相続法が改正される
相続法が改正される
相続法(民法ほか)がまた改正となり
2021年4月28日公布されました
施行日(実施される日)は、2年から3年先と言われています
・・・まだ決まっていません
今回の改正は、前回の改正よりさらに一段と私達に関係が深くなったような印象があります
何が変わったのか、私達一般市民が気をつけるべき場面はどこにあるのでしょうか
☆ ご注意
かなりの部分が、施行日から適用されることになります。
が、
特に遺産の分割に関する経過措置に注意が必要です
民法附則第3条(遺産の分割に関する経過措置)に規定が置かれていますが、
つまり、
施行日前に相続が開始した遺産分割についても新法が適用されることになります
ということはつまり、数年前に相続開始した件、についても施行日(2~3年先)からこの改正法が適用される結果、
やることをやらないと罰金が科せられることになるわけです(猶予期間に注意のこと・と言ってもこのあたりについては、未定)
もくじ
相続登記等の義務化
これまでは、
相続登記はするもしないも相続人の意思次第でした。
やらなくても特に不都合はなかったからです
相続登記をしなくても、
固定資産税は課税されるし、
誰かに注意を受けることもなかったわけなので。
当方でも、
相続ってやらないと罰金きますか?などと
よく聞かれますが
売却するとか、
これを担保にお金借りるとかがなければ
特段、しなくても困ることはないですと
回答するのが常でした。
なので、
面倒とか話がまとまらないとか、
別に相続したくない、或は
登記にかかる費用が高額なのでやれない
等の理由によって、
亡くなった方の名義のまま相続登記はなされないことがままあったわけです
これからは、もう、そんな悠長なことは言っていられなくなりそうです。
相続登記が必要だということを知っていてもなかなか実行できない理由が山積み。
だからこそ九州の面積と同じくらいの所有者不明土地ができるに至ったわけです。
そこで、伝家の宝刀。罰金制度が登場してしまいました。
相続登記の義務
自分が相続したことを知ってから3年以内の所有権移転登記(名義を変える登記)が義務化されました
正当な理由がないのに怠れば、10万円以下の過料が科されます
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
新不動産登記法第76条の2第1項
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により所有権を取得した者も同様とする。
相続の簡易な申出
ただし、登記にいたらなくても、
自分が相続人の一人であると戸籍等を添付して申し出ることによって、この登記義務を果たしたとみなされるため、過料は科せられません
(相続人である旨の申出等)
新不動産登記法第76条の3
上記(76条の2第1項)の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨および自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる
ところで、相続登記は、相続人全員の協力のもとにするのが原則です
たった一人しか相続人がいない場合は、相続登記をするもしないもその人の気分次第ですが、2人以上いるときは、協議して、全員の合意を形成する必要があります。一人でも反対する人がいたら、遺産分割協議は成立しません。
具体的には、
遺産分割協議によって誰かの名義にするためには、原則として相続権のある人全員の実印での押印が必要です
なお、
法定相続人全員をその法定相続分で登記をするのは簡単です。
ひとりの委任状があれば、全員分の法定相続登記は可能なのです。
ただし、
全員の協力(委任状)がなければ、委任状なしで登記をされてしまった人には、登記識別情報が通知されません。(だからといって致命的な不利益はありませんが)
なので、相続人間で話がまとまらないときは10年たっても20年たっても登記ができないことになってしまい、そのようなときにまで過料を科すのはあんまりだ、ということでこのように簡易な申し出が許されています
遺産分割を10年たってもしないと
また、遺産分割されないまま10年が経過すると、単純に法定相続割合で遺産分割されることになります。
具体的には、
通常の遺産分割では考慮されることが多い、特別受益(結婚のときにたくさんもらったからそれを考慮する等)や、寄与分(家業のために粉骨砕身して尽くした等)を一切加味しないということです。
妻と子供が3人いたら、
妻2分の1、子供はそれぞれ6分の1ずつ。というように画一的に遺産分割される仕組みが創設されました。
(期間経過後の遺産の分割における相続分)
新不動産登記法第904条の3 前3条(903条904条特別受益者の相続分、904条の2寄与分)の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。(但し書き省略)
住所変更登記等の義務化
引っ越しや、縁組等で住所や氏名が変更した人は、2年以内にその変更登記をすることが義務とされました。これを怠ると5万円以下の過料となります
現在の所、引っ越しをしたからといって、登記簿に自動的に反映されるシステムとはなっていません。役所に住所変更届をするとそれと連動するように登記簿の記載も変更されることになるかもらしいですが。
(所有権の登記名義人の氏名等の変更登記の申請)
新不動産登記法第76条の5
所有権の登記名義人の氏名もしくは、名称または住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内にそれらについての変更の登記を申請しなければならない。
(職権による氏名等の変更の登記)
新不動産登記法第76条の6
登記官は所有権の登記名義人の氏名もしくは名称または住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、職権で、その変更の登記をすることができる。ただし、名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。
死亡情報などの職権による表示
登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示することができるようになります。
これによって、登記簿から、名義人の死亡の有無を確認することが可能となります
(所有権の登記名義人についての符号の表示)
新不動産登記法第76条の4
登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る)が権利能力を有しないこととなったと法務省令において認めるべき場合には、職権で、その所有権登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる
不動産のいわゆる名寄せ
親、または、祖父母等の先祖が所有していた
(かもしれない)不動産が
あるのかないのかどこにあるのかよくわからない。
ということも近頃では散見します。
高額不動産であれば、固定資産税が徴収されるのでそれと知れますが、
特に、地元ではない、遠方の土地の評価の低い土地については、
本人が記録を残していない限り、その相続人には知りようがありません。
そこで、このほど、所有不動産記録証明制度が新設されました
これは、特定の者が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行するものです。登記所から、全国のいわゆる名寄せができるということです
これは、被相続人についてのみならず、自分の所有不動産の確認のためにも利用できます
(所有不動産記録証明書の交付等)
新不動産登記法第119条の2
何人も、登記官に対し、自分が所有権の登記名義人(およびこれに準ずる者として法務省令で定めるもの)として記録されている不動産にかかる登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるものを証明した書面(所有不動産記録証明書)の交付を請求することができる。
手数料の納付が必要です
2相続人ほか一般承継人は、被承継人にかかる所有不動産記録証明書の交付を請求できる
これら(所有不動産記録証明書)は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対して請求する
どうやら、全国どこの登記所からでも請求できるわけではなさそうです。まだ、指定は行われていません。どきどき。
土地の所有権を放棄する
この制度の誕生については、相続で悩む人達から一日も早い法改正を待つ声が聞こえてきていました。
誰も欲しがらない広大な農地、管理が大変。
農地ではないけど毎年多額の固定資産税を納付しないとならず、分割協議のネックになるなど。
ただし、
そのような土地の全てが所有権放棄の対象になるわけではありません
どちらかというと、優良土地に限られている感じです。
○放棄できる人
相続か遺贈(相続人に限る)によって土地を取得した人
○次の土地は放棄できない
- 建物の存する土地
- 担保権等が設定されている
- 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
- 特定有害物質により汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地等、帰属範囲に争いがある土地
○法務大臣に対して承認申請をする
審査手数料がかかります
○負担金の納付
10年分の管理費用の前納が求められるようです
管理費はたとえばこのような感じです
- 現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)
- 原野 約20万円(粗放的な管理で足りる)
- 市街地の宅地(200㎡) 約80万円
以上は民法ではなく、
相続土地国家帰属法
(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)
簡略化される登記等
遺贈
相続人に対する遺贈の登記は、
受贈者が単独で申請することができます
遺贈の登記とは
遺贈の登記は、相続の登記と異なり、
これまでは被相続人と受贈者の共同申請でした。
被相続人すなわち(死亡しているので)
遺言執行者または、
相続人全員のことです。
遺言執行者
改正前でも、遺言執行者が定められていれば大した問題ではありませんでした。
ですが、
それを定めてなかった場合は、
相続人全員からハンコをもらうか、
家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうかという、
場合によってはけっこう高いハードルとなっていました。
たとえば、
子供のいない高齢の夫婦で、妻が亡くなった夫から遺贈を受けたとき。亡夫には生前から交流のない兄弟が10人いて、ほとんどの兄弟は行方不明だったり、すでに死亡していたりするなどして、結果、交友のない相続人が約30人くらいいる。とか。の場合。
それがこの度の改正で、遺贈を受けた人だけで登記を申請できることとなりました
これは、施行日以後にされる登記の申請について適用されます
新不動産登記法第63条3
買い戻しの特約に関する登記の抹消
新不動産登記法69条の2
契約の日から10年を経過したときは、
所有者は、単独で抹消登記ができます
そもそも買戻権は10年が最長なので(10年を超えることはできない)登記簿上、
10年を経過しているのが明白であれば、これを所有者だけで抹消登記することになんの問題もなかったはずなのです。
が、
これまではこれを単独抹消できるという規定がありませんでした。
なので、買戻権を抹消するためには、買戻権者を探し出して、ハンコをもらう必要があったのです。数十年前の買戻権者を探し出すのは大変です。
おまとめ
施行日および実務運営上の規定がまだ
公開されていないため、
隔靴掻痒の感があります。
公開が待たれます。
新しい法律が、希望の灯火となりますように
その法律が一人でも多くの人を助けることができますように
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。