自分で作る遺言書

遺言書の作り方

 

遺言書は、

 

  • ご自分で、
  • どこにも行かずに、
  • 誰にも手伝ってもらわずに、
  • ひとりで、

作ることができます

 

いくつかの絶対に守らなければならない決まりがあって、それさえ守っていれば、
法的に完全に有効なのです。

 

現在、遺言書の書き方を法定している民法が改正中(2019年1月13日から実施されることになっています)   なので、
これについてはもう少しあとの方で書きます

 

 

で、決まりは大きく言うと3つしかないのですが、

 

  • 全文自書
  • 日付を書く。
  • 氏名のあとに押印

(民法968条)

 

このほかに、

 

  • 鉛筆ではなくペン、ボールペンを使う
  • 広告チラシの裏でも有効ですが、できれば、白い紙に。コピー用紙とか、半紙とか。
  • 遺言本文は、具体的に、誰が読んでもわかるように。
  • ご自分の住所氏名(本籍もできれば)書く

も必要です。念の為ですが。

 

こんな感じで書いてみる

 

例えば私が書くとすれば、


遺 言 書

私、片岡えり子は次の通り遺言します。

私の全財産は片岡るり(住所遺言者と同じ)に相続させる。

2018年8月5日

(住所・本籍)千葉県茂原市上林184番地1

片岡えり子 印


 

でも、相続権のある人が何人もいたり、
分けるべき財産がたくさんあったりすると、
ひとりで作成するのは、確かに難しいかもと思いますが。

そんなときは、無理にがんばらずに、弁護士なり、公証役場なりを、選択してください。自分で書くのは、手軽で簡単ですが、遺言者の意思が実現されなかったら、
本末転倒です。これほど残念なものはありません。

 

残念な遺言書とは?

 

大事なことはこれだけしかないのに、実際に残念な遺言を目にすることがあります。

 

・元号がない。平成とか、昭和とか、書いてない(書かない習慣の人は、本当に多いです)例えば、62年と書いてあったら、昭和に決まっておろうが、というご意見は重々承知していますが、お気持ちはわかりますが、通りません。

・何月はあっても、何日がない。

・1月吉日とか、これも残念。

(ただし、1月第二土曜日とか、私の60回目の誕生日とか、
何らかの形で、日付が特定できる書き方ならば大丈夫)

 

・押印がない。サインだけでは、駄目です

拇印でも大丈夫だそうですが。実印とは言わないまでも、
シャチハタ印以外の、朱肉を使う印鑑で押しましょう。

 

・代筆(自分で書かずに、他の人に書いてもらう)

つまり、自分で字が書けない人は、この形式で遺言を遺すことは不可能ということになります。公証役場へ行かないと、です。

 

・全文、または、肝心なところが、ワープロうち。

「後記記載物件を誰それに相続させる。」と書いたあとの後記部分を
ワープロ打ちしたために、遺言全部が無効とされた判例が有ります。

 

民法が改正。自書しなくてもいいみたい??

 

しかしながら、この「自書する」が、このほど法改正される部分です。

 

財産目録を別紙として添付する場合に限り、自書を不要とする」こととされました。たくさん財産をお持ちの方にとっては朗報です。

別紙として添付するのは、

  • 財産部分をワープロ打ちしたもの
  • 登記事項証明書
  • 預金通帳コピー
  • 固定資産税評価額証明書

などです。

なお、別紙の全てのページに署名押印が必要です

2019年 1月13日から施行されます

 

 

以上例に上げた残念な書き方は、遺言書としての形式が満たされていないケースで、
もしも裁判を起こしたとしても、これを争っても勝ち目はないです。

 

3つの大事をもう一度

 

  • 全文自書
  • 日付を書く。
  • 氏名のあとに押印

(民法968条)

なお、書き間違えたときは、訂正するやり方が難しいので、
全文を書き直したほうがよろしいかと思います。念の為。

 

さらに残念な遺言書パート2

 

あとは、形式が問題なくても、内容的に実現可能性がないというか、せっかく形は整っているのに、争いになったときに勝ち目が薄いと思われる 残念なケースがあります。

 

・人(誰に遺すのか)がはっきりしない。

「可愛い孫に全財産を相続させる」とかは、残念です。どの孫だかわからない。

(ちなみに孫はそのままでは相続権者ではありません。養子縁組などによるか、または、子が先に亡くなっていて代わりに相続権を得ていれば、できます。で、なければ、遺贈ということになります)

 

・もの(対象となる物件)がはっきりしない。

代表的なのが、「自宅をすべて妻に相続させる」

これも微妙というか、残念なケースだと思います。

本来、遺言書の体裁が整っていて、家庭裁判所の検認を受けていれば、それに基づいて相続等の登記ができるのですが、
「自宅」、だと、裁判では勝てるかも知れませんが、そのままでは登記は難しいです。
その遺言書によって登記をするためには、どこの何番地まで、詳しく、書かれている必要があるのです。

 

そんなの面倒くさい、と思ったあなた。

相続させたい人が一人しかいない場合は、超簡単な方法があります。

 

「全財産を妻〇〇に相続させる。」(本文です。住所氏名等はもちろん必要です)

 

これだけです。

 

(ちなみに、子供がいる場合は彼らには遺留分があるので、子供から遺留分を請求されたら、妻はその請求に従わなければなりません。)

 

遺留分とはなんでしょう?

 

・実現可能性が100%ではない、こともある(遺留分を無視した遺言)

 

遺留分というのは、法律が、相続人に認めた権利です。(民法1028条)

例えば、亡くなった夫に、妻と子供二人がいた場合。
その3人の遺留分は合計で財産全体の2分の1です。

 

具体的にいうと、

 

亡夫が全財産を恋人A子に遺した場合、

この妻及び子供二人は、そのA子に対して、
「半分返して」、という請求をすることができます。

A子は、請求されたら、必ず、返さなければなりません。(自ら返還しない場合は、裁判ということになりますが、裁判にしても、請求自体は必ず認められます。ただ、財産がたくさんあったときは、どの部分を返してもらうか、については、争いになることが多いです

この部分もこのほど、法改正があり、金銭のみの返還請求ということになりました

 

なお、遺留分の権利のある人達から請求されなければ、その遺言の内容は

100%OKです。実現されます。

 

遺留分請求権の時効は、遺留分を侵害されたことを知ってから1年または、相続発生後10年です。(民法1042条)

 

ところで、自筆遺言書を発見した場合は

 

ちなみに、被相続人死亡後に自筆遺言書を発見したら、開封せずに家庭裁判所に持参して遺言検認手続を経る必要が有ります。

 

○ 遺言の検認申立時に持参するもの

 

  • 遺言書
  • 死亡した人の戸籍
  • 相続権ある人達の戸籍
  • 全員の住民票
  • 収入印紙 切手

 

以上を申請書と併せて提出すると、全員に対し裁判所が呼出状を郵送してくれるので、定められた遺言検認手続日に、裁判所に集まります。

 

その遺言書が故人の手になるものなのかどうかを検認してもらう手続きです。これをしないと、遺言書があっても、遺言の執行はできません。(相続登記をしたり、預金を解約したり)

 

ただし、内容が正しいとか、実現性があるとかないとかそんなようなことを検証するものではないので、ご注意ください。

つまり、検認されたからといって、上のように、人がはっきりしなかったり、ものがよくわからなかったりした時は、登記ができないということになるわけです。

 

これが一番悲しい遺言書

 

そして、一番残念な遺言書とはどういったものだと思われますか。

 

 

 

 

それは、発見してもらえない遺言書、です。

 

ですが、これも、実は、このたびの民法改正で新しい制度ができたことにより、解消されそうです。

 

自筆証書遺言の保管制度

 

  • 本人が、(代理は不可)
  • 法務局に、
  • 自筆の遺言書を持参して、
  • 本人であることの確認を受けて
  • 遺言の形式に誤りがないかどうかをチェックしてもらって、
  • その原本を法務局で保管してもらえる

という制度です

その情報は全国の法務局で共有されるとのことです。

詳細は未定のようですが。

 

また、この制度を利用すると、面倒な、家庭裁判所の検認手続も不要になります

この制度は、2020年7月10日から実施です。