子どもに遺産を相続させたくない!!!!
もくじ
どうしても、子どもに遺産を相続させたくない!!!
質問
わたくしは子どもから、日々、ひどい虐待をされています。血を分けた実の子どもですが、そのような冷たい子に、死んでも、財産を渡したくありません。しかしながら、わたくしの相続人は、子ども(市太郎)が一人。。。
このままわたくしが死んでしまったら、ささやかものではありますが、全てはこの市太郎のものになってしまうのでしょうか。何か良い方法はありますか。
「今さら遺言を書いても無駄だ」、と市太郎に嘲笑されました。
一体そんな馬鹿なことがあるのでしょうか。
わたくしは、このままでは、死んでも死にきれない気持ちです
(相談者 のり子)
答え
推定相続人の廃除、という制度があります。(民法892条)
これは、のり子さんの子ども、市太郎さんから、相続権を奪い取るということです。
相続人の廃除とは?
これは、遺留分を有する推定相続人(つまり、子、配偶者、直系尊属のこと)が、
被相続人(この場合、ご相談者のり子さんのこと)に対して、
- 虐待をし、
- または、重大な侮辱をくわえたとき
- または、推定相続人にその他の著しい非行があったとき
には、この推定相続人の廃除を家庭裁判所に対して請求することができる、というものです。
これは、遺言ですることもできます。(民法893条)
遺言でなされた場合は、
- 遺言執行者が、
- 相続人の死後、
- 家庭裁判所に対して
「推定相続人の廃除」を請求します。
請求すれば認めてもらえるのか
ただし、家庭裁判所は請求があるとその事実があるのかを審理して、つまり場合によっては調査、証拠調べ等をして、そのうえで審判をします。
なので、請求したからといって必ずそのとおりの審判がされるわけではない、ことにご注意ください。
また、審判がされた時も却下された時も、ともに異議の申し立てをすることができます(即時抗告)
廃除の審判が確定すると、
そして、いずれの場合も推定相続人廃除の審判が確定すれば、その推定相続人は
確定的に相続人ではないことになります。
市太郎の戸籍に、「年月日母のり子の推定相続人廃除の裁判確定」と記載されます。
全ての相続手続きには戸籍の添付が必要なので、この記載がある限り、
市太郎はのり子さんの財産の一切を、相続することができません。
もっと、簡単に、遺言書を書くのはどう?
なお、裁判所に頼むのは面倒なので、遺言か何かで済ませたいとお思いでしょうか。
(これは、遺言による廃除請求ではなく、遺言で、「市太郎以外の人に財産を譲る」などすることを指しています)
しかし、子には遺留分というものがあります。
つまり、のり子さんの相続財産の2分の1は、
子である市太郎のものとして、民法で認められた権利なのですね。
その2分の1については、被相続人が勝手に処分するのはいいけれど、
もしも市太郎から請求されたら、反論の余地はあまりありません。
子には、財産の2分の1の権利があります。
しかし、子の側から何も文句を言ってこなければ、遺言はそのまま有効です
遺留分を無視しても大丈夫なのか
なので、遺言書に、「財産全ては○○法人へ寄付する」などと書いたとしても、
市太郎は「財産の2分の1を遺留分としてこっちによこせ」、という請求をすることができます。
このように、遺留分を侵害している遺言、が当然に無効になるのではありません。
請求して初めて、権利は市太郎のものになります。
遺留分減殺請求
請求(遺留分減殺請求・いりゅうぶんげんさいせいきゅう)は、
裁判所に対してする必要はありません。
単に、のり子さんから財産を譲渡された人などに対して
「侵害してるからこっちによこせ」、という意思表示をするだけで、足ります。
これは、民法が認めた権利なので、その請求を無視しても、
裁判されたら、勝ち目はありません。
のり子さんは、この時点では亡くなっているので、
請求する相手方は、のり子さんから財産を譲り受けた人、です。
のり子さんが、〇〇法人にたいして全財産を遺贈したとしたら、
その〇〇法人に対して遺留分減殺請求をします。
請求すれば、2分の1は、取り戻すことが出来ます。
では、どうすれば?
よって、
- 本当に、
- どうしても、
- 絶対に、
- 本気で、
子に財産を相続させたくないのならば、
廃除の請求をするのが確実です。
ですが、一時の激情に駆られてこのようなことをなさいませんように。
まことに大きなお世話ですが。
ご自分が亡くなったあとで後悔しても取り返しがつきません。
しかし、廃除の審判が確定しても、裁判所に対して取消を請求することができます。遺言で取消請求をすることもできます
なお、その廃除された市太郎に子がいた場合は、その子(ご相談者のり子さんの孫)には代襲相続権があります。
市太郎に代わって、のり子様の相続人になる、ということです。
では、現実的に、廃除はどうなのか
なお、現実問題として、推定相続人廃除の請求については、
裁判所がなかなか認めてくれない、
と言われています。
当事務所にご相談においでになった方には、そのあたりをご説明するので、
実は仕事としてお引き受けしたことはありません。
この審判をもらうのは、けっこう、きびしいのだろうな、と思います。(私見ですが)
なんといっても、「廃除してくれ」、と請求 するわけですから。実子を。
推定相続人から相続権を完全に奪う、という意味ですが、
この言葉からは、単にそれだけではない非道なイメージが浮かびます。
絶縁、親子の縁を切る、勘当、いずれの言葉もそれぞれにインパクトがありますが、それらを遥かに超えた非情で冷酷な感じ。
たぶん、体温が感じられないから。かもしれません。
廃除、、、すごい言葉ですよね。
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。