相続手続きのタイムリミットは?

相続手続きのタイムリミットは?

 

Q. 遺産分割協議とか、遺産の相続手続きは、いつまでにしなければならないものなのでしょうか?

A. 手続自体に期限はありません。

ですが、

 

次のことにご注意ください。

 

こちらは、期限があります。それを超えると、延滞税がかかったり、やるつもりだったことができなくなったり、します。

 

  1. 相続税の申告期限は亡くなった後10カ月です。
  2. 相続の放棄または限定承認をするなら、3カ月以内です。
  3. 事業収入があった方なら、所得税の準確定申告を、4カ月以内にします。

それぞれについて、もう少し細かくご説明しましょう。

 

相続税の申告納付

 

1 の相続税の申告義務のある人は、非課税枠を超えて相続財産があった人だけです。

例えば茂原市内に普通の住宅を所有して、預貯金が少々、相続人は妻と子供2人という場合、(この場合、非課税枠は4800万円あります)相続税がたぶんかかりません。

2015年1月1日以前に亡くなったとしたら、非課税枠は、8000万円なので、お間違いなきように。

 

しかし、3カ月、とか、10か月とか、本当にあっという間に過ぎてしまいます。

とくに相続財産の多い方は有能な税理士さんがついていないと、きびしいのではないか、と思います。

まったくの素人の方が「親父の遺した財産のことだから」といって、期間内に申告納税をした例を身近で1件だけ知っていますが、心してかからないと「相続税滞納」という事態になりかねません。延滞利息は高いです。

 

また、共同相続人間で、話し合いがまとまらないことも時にはあります。

 

このようなときは、本当に時間がなければ未分割として申告しておくこともできるようなので、税理士さんにご相談することをおすすめします。

 

また、嫁に出た娘とか、養子に出た息子は、寸前まで話し合いの外に置かれることがあります。

 

時間がないからすぐにハンコを押すように求められたり、
(財産分けは申告済んだらゆっくりやるからとりあえず時間ぎりぎりなのでハンコだけくれ、など)
状況がわからないので、とりあえずハンコを押してしまったりしますが、そのあとで、ハナシが違う、となることもないとは言えません。

 

本当に時間がなければ上記のような対応をしてもらえるはずなので、お心当たりの方は税理士さんにご相談なさった方がよいかもしれません。

 

相続の放棄

 

2 財産より債務のほうが多くて債務を放棄したいときや、ともかく財産はいらないので、放棄したいとき。
(債務だけを放棄することはできません。)

相続人としての地位そのものを放棄することになります。

なので、この手続をしてしまうと、亡くなった時にさかのぼって相続人ではなかったことになります。

プラスの財産も、マイナスの財産も、すべてを放棄するという意味です。

 

ちなみに、遡って相続人ではなかったことにはなりますが、親子関係を切断するような意味合いではありません。

戸籍に何かを書かれたり(例えば、年月日相続放棄、という感じの記載)ということは一切ありません。

 

相続放棄をするときは、家庭裁判所への申述が必要です。

 

その際に戸籍や住民票などが必要になるので、ぎりぎりの3ヶ月間際になって駆け込むのは、やめましょう。ですが、特別の事情があれば、裁判所にたのんで、この期間の延長してもらうことはできます。

延長を認めるかどうかは、裁判官の裁量なので、一概にこういうケースなら大丈夫、とは言えませんが、普通に考えて、これなら仕方ないのでは?と思えるような事情があるときは、だいたいOKだと思います。長期の入院、海外出張があったなど。

 

以上の税金関係と、もしも放棄をする必要があるのであれば放棄の申述、これらだけは、心を鬼にしてやってしまいましょう。

 

これらさえ済んでいれば、あとは、原則として、できる時にやっても大丈夫だと思います。

 

さて、ゆっくりと遺産分割をしよう

 

遺産を分けることについては、1年2年とそのままにしている人は多いです。

期限がないからといっても、できるのであれば、必要以上に長引かせずさくっと行いたいものです。ですが、やはり、なかなか手を付ける気持ちになれない、という方は多いのでしょう。

 

当職は、農地が遺産の大半を占める、という田舎の出身なので、なかなか相続の話がまとまらない、という話をよく聞きます。

 

農家だったのに、誰も農業を継がない、すると、農地は、誰も引き取る人がなくなってしまったりするのですね。

亡くなった人も、さらに、ご先祖様たちも、まさか、このような時代が来るとは夢にも思わなかったことでしょうが、仕方ありません。
時代はシフトしていきます。

 

また、遺産を分けてしまうと、亡くなった人と縁がきれてしまうような気がして、寂しいから、まだそんな気持ちになれない、という方もおいでですね。

 

その気持はよくわかります。ある意味、当たり前だと思います。

 

でも、故人とのつながりは、残された財産ではないですよね。

その血を継ぐ子どもたちだったり、心の中に漂っている気配のようなもの、であるのかもしれません。共に過ごした時間の堆積を、ご自分のまわりに感じることがないでしょうか。

 

まとめとして

 

というような次第で、原則として遺産分割協議をいつまでに、という期限はありません。

 

しかしながら、相続税が発生しないときでも、裁判所に放棄をしなくても、いずれにしても相続が開始し、気持ちの整理がついたら、(つかなくても)すみやかに遺産分割協議をなさることをおすすめします。

 

実務的な話になりますが、時間の経過とともに、ハンコはもらいにくくなることが多いです。

 

何十年も放置している間に、お付き合いのある伯父さんや叔母さんが次々に亡くなっていきます。
気がつくと従兄弟たちも他界して、結局一度もあったことのない(名前も知らない)従兄弟の子供たちからハンコをもらわなければ、となったら大変です。そうしないと、いざというときに、自分が住んでる土地の名義を変えることができない、という事態になりかねないのです。

 

相続権者が何十人にもなってしまい、その中には行方不明の人がいたり、絶対にハンコは押さない、と主張する人がいたり、などなど。。。

小さな、1坪(3・3平方メートル)の土地を相続するためであっても、40人相続権者がいたとしたら、まさに40人全員の実印及び印鑑証明書が必要になるのです。

このような事態に陥る前に、分割協議はお早めになさいますように。

また、それに伴う相続登記もお早めになさることをおすすめします。