相続放棄の勘違い

相続放棄では
わりとよく勘違いされていることがあって

その代表的なものは
×債務や不要な所だけを放棄ができる

というものです

 

ですがそのような遺産分割協議は有効です
共同相続人間で、好きなように
分けることができます

 

田舎ではよくあることですが

遺産は、農地がいくつか、とあとは
自宅だけという感じ。

遺された自宅は誰も済む予定もないし
いっそ手頃な値段で売却して、それを
相続人みんなで分けよう。

農地は、これは困った。どうしよう?
今の時代、買ってくれる人もいないだろうし
農業委員会の許可がいるのも面倒。
誰も農業をするつもりはないわけだし。
宝の持ち腐れになるよりは。。。

よし。農地はみんなで、放棄してしまおう

というように、相続人間でめでたく
相談がまとまったとします

 

ですが

今しばらくお待ちください

 

好きなところだけ各自が相続して
いらない所を全員が放棄する
というような
都合のよい放棄や相続はできません。

 

これとは異なり

遺産分割協議において
誰かがすべてを放棄して
誰かが
いろいろ相続する、というような
分け方は有効です

 

裁判所でするいわゆる相続放棄は、
債権・債務のすべてについて、最初から
相続人ではなくなるということです

 

なので、放棄をしてしまったら
既に相続人ではないので
自宅を相続することはできません

自宅を相続してしまったら
単純承認したということなので
もう相続放棄はできません

農地を相続放棄することはできますが
他の財産も債務も
全て放棄することになります

なので、農地だけを
相続放棄することはできません

一方で


遺産分割協議において
農地だけ分割対象外とする協議をすることは
可能です 

これは
とりあえず手を付けずにおく、という
最強(であろう)技です

 

相続放棄は、そもそも
いいとこどりができるように
という制度ではありません

被相続人の遺した借財で
相続人が苦しまなくて済むように
設計された制度ではないかと思います

おそらく、相続放棄の制度がない時代は
親の借金または親の連帯保証債務で

自分の人生をめちゃめちゃにされた人が
たくさんいたのではないでしょうか


ちなみに、旧民法時代は家督相続人は
相続放棄をすることが
認められていませんでした

(法定家督相続人の放棄の制限)
旧民法第1020条
法定家督相続人は放棄を為すことを得ず。
ただし、第984条に掲げたる者
(直系尊属による家督相続)はこの限りに
在らず
(原文はカタカナ)


 

現在は、相続放棄申述は
かなりゆるい基準で受理されているようです

3か月経過後の申述も
きちんとした上申書を添付すれば
ほぼ認められるし

単純承認事由についても、自己申告であって
裁判所の調査官が調べに来る
というような運用はされていません

実際に裁判所の放棄受理率は
100パーセントに近いものがあるかな
と思っています(当社調べ)

これはやはり被相続人の借財によって
あとに残される相続人(たち)が
苦しまなくてすむように設計されている
有難い制度なのだと思います