おひとり様の終活
おひとり様の終活
さほど年齢がいっていなくても、
人間というものは致死率100パーセントの生き物なので、
遅かれ早かれ、
自分の終期について考えるタイミングがやってきます
不肖ワタクシは、あとは野となれ山となれと思っていたものか(!)この問題を
深く考えてみたことはありません。
が、このところ、立て続けに、なんと
同年代の方から終活についての傾向と対策についてご相談を受けることがあったので、考え直しました
もくじ
おひとり様とは
おひとり様といっても、
単に一人暮らしをしているという意味で使われることも多いですが、実際には次のような方たちの総称です
- 本当に身寄りがない
- 親戚はいるが、相続人がいない
子ども・配偶者・父母・祖父母・兄弟 - 相続人はいるが、頼りたくない
(頼れない)
おおよそ、以上のような感じかと思います
で、
一体何が心配なのか
人は何を心配して、
終活をするものなのでしょう
1 体が動かなくなったときに自分がどうなるのか不安
誰にそれを頼めるのか、そうなる前に頼めるのか
どのような経路で依頼するのか 方法は?
2 頭が動かなくなったときに、自分がどうなるのか不安
自分に変わって諸事雑用を果たしてくれるのは誰か
自分の世話は誰に頼めばよいのか
3 死後、今の住んでいる家(アパート、施設)の処分はどうすればよいのか
持ち物はどのように処分するのがよいのか
断捨離は今からでもしておくべきなのか
愛着のある衣類装身具家具は死ぬまでできるだけ長い間手元においておきたいのだが、それは叶えられない望みなのか
4 一人っきりで最期を迎えた場合に、遺体はどのような処理がされるのか
葬儀費用だけ残せばよいのか。
葬儀会社に予約をしておくべきか。
いつその日が来るかもわからないのに、予約が効力をもつのか
5 身内に迷惑が及ばないようにしたい。
かと言って連絡を全くしないのも失礼なので
誰からどのように連絡を取るようにしたらよいのか
6 預貯金は特に残したい身内もいない
どこかに寄付をしたいがどうすれば?
それとも
やはり寄付をするより、適当な身内か友人に分けた方がよいのか
7 葬儀とお墓
どの程度まで希望は叶えられるものなのか
何ならお墓はもちろん葬儀も不要だが、
そのように進めることは可能なのか
お墓は散骨希望なので、花だけ添えてほしい
通常(以下)の小さな葬儀でよい
生前に買ってあるお墓に入れてもらいたい
実家又は先祖の墓に入りたいがまだお寺の意向を確認していない。誰かにそのあたりの
交渉を頼めるのか
葬儀は一切不要・遺骨も焼き切り希望。
すべて空っぽにして空(くう)に
還りたいのだが。
等々、そうしたことは一体誰に頼んでおけば
間違いなく希望が通るのか
そして以上のいずれにも共通するのが、
最悪、自分の希望が通らないとしても、
人さまに迷惑だけはかけたくない
というものです
解決方法のご提案
こうしたご相談で、真っ先に頭に浮かぶのは
死後事務管理とか任意後見という契約です。
他にも終活界隈で多用される契約(のようなもの)があります
・遺言作成(できれば公正証書で)
遺言のメインは、
遺産についての去就について決めることです
他にも遺言による認知とか、
遺言による相続人廃除とか、
遺言で定めることができるものがありますが
終活においては多くの場合、大事なことは
遺産をどのように誰に分けるか、という点
だと思います
このような感じで決めます
「不動産は姪の上林南子へ。預金はヘルパーの神崎東子さんへ遺贈する」など。
公正証書自体は、公証人が作成しますが
その内容については、事前に弁護士や税理士との相談が必要なこともあります。
相続人間でできるだけ争いが生じないように
相続税があまり多額にならないように
それぞれの事情に応じた打ち合わせが必要です
公証人は、たしかに遺言書としては問題のないものを作成してくれますが、
相続人間の調整とか相続税等についてまでも
考慮にいれてもらうことは難しいです。
・財産管理契約
所有するアパートの経営等について
自分に変わって管理してもらうとか
預貯金を引き出す際に、代理人となってもらうなど
また、それらのほかにも
依頼したいことをなんでも決めることが可能です
- 不動産の管理処分
- 銀行取引
- 日常生活上の契約支払い
- 物品の購入
- 病院施設等の契約
- 登記・税務申告 などなど
しかしながらこれには重大な欠点があります
この契約書があったからといって、
上記取引の相手方がそれに応じてくれるかどうかは別の問題です具体的には、
銀行などでは、この契約書を持参しても
たとえ公正証書で作成されていたとしてもそのまますんなりと手続きが進むとは限らないことがありますそのためか、この財産管理契約書は、
任意後見契約書とセットで、
公証役場で作成してあることが多いです
おそらくその方が真正が担保される、と考えられるためでしょう
・見守り契約
ひとりで生活していて健康に問題がないか
認知能力に問題がないか、ときどき、
相談にのってもらいたいときに
・死後事務管理契約
死後のもろもろについて決めておく
葬式とか、お墓のこととか、
施設またはアパートの退去に関する諸手続きを依頼しておく
受託者との相談で好きなように契約ができます
・任意後見契約
本人が、受任者に対して、
将来、判断能力が低下したときに
自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部について代理権を与える
という任意後見契約をむすび、
さらにその上で、
将来判断能力が低下し、
任意後見監督人が選任されたときから契約の効力が生ずるものです。
公正証書にしておく必要があり
この契約後は、公証人によって、
後見登記がされます
依頼したいことを契約しておくことができ
このうちの法定事項については、代理権目録として登記されます
・尊厳死宣言
回復不能の、苦痛のみが甚だしい病気等にかかった時に、尊厳をもった状態で死なせてもらうためのリビングウイルです。
無駄な延命処置を拒否、
苦痛低減のためのできる限りの措置の要請等がその内容です。
公正証書にすることもできます
尊厳死協会に加入しておくのもよいかもしれません。
以上について、一番気を付けてほしいのが
しっかりした意思能力があるうちに
済ませてしまう、ということです。
認知症になってしまうと、
遺言公正証書も作れないし、
他の契約も同じく、できなくなります。
できれば、
身体も元気に動くうちに作っておくほうが
よいです。
以上の契約をするにあたっては、
必要な書類をそろえたり、現地を確認したり
自立できなくなったときに入所する施設・亡くなった後のお墓
葬儀場等を自分で選ぶため
いろいろと自ら足を運ばないと話が進まない
といった局面もあるからです。
まずは何から始めたらよいですか
ただ、これらを多少は詳しく説明することはできますが、
では、まずは、どうするのがよいですか?
と問われた場合に、私は
答える言葉を持たないのです。
世の中も法律もすべてがかなりの速度で変化している今という時代において、
ベストと思った今日の決意が、3年後には陳腐なものになる可能性は否定できません。
また、すべてのことにおいて、いつ何が
起こるかわからないのです。
運が良ければ望みが100パーセント叶うこともあるでしょうし、たまたま偶然が重なって思ってもみなかった最悪の事態が勃発してしまうこともあります
人間の考えることには限界があるので、
想定外のことが起こる前提で終活は行う必要があります。
または、逆に、
想定外のことが起こらない前提で行うのも
ひとつの考えです
あらゆる可能性を考慮にいれようとすると、隘路にはまります
何も行動が起こせなくなって、
一番カンタンと思われる遺言書の作成さえも不可能という事態に陥りかねません。
優先順位を決める
全てが同じように優先度が高いかといったらそうでもないかもしれません。
現在、心身ともに健康なのであれば、
見守り契約や財産管理契約は後回しでもよいかもしれません。
人によっていろいろな価値観があるので、
これだけは、と思うものから処理するのが
よいと思います
終活の中で、
心配していることの概ねのイメージは
誰でも似たようなところがあるかと
思いますが、
実際に細かく紐解いていくと、実は、心に
かかっているものは人それぞれ違います
順番としては、まずは、
最も心配していることから、解消措置を
とっておくのがよいかと思います
ただ、
その保全措置がいざという時に
きちんと機能するかとか
経済的な負担が過大すぎるのでは?とか
かえって周りに迷惑を強いることになるのではないか。。。
それらを細かく考えれば考えるほど、答えが出せなくなるということは覚悟しましょう
生きている間の心配
呆けてしまったら、どうしよう
寝たきりになったら、どうしよう
治らない病気になって尊厳死を希望しても
もし叶わなかったら、どうしよう
死亡後の心配
遺産が争いなく分けてもらえるか
家族が争わないか
葬式に希望した友人を招いてもらえるのか
婚家のお墓には絶対入りたくない
子どもの将来が気がかり
一人暮らしなので、孤独死で発見されるまで時間がかかるのが心配
いざという瞬間に
疲れて弱った時でも迷わないように
最期の時に苦痛がないように
寂しくないように
神様、どうかわたしをお守りください
私ならこうする
どんなに考えても答えが得られないとしたら
もしかしたらそれは解決すべき問題ではないのかもしれません。
少なくとも、今は。
最後の手段として、すべて運に任せてしまう
というのもあります
後は野となれ山となれ という言葉もありますね(大好き)
誰にも迷惑をかけずに生きることができないのと同様、死に際しても、結局のところは
どんなにがんばっても、大なり小なり
誰かに迷惑をかけないわけにはいかないのです
程度はともかくとして。
終活を考える人は
迷惑の度合いを最少に抑えようとしてのことでしょう。
考えないで、
成り行き任せの人(のように見える)は
どんなに考えてもしょうがないと思っているのかもしれません。
いずれにしても、将来、
どのような自分になり、
どのような最期を迎えるのかは、
運
としか言いようがないわけです。
人間の力でコントロールできることには限界があるので、終活に当たってあまり多くを
望むと、
現在の喫緊の問題や生命の輝きを
見過ごしてしまうことになるかもしれません
まあ、それはそれで楽しかったりするのかもしれないですが。
本末転倒という言葉をお忘れなく。
将来を案じるために生きているわけではありません。
今、という最大の贈り物の価値を奪われないようにしたいです。
死期が正確にわからない以上、
できることには限りがあるし、
万全の備えを望むことは人間には不可能だという認識が欠かせません
さて!
1 できるだけ、身軽になっておく
暮らしのダイエット。
整理できるものは整理する。
いっそ、ワンルームに引っ越す覚悟で
荷物の整理!
スーツケース1個とは言わないまでもコンテナ1個分ほどの、好きで大事なものだけを
残しておく。
余ったものは、感謝して、
捨てるなり、寄付するなり。
ここで寄付先を探すのに時間をかけすぎると
終活作業全体が大幅に滞ります
適当な寄付先が見つからなければ、
潔く捨ててしまうのもやむを得ない選択と
なります。ここをクリアしないと次に進めません。
たとえばどんな契約をするとしても
管理すべきものが多いというだけで、
事務作業の分量が多くなり、
受託者(依頼された人)の負担が大きくなります
だから事前に身軽になっておくのは、
大事なことです
2 遺言作成し、
- 財産管理契約
- 任意後見契約
- 死後事務委任契約
この3つの契約を司法書士法人と締結する
資格者がひとりの個人事務所だと、
その資格者が廃業してしまったらもう
面倒をみてもらうことができなくなる恐れがあります
3 この3つ全部ではなくても、
最低ラインとして上記のうち
特に気にかかる契約だけしておいて、あとは
いざとなったら成り行きに任せる
4 終活コンサルタント
このように書いてきて、
終活コンサルタントというものがあることを思い出しました
ただ、それを大事な友人に勧められますか、
といったら、試したことがないので、何とも言えないのですが。
歯科医とか、美容院とか、税理士とか、実際に試したことがあるのであれば、その情報を伝えることに躊躇はありませんが、
終活コンサルタントは、私も依頼していないし、実際に依頼してる人の話も聞いたことがないので、情報はネット上のものだけです。
結論としては、
そうですね、
まずは興味があるなら何社か相談してみたらよいのではないでしょうか
で、話を聞かせてもらったら、
必ず、即決しないで、
いったん帰って、ゆっくり考えます
と言いましょう
もし、
今、契約すると、○○円お得です、とか
サービスで○○を無料でつけます、など
そのようなセールストークが入った場合は、考え直した方がよいです。
こうした大事なことをじっくり考えたいと
思うのは当然で、
その時間を取れないよう返事を急かしたり
今ならお得ですよ系の誘い文句、
それらは消費者を惑わす悪徳商法で
よくみかける手口です。
まとめます
- 遺言作成(公正証書)
- 財産管理契約
- 見守り契約
- 死後事務管理契約
- 任意後見契約
- 尊厳死宣言
これらを専門にしている司法書士・弁護士もいます
ホームページに書いてあることもあるし、
電話をして出た事務員さんにこのことを
聞いてみると一番よくわかります。
その事務所で扱っていなくても、
同業者同士のつながりもあるでしょうから
そこから別のところを紹介してもらえるかもしれません。
よい終末を!
幸運をお祈りします
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。