抵当権ついたまま建物滅失登記?
抵当権付いたまま、建物滅失登記は可能なの?
抵当権抹消のご依頼がありよく聞いてみると
その建物はすぐにも取り壊しのご予定だとか
・・・抹消登記費用が
もったいないのでは?(私ならやりません)
そのようにお伝えしましたが、
そうだとしてもやはり心配だから、
抵当権をきれいにしてから取り壊しをして
滅失登記にかかりたいとのこと。
真面目な方なのだ、と感服しました
このような場合、滅失登記をする予定に
なっているものは、わざわざ抵当権を
抹消するまでもないのでは?
と思うものです。よって、
このような場合には当方では抹消登記はおすすめしません
もくじ
滅失登記とは
建物は、時間の経過によって、
朽廃することもあるし、
災害で倒壊することもあり、また、
火災による焼失、あとは、
意図的に取り壊す、など。
いずれにしてもいずれは、消失してしまうものです
そのようにして建物が消失したときは、
登記簿をそのまま残しておくのは
事実に反することになるので、
滅失(めっしつ)登記というものをします
もちろん、ご本人が自らすることも
可能ですが(カンタンです)
専門家に依頼するとしたら、
土地家屋調査士(とちかおく・ちょうさし)
の管轄です。
司法書士の職分ではありません。
抵当権が残っている場合
というわけで、
滅失登記のご依頼があったときは、
土地家屋調査士をご紹介することになります
これまで、何度も
抵当権がついたままの状態で依頼をしてきました。
全て、つつがなく滅失登記は完了し、
問題が生じたことはありません。
ですが。
少し心配になったので、
土地家屋調査士お二人にこの件、
確認してみました。
当たり前ですが、以前にも確認していて
もちろん大丈夫ということだったので
抵当権付きのまま滅失登記をお願いしてきたわけです
こうすれば、問題なし
土地家屋調査士曰く、
全然、大丈夫。
ただし、弁済は終わっていること。
そのことを、調査報告書に書いて
登記申請するので。特段の問題なし
年月日弁済済みとか、〇〇銀行○支店担当〇〇に抵当権付きのまま滅失登記をする旨の同意を得たなどと記載する
抵当権者の承諾書などは、不要
とのことでした
ここで、滅失登記ができるかどうかのポイントは、
弁済が終わっていること。そして、
建物が実際に滅失
(取り壊されたとか、焼失したとか)
していること、だと思います
債務がまだ残っている場合
仮に、
返済が全部終わっていないで債務が残っているのにその担保である建物を勝手に取り壊してしまうのは直感的にいくらなんでもまずいのでは?と思いますよね。
その直感は正しいです。
法律にもあります
(期限の利益の喪失)
民法137条
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない
(弁済期を待たずに、すぐに全額返すように請求されるということ)
1 債務者が破産手続き開始の決定を受けたとき
2 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき
3 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
この2項によって、担保
(この場合は建物)を滅失させたときは
期限の利益を主張できなくなる、
ということになっています
つまり、債務者(お金を借りている方)は
弁済期がまだ来ていなくても、
債権者(お金を貸した方)から全額を返済するように要求されたら
文句は言えないという意味です
債権者が要求してこなければ、そのままです
さて、債務者とは何?
債務者というのは、登記記録に
債務者として書かれている人のことでは
ありません。
ちなみに、登記記録の抵当権記録は
このような感じでされます
抵当権設定
平成3年3月3日金銭消費貸借同日設定
債権額 金3330万円
利 息 年3%
損害金 年3%
債務者 片山りえ
債権者 地元銀行
この欄の債務者の箇所に書かれているのが
地元銀行からお金を借りた人、つまり、
債務者であるわけですが、
ここで、
ご注意。
返済が全て終わっていれば、その人は
債務者ではありません。
債権者に対して債務を負ってはいないからです。
登記記録上、
抵当権がつけられたままであることと
残債があることは
別物です
登記簿に抵当権がついているからといって
それが、既に弁済の終わった
実体のない抵当権なのか、
現役の債権なのかはわかりません。
なので、自宅の登記簿を取得して、
覚えのないあまり昔なので忘れてしまった
抵当権がついているのをみてびっくりすることがあります
このウチは、
3000万の抵当に入っているわ!
どおしよう!!
・・・ご安心ください
殆どの場合は、返済は終わっているのに
抵当権の抹消手続きが済んでいないだけです
そうでなければ、とっくに
競売にかけられていたでしょうから。
銀行(抵当権者)に出向いて抹消書類を発行してもらえば大丈夫。
また、根抵当権(ねていとうけん)が
たとえば、極度額1億円として記録されたままのこともあります。
根抵当権とは商売をしている方ならおなじみでしょうが、
ざっくり言うと、
その1億円の範囲内で何度でもお金を
貸してもらえるという仕組みの抵当権のことです。
借入金の返済を終えたあと新規に借り入れをしなければ、
根抵当権の記載が登記簿に残っていたとしても残債はないということになります
なので、
銀行に依頼すれば、抹消書類がもらえるはずです。
抵当権を抹消するということ
多くの場合、お金の貸し借りがあったときは
すぐにも抵当権の登記をしますが、
弁済が終わったからといって、すぐに
抹消の登記、と思う人はむしろ少数派か
金融関係のプロです
そのような基礎知識がなければ、
- 抵当権の登記がされていることを知らない人は多い
- 知らなければ、抹消しようという発想はない
- 知っていても銀行が自分の都合で勝手に登記したと思っている
- 銀行が勝手にやったと思っている人はローンは全部返したのだから当然に同じように銀行で抹消してくれているだろうと思っている
以上のような人は非常に多いのです。
なので、
銀行(債権者は銀行とは限りませんが)から抹消登記のできる書類一式が送られてきてもそのままにしてしまうことが多いです。
きちんと案内文書を読みさえすれば、
かなり親切に抹消登記の案内が書かれているのですが。
残念なことです
ともかく、そのような具合で、実際には
弁済が終わっているのに、
実体のない抵当権が登記簿上に残っている
ということはよくあります
で、滅失登記はどうする?
しかしながら、
近所の調査士に聞いたら、
抵当権を抹消しないと滅失登記はできないと
言われたんですという人がいました
それに
きちんと抹消しておかないと
将来、競売 にかけられたり、
まずいことになったりするので、
念の為、抹消しておいたほうがいい。
とも言われたそうです。
弁済が何十年も前に済んで、かつ
解体も間近な建物の話をしています
言うまでもないですが、このような状態で
抹消登記をするのは可能だし、
その事自体に問題はありません。
そのように教科書どおりの対応をすることはある意味立派なことなのですが、経験がそれを不要と教えています。
教科書に書いてあることをそのままやるのはそれは、専門家とは言えないのでは?と思うものです
つまり、やらなくてもすむ登記をそうと知りながら敢えてやることは専門職として恥ずかしいことです。
どうしてもと言うのなら止めませんけど、決しておすすめはしません。
一応、プロなので。
たとえば、
1回にまとめることの可能な登記を
何回分かにわけて申請するとか。
これは、
報酬のために敢えて分ける司法書士も
存在するようですが、それよりも
まとめて1件でできるという知識がない、
同業もいます。
また、
分けた方がわかりやすい、ということから
こちらを選択する同業もいるかもしれません
報酬のために分割するのは論外としても
経験不足から知らずにやってしまうことは
まあ、仕方ないかもしれないです。
わかりやすいことは確かかも知れないので
このあたりは、その司法書士の好みです。
私は
必要のない登記はしないほうがスマートでかっこいい、と思っている派なので、
一回でまとめてできる登記は一回でしますが
そのへんは価値観はいろいろでしょう。
結果として
お客様からの依頼どおりに登記がなされれば
それでよいわけです。それだけでよいとも言う
ですが、
そのあたりがプロフェッショナルとしての腕の見せどころです。
いかにスマートに、いかにシンプルに、登記を仕上げるか。
で、苦心惨憺してやってみても、
同業者が見れば一目瞭然ですが、傍目には
どこがどう違うのかはわからない!
(最終的な結果は同じなので)
なんというか、締めに一句。
矜持と書いて
ひとりよがり・じこまんぞくと
ルビを振り
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。