司法書士の報酬はお高いの?

司法書士の報酬を斬る!

 

登記の際に、司法書士が頂戴する登記費用

司法書士報酬(セルフ登記なら無料になる部分)と
登録免許税(セルフでやっても絶対必要な税金)の合計です

まずは、そこを誤解なきように。

普通に登記して20万円なんて司法書士は儲けすぎ、というようなハナシを聞かされることがありますが、
ほとんどの場合は、その内、
登録免許税が15万円ほどはかかっているものです。

そのような誤解がないように、司法書士は、
お預かりする登記費用の内、
登録免許税がいくらで
報酬がいくら。というように
内訳も併せてお伝えしています

お伝えはしているのですが、その結果として登記費用が20万、そうか司法書士に20万そんなにかかるのか20万、司法書士に報酬20万円という感じになってしまうのでしょう。

 

登録免許税

登録免許税については、登記の際に
法律に従い必ず納付しなければならないため
誰が計算しても基本的に同額です

ですがこの計算は難度が高い場合もあって
たまには、間違える司法書士もいます。
租税特別措置法の軽減適用を知らずに
あとで真っ青になる素人の方もいます

どんなに、納得がいかなくてもこれを納付しないことには、登記が進みません。
で、これは、司法書士の報酬ではないので
司法書士相手に減額交渉などしても無駄です
ここはもうすっぱり諦めて粛々と納めるしかありません

 

報 酬

報酬は、
登記費用から登録免許税や印紙代を差し引いたものです。

司法書士専用の領収書の左側部分にあるのが報酬です

かつては、
司法書士報酬は「報酬基準」というものが定められていたので、上限下限と幅はありつつも、確固とした目安がありました

私が開業した約30年前は報酬の計算の仕方という開業前研修があってなんとほぼ半日から1日がそれに充てられていたように記憶します

妙に細かく、厳重で、そこを間違うと命はないぞみたいな。

1回の研修では足らず、日々の業務の中でわからなくなったら、この先生(先輩司法書士)に必ず確認することという担当者制というか係が決められていた程に、報酬計算するたびに頭を抱える始末でした

 

そのうちに、公正取引委員会のお達しだったかがあって、報酬基準は撤廃され、今に至ります

おそらくそのとき以来、原則として
報酬は自由に決めてよいことになったのではないでしょうか

 

ただ、

1 あらかじめ、報酬額の算定の方法その他報酬基準を示さなければならない

2 報酬金額または算定方法を事務所に掲示するなどして明らかにしなければならない

 

以上が定められています

 

好きなように決めてよいと言われても、あまりに非常識な価格だとお客様も困ります。
なので、ほとんどの司法書士は、
かつて存在した報酬基準を基本として、
それぞれやりやすいように決めていると思います

低めで計算してその分出張立会費用をたっぷりいただく、とか。

面倒なので所有権移転はいくら、
抵当権設定はいくらとか一律で決めてしまうとか。

おそらくほとんどの場合は、
基本報酬に、筆数加算がされる感じです

報酬基準時代にそのように決められていたためと思われます

具体的には、

例えば、1筆で、3万円だとしたら
2筆で6万円ではなくて31、000円という感じ。
5筆だと34、000円というように。

1筆で3万円だから10筆で30万円かというとそのようなおいしい話はなくて39、000円という計算になります

ですが、

そこはそれぞれが原則として自由に決めてよいわけなので、
報酬いろいろということになります

当方では、
それまでの登録免許税の多寡に連動して報酬を上下させるというのを、撤廃しました。
ともかく面倒なので。
それ以降の計算の楽になったことと言ったら。。。

 

高すぎる報酬は?

というようなわけで、基本、報酬は勝手に決めてよいのです。

ですが、ただ、あまりに高額だと、
司法書士の品位保持義務という規定に反するということで懲戒の対象になると言われています。
この法律です

司法書士法第2条(職責)
司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。

ちなみに、例えば交通違反等で罪に問われてもこの条項違反ということで懲戒の対象になります

 

報酬請求で品位保持義務違反に問われるとしたら

おそらくたとえばカンタンな保存登記で報酬30万円とかですね。(登録免許税は別)

 

安すぎる報酬は?

反対にあまりに低廉な価格だと、今度は
不当嘱託誘致という規定に違反することになり、これもまた懲戒の対象らしいです
同時に品位保持義務にも抵触するかもです。

これはおそらく抹消1件1000円(登録免許税は別)とかが対象です

司法書士施行規則26条(依頼誘致の禁止)
不当な手段によって依頼を誘致するような行為をしてはならない

同会則85条(不当誘致行為の禁止)
不当な金品の提供又は供応等の不当な手段により依頼を誘致してはならない。 

 

実際に懲戒例は知りませんが、
高すぎるのも安すぎるのもいずれも懲戒対象とは言われています

 

おまとめ

 

お客様にとっては、
司法書士が懲戒処分をうけようがどうなろうが関係ないことではあるのですが
これらはかなり重要な決まりであって、
司法書士という職業の存続にかかわることでもあるので、懲戒はきびしい印象があります

 

安すぎる報酬は司法書士自らの首をしめることになるので、懲戒対象とされるのはもっともだと思います。

安値競争が始まってしまうと、サービスの質はどんどん低下し、登記業務自体もする人が減少していき挙句の果てに、AIがすべてを仕切る、司法書士という職業が消滅するという事態にもなりかねないわけです

 

登記ができればよいのかな

 

登記さえできればよいわけではありません。

もしも、どの司法書士に頼んでも断られた、という案件を経験したことがあれば、おわかりでしょうが、
司法書士が引き受けない仕事は、
登記ができないというよりは、
登記をしない方がよいということです。

例えば、近頃流行りの例でいえば

痴呆状態で何も喋れないどころか、判断もできないような人の登記を
司法書士が引き受けることは絶対にありません。

成年後見人がついているのでない限り
意思無能力者からの登記は、無効です

登記は、書類審査なので、
意思無能力者といえども印鑑証明書等があれば、できないことではありません。

たとえば、

Aが、その痴呆の方から土地を買ってA自身への登記を行い、さらにBへの登記をしたとしたら、
ちょっと考えてもBの権利は非常に危ういものではないでしょうか?

 

もう一度報酬を考える

 

高い分には、依頼人が納得して払うのだったら別によいのでは?という気もしないではありません。
ただ、どの司法書士に頼んでも大差ないだろうということで
たとえば保存登記30万円(登録免許税は別途)を支払うというのは、
支払った方が気の毒と言えば気の毒なことです。

ですが考えようで、経済を回すという意味合いにおいては、それなりの意義はありましょう。

 

まとめると

地域差(都会は高額)とか、
事務所規模(大人数の事務所は高額)とかによって
報酬額の多寡についての一定の傾向はある印象です

ですが、上記のような懲戒処分という怖い規定がある以上、
普通の司法書士の報酬がとんでもなく高額だったり、低額だったりということはないと思います

何か悲しいことがあって、
やけになってどうでもいい、と思って
随分なことをする可能性はゼロではありませんが、
まあ、一般的ではありません。

ネットで調べて片っ端から見積もりを取る、という戦法をとっている人もおいでのようですが、
結論としては、費用の面においては誰に頼んでもそれほどの差はない、というのが実感です

ただ、どの職業でもそうですが、

残念なことにどうしても知識経験や技能の差というものはあります。
これは、A司法書士に頼んだらできないと言われたが、B司法書士に依頼したら2週間でカンタンにできた、というような事例が存在するということです。

信頼できる知合いに紹介してもらうのが一番ですが、
あとは、何事もそうですが、
やはり運、でしょうか。

よい出会いがありますように。

 

登記のご相談は
どうぞお気軽に。

評価証明書を頂戴できれば、
売買・贈与・相続のお見積りはいたします