相続登記のイロハ 番外その2

相続登記のイロハ

番外編その2

とりあえずハンコを押しておく
(押せばいいんでしょ)
という、人任せの姿勢が
もたらす恐ろしさを

肝に銘じておきましょう

後悔先に立たず、と言うように
あとになってから
あの時こうすればよかったなどと
いくら嘆いても過去へは戻れません

遺産分割協議の際に気を付けたいことは
つまりはこれです↓(3つあります)

いったんハンコを押したら、もう
あとでひっくり返すことはできません

 

出来上がった協議書の内容を
落ち着いてきちんと読みましょう

いったん
署名捺印してしまった遺産分割協議書は
全員の署名捺印があれば
それで成立してしまいます

あとになってから
それは読んだ覚えがない
そんなつもりはなかった

主張しても通りません

その文言で成立してしまったわけですから

 

ですが

全員が作り直しに同意すれば
遺産分割協議のやり直しは可能です 

ただ、贈与税とかの問題が
勃発することがあるので

よほどのことがなければやらない方が
無難です 

どうしても再度
遺産分割協議をする必要があるのならば
まず税理士に相談することをお勧めします

 

あとでいいようにするからと言われても
口約束では証拠がありません

 

「財産全ては長男が相続する」
書かれている遺産分割協議書に
署名を求められたとします

納得できずに「あら私の分は?」
と思ったとしたら

そしてその時

仮に、長男から
「あとで必ず払うから信用して。」
と言われたとしても

それは文書には残っていない、いわば
口約束(くちやくそく)に過ぎません

協議書には、全ては長男が相続する
書かれているわけです

口約束(くちやくそく)であったとしても
長男が自ら支払ってくれる場合は
問題はありません

その約束は当事者間では有効です

 

ですが

2年たっても3年たっても払ってもらえない
一体いつ?
と思ったときは

もう請求してもどうにもならない可能性が
高いです

 

また実際にも

「協議書は形だけで、あとで必ず
○○円を払うから。ここはとりあえず
ハンコを押して」
などと

年上の兄弟に言われて疑うこともなく
署名捺印してしまった、というハナシは
よく聞くところです

ですが

署名捺印して印鑑証明書を渡してしまったら
それは、もう
協議に同意したということです

あのときはいくらか貰える話があったから
それを信じてハンコを押した。それなのに
まだ払ってもらってないけどどうしたら?

などと、あとで言っても通りません

 

また

「兄弟を信用して書類をよく見ないで
ハンコを押したのだけど、こんな内容だとは
思わなかった」
とか

聞かされることがありますが
実際にそうだとしても

自分の署名捺印があれば、それは当然
中身を確認して納得して同意した

という意味にしかなりません

 

「とりあえず押しといて!」
言われたから押したのが
真実であったとしても、

通常は
何も見ないで押す人はいません
(いますか?)

 

少なくとも裁判になったら
それは通りません

お気の毒ですが、というか当たり前ですが

全員で署名捺印した協議書があれば
そこに書かれたことは全員が協議し
納得している

ということにしかならないのです

 

ただし、
脅迫とか強要とか犯罪行為があれば
別です

刃物を突き付けられて
書くように無理強いされた、とか
「子供の命が惜しければそこに書け」と
脅迫されて
意にそまない署名をさせられた、など。

その場合は速やかに
それなりの手続きを取りましょう

すぐに警察に相談してください
こうした刑法上の犯罪は警察の管轄です

 

 

代償金を払うという協議が成立したのに
いつまでたっても実際に払ってもらえない
ことがあります

 

 

その協議書にたとえば

長男がすべてを相続する。その代償として
他の兄弟に金
250万円ずつ支払うなどと
書かれていれば

他の兄弟は長男から
250万ずつ支払ってもらう権利が
ありますが、そんなときでも

「相続から何年もたっているのに
一向に支払ってもらえない。
これはどこに頼めばよいのか」

というご相談もあります

このようなときに
裁判所に頼んでもだめです
(訴えるのはアリです)

その代償金を払うと明記されている
相続人本人に頼むしかありません。

 

このようなハナシは割とあるので

おやおかしいのでは?と思ったらすぐに
相続人に話をするのが良いです。

話をしてもはぐらかされたり
「今ちょっと手元不如意だから半年待って
必ず払うから」
などと言われても
そうこうしている間に
どちらかが死んでしまわないとも
限りません。

こちらが年をとってきてるからだと思いますが本当にあっという間に老年になるとつい先日まで元気だった周りの人がどんどん亡くなっていくものなのです

 

きちんと署名押印された分割協議書が
あるのであれば

裁判しても負けることはおそらくない
とは思います

 

ですが、支払い能力があるかどうかは
また別の問題です

相続した時は裕福だったのに
放蕩三昧の結果、数年のうちに
素寒貧になった、ということだったら

裁判に勝ったところで
無い袖をふってもらうことは
できないでしょう