農地に仮登記をつける

農地は、原則として
農業委員会の許可がないと
所有権の移転はできません

が、

どうしても欲しい
せめて確約だけでも欲しい

というような時には

仮登記をつけるということになります。
抵当権または抵当権仮登記をつけることもあります

注;農地に抵当権をつけることは
問題ありません。(許可不要)

 

ともかくも何らかの形で
買受人の権利を登記簿上
明示したいわけです

で、よく行われるのが、
農地の売買に伴って仮登記をつけることです

この仮登記は、所有権移転請求権仮登記
というものです

仮登記にはいろいろ種類がありますが
これが一番汎用性があります

登記の目的 所有権移転請求権仮登記
原  因  令和7年3月5日売買予約
権 利 者 住  所
      氏  名

というような感じで登記がされます

 

この仮登記での売買予約を選択する際に
絶対に忘れてはならないことがあります

 

決済の際には、必ず説明していますが
ほとんど注意を払ってもらえません。
なにしろ、契約書を書いたり、諸費用やら
なにやらのお金のやりとりをしたり
登記用の書類を書かされたり
他にも大事なことがあるので。

でも、だからといって
以下のことを知らないで農地を購入するのは
危険すぎます

 

その1

所有権は移りません

それが何より証拠には
翌年の固定資産税の請求先は依然として
売主のままです

仮登記でしかないのにも関わらず
売却が済んだとお思いの買主様や
売主様は多いですが

固定資産税納付書が翌年になっても
新名義人あてに来ないと

これはどうしたことか、と
困惑したり動揺なさる方がおいでです

しょうがないですね。

所有者は変わっていないので。

 

その2

請求権という権利を行使しないでいると
その権利は5年で時効消滅します

以前は
所有権移転請求権は10年で時効消滅しましたが
数年前(2000年4月1日から)法律が変わり
今は5年で時効消滅します。


それ以前にされた契約による請求権は、
時効期間は従前のままです(10年)

たとえば
登記の日付が2000年4月4日であっても

その売買予約の契約日が2000年3月31日
であれば

時効消滅期間は10年です

 

その5年(または10年)の間に
予約完結権を行使して、
仮登記を本登記する登記を
行わなくてはなりません
そうしないとせっかくの権利が
時効消滅してしまいます

そうは言っても
登記が職権で抹消されることはありません

時効消滅といえども
当事者双方の申請か、判決が必要です

 

その3

仮登記は順位保全効果だけ。

所有権移転請求権仮登記は、この場合は
売買予約に過ぎませんが、後日、これが
本登記にされたときに
その仮登記の順位がそのまま維持されます

登記の順位は、早い方が優先されます

仮登記は、実体的または手続き的要件が
完備しない場合に
将来の(必要な条件が備わったときにする)
本登記、のためにされるものです

つまりは、本登記の順位を
確保しておくためにする登記です。

 

なので
仮登記は順位保全効果とは言うものの
それだけなので、
本登記にしてはじめてその効果は
生きてくる登記です。

どんなに最優先の順位が保全されていても
仮登記である限りは、その保全はほとんど
意味がありません。
だから5年で簡単に時効消滅します

 

その4

仮登記は待っていても本登記にはならない。

 

仮登記から数年経過してから当方宛に
連絡をいただくことがあります。

いつになったら本登記になるのですか
というような。。。。

決済の時にあんなに言ったのに!
と思いますが

でもこれだけは言いたい。

それを承知で買ったのでは?

あの値段で買えたのは、
仮登記だったからなのでは?

仮登記が自動的に本登記になることは
ありません

ましてや、登記所の職権で
たとえば5年たったからとか
10年経過したからという理由で
本登記がなされることは
絶対にありません。