行方不明者がいるときの遺産分割

行方不明の人がいるときの
遺産分割協議のやりかた

 

遺産分割協議をして、被相続人の財産を
きちんと誰かに名義を変えてさっぱりしたい
というときに、行方不明の人がいると、
この協議ができないことになります。
相続人全員が揃わないので。

 

遺産分割協議 亡くなった人の財産を相続人の間でどのように分けるか分けないのか相談すること。
相談の結果を遺産分割協議書という形で文書に残し、証明のため全員で署名捺印をし印鑑証明書を添付する
法定相続人全員ですることが必要です

 

さて、どうするか。

行方不明とは

 

行方不明と一言で言っても、
いろいろなレベルがあります

 

レベルA
単純に、連絡先がわからない

これだけならば、
戸籍の附票をとりよせることで、
現住所を知ることができます。そうすれば
すくなくとも郵便で連絡をとることができるかもしれません。

ですが、

・もしも本人が現住所を届け出てなければ
これ以上の探索はムリです

また、

・外国へ住所を移した場合も、この方法では
探すことができません。

戸籍の附票には、届け出た住所が記載
されますが、外国へ引っ越しした場合は
そのような具合にはいきません。
「米国へ年月日住所移転」のように記載されるだけで、米国のどこなのか、全くわかりません。

 

レベルB
いわゆる行方不明

ある時から、フラッと出かけたまま
帰ってこない。風の便りも何もない

このような時も、まずは戸籍の附票を
取り寄せますが、こうしたときは、
ほとんど現住所は届け出ていないです
ずっと昔の住所が記載されたままか
または、その届出の住所が職権消除という
記載のもと、役所の権限で削除されて
いることが多いです。

職権消除されて5年経過するとその附票は
保存年限経過ということで、
廃棄処分されてしまいます。ですが、
2019年からこの扱いは順次変更されて
いるようで保存年限は150年とされました

しかし数年前に廃棄されてしまっていたら
もう、回復はほとんど無理

あとは、
知ってる限りの知人友人に聞いてみるとか
もう10年以上ウワサを聞いたこともない
などと言われたりします。この場合、
これ以上探すためにできることはほとんどありません

 

レベルC
おそらく死亡している

失踪宣告をすべきレベルです

 

 

どうしたら、
探すことができるでしょうか。

 

探偵事務所に依頼をするのはどうでしょう?

自分でやったことがないことをおすすめすることは本意ではありませんが、
これだけの数の探偵事務所が存在してることを考えると、こうしたときに頼りになるのではないでしょうか。わかりませんが。

たぶん、電気ガス水道の利用状況とか、
以前なら電話の移転などから探索するのではと言われていましたが、どのように調査をすすめるのかは不明です

 

不在者財産管理人

 

レベルAであっても、レベルBであっても
(レベルCであっても)、このような時に
民法25条の不在者財産管理人の制度が
使えます

割と、簡単に利用できるので、
遺産分割協議だけが目的であれば、
おすすめです。

 

こんなときに。

 

たとえば、お父さんが亡くなって、
子どものうち一人が行方不明であった場合

遺産分割協議をするためには、
この子どもの代わりに
協議に参加してもらう人を
裁判所の手続きによって選んでもらいます

そうすれば、この代理人が
子どもに代わって協議書に署名捺印し
印鑑証明書を添付することで、
相続手続きをすすめることが可能となります

この行方のわからない人不在者ふざいしゃ
の代わりに財産を管理する人を
不在者財産管理人といいます

 


民法25条不在者の財産の管理

従来の住所または居所を去った者(不在者)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。


 

このように。

 

最後の住所地の家庭裁判所に申し立て、
基本、
家族か親戚、知人の中から適当な人を
候補者として申し立てます。

問題なければ、その人を
不在者財産管理人として選任するとの審判が
なされます

ですが、

財産がたくさんある不在者の管理人は、
少々、面倒です。
財産目録を作成したり、裁判所に対して
財産管理報告をすることもあるため、
全然腕に覚えのない人
普段、字を書かない人。事務仕事が苦痛な人
は、ちょっと苦しいかもです。

が、

財産らしい財産はほとんどなく、
やりたいのは、遺産分割協議だけ、
というときは簡単に済みます。

法定相続人として相続分が20分の1
とかであるなどというときは、簡単です

 

ですが、

 

遺産分割協議をするためには、
不在者財産管理人として選ばれただけでは
足りません。

遺産分割協議をするために

 

このあと、
権限外行為の許可の審判
受ける必要があります

 

民法28条管理人の権限

管理人は第103条に規定する権限(保存・利用・改良行為)を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。

 

 

分割協議の内容

 

遺産分割協議はどのような内容でも
よいのか?といったら、そうではありません

たとえば、

不在者Fは何も相続せず全てを相続人Aが
相続するというような内容だと、
裁判所の許可が得られません(たぶん)

 

遺産分割協議をする際に、
不在者財産管理人は不在者の不利益に
なるようなことはできないためです

よって、

不在者Fが取得する割合が法定相続分より
少ない持分にする、という協議をしても
裁判所の許可を得られないということになります。

 

また、帰来の見込みが薄い場合等や、
相続財産がそれほど多額ではない場合は、

帰来時弁済型(きらいじべんさいがた)
というような分割協議をすることが多いようです

相続財産はAが全て取得する。Aは、不在者Fが将来帰来した時は法定相続分金25687円を支払うものとする このような感じです

 

これだと、この遺産分割協議の他に財産がなければ、管理人のしごとは終了します。

 

もしも、不在者Fは那須の別荘を相続する、などとしてしまうと、不在者が帰来するまで、管理人がその相続財産(那須の別荘)を管理しておく必要が生じるため、将来的にどう考えても非常に面倒なことになりそうです。

 

失踪宣告をすべきか

 

生死不明状態が長い場合は、失踪宣告の申立をすることもできます。最後に確認というか連絡がとれた時点から7年以上連絡がつかず、生死不明のときに申立ができます(普通失踪の場合)

しかし、こちらは公告期間などを入れると
半年位かかるため、不在者の管理人の方が
早く済みます。なので、
遺産分割協議をお急ぎなのであれば
不在者の制度の方がよいかなと思います

順調にいけば、1ヶ月位で
裁判所の規模というか込み具合によります
権限外行為の許可まで終了できます

 

実体に併せて失踪宣告が必要という場合は
(死亡の蓋然性が高いということ)
別途、手続きを進めたほうが安全です。
(失踪宣告の審判が降りない可能性もある)

 

最後に

 

行方不明の人がいるので、
遺産分割協議ができない、と
がっかりしている方がおいでですが、
この不在者財産管理人の制度を使えば
大丈夫です。

 

家庭裁判所の窓口で、その旨を
相談してみましょう。

申立書の書き方、
必要書類の集め方、など、
親切に教えてもらえます。

 

 

それさえも何だかな~と面倒な方は、

当方まで、どうぞ。