
一切の躊躇なく

おかしいと思ったり納得できなかったり
わからないと思ったりしたときは

問い合わせの一報をお願いしたいと思います

 

いちいち電話をして確認するのは
面倒!思っても

手続きが丸ごとやり直しになることに
比べれば
大したことではないです。

ご不明な点は、誠にお手数ですが
お尋ねください。
くれぐれもよろしくお願い申し上げます

 

権利証等を紛失した際の手続きについて
どうぞお気軽にご相談ください