相続人のいない土地はどうなるのか

相続人のいない土地はどうなるのか

 

いろいろな事情で、
持ち主の死亡後、
所有者がいなくなってしまう不動産があります

そもそも身寄りのない人だったとか

相続人全員が相続放棄してしまったとか

で、結局、
引き取り手がいなくなってしまった。。。

 

登記簿を確認するのは?

 

引き取り手のいない状態だと、
登記簿上の記載は、亡くなった人のままです

なので、

登記簿を確認しただけでは、
それが身近な人ならばともかく、
現在の状況はわかりません

所有者がいない、
相続する人がいない、からといって
その旨がダイレクトに公示されるわけではありません

 

また、

登記簿上の名義人が死亡したからといって
自動的に「亡」の字がつけられたり、
ということはありません

 

登記簿を確認してわかるのは、
最後に登記された所有権名義人が誰なのか
だけです。

 

1 名義人が生きているのか、は書かれていません

2 死亡しているとしたら、相続する人が決まっているのかどうなのかも書かれていません

分割協議がされていても、または、法定相続人が一人だけだったりなどして誰が相続するのかは決まっていても、登記が未了という状況のこともあります

3 全員が相続放棄をした可能性もあります それについても、書かれていません

 

というわけで、水面下でどのような作業がなされているのかなされていないのか、については、登記簿の記載だけではわかりません

 

 

その土地を買いたい!

たとえば、相続人が誰もいなく、
ずうっと荒れたままの隣地がある。
ここをぜひ購入したいと思った時。

こうした場合どうしたらこの土地が買えるのかというお問い合わせをいただくことがあります。

このような時に登記簿を確認すると
亡くなった方のままの記載なわけです。

 

さて、どうしましょうか。

 

一挙に結論を申せば、
特に亡くなってから長期間、登記簿に何も
変更等の登記がされていないのであれば

おそらくどうにもなりません

 

そのようなときには
所有者のいない財産は国庫に帰属
(国のものになる)と
カンタンに思っていましたが。

なので、この場合は国のものになったあとで
国から買い受ければいいのかとか。
そのような段取りを想像してしまいますが、

どうやら、そういうわけにはいかないようです

 

国のものになる?不動産

国庫に帰属。。。都市伝説のように
このフレーズはよく聞きますし、実際、
民法の条文にあります。

 

民法第959条
前条の規定(特別縁故者に対する相続財産の分与)により処分されなかった相続財産は国庫に帰属する

こういうのもあります

民法239条(無主物の帰属)
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する

 

ところが、

実は

勝手に国のものになるということはないのです。

 

こちら側でしなければならない面倒な
手続きがあります

 

まず、相続財産管理人を選任する

 

民法951条(相続財産法人の成立)
相続人のあることが明らかでないときは相続財産は、法人とする


ちなみに、
この名義変更の登記上の記載はこんな感じ

片山りえ造が死亡したとして、
相続財産管理人が選任され、
その旨の所有権登記名義人氏名変更の登記を経ると

旧表示 片山りえ造
新表示 亡片山りえ造相続財産 

のようになります


 

民法952条(相続財産の管理人の選任)
前条(相続財産法人の成立)の場合には家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって相続財産の管理人を選任しなければならない

 

債権者からの申立があれば、
相続財産管理人を選任して、その人
(通常弁護士が就任することが多いです)
から、買うことができます

注意;家庭裁判所の手続きです

あくまで、
売買契約を交わすということなので
それぞれの条件によってうまくいくこともそうでないこともありますが。

しかしこれが、相続人のいない土地を買うときの王道的な流れではあります

 

その相続財産管理人は、
相続財産法人の代理人的な立場なので
相続財産を処分してこの場合は、
隣の人に売却をして、その金員から
債権額などを債権者に対して弁済することになります

相続財産管理人は
勝手に財産を処分できるわけではなく
処分するには家庭裁判所の許可が必要です

いくらで、誰に売却予定かを明らかにして
許可を受けます

 

なお、相続財産管理人は、
利害関係人、たとえば債権者の申立で
選任されますが、

その土地を買いたいと思っている人。
それは利害関係人ではありません

 

 

その手続のはてに売れ残った不動産は
どうなるのでしょう?

売却されなかった不動産は?

 

不動産はやたらに国有にはなりません。

不動産は維持管理費がかかるため、売却することが困難な場合は国のマイナス財産となるからです。そもそも寄付をしようとしても受け付けてもらえないらしいです

相続税の物納も難しいという話も聞きます(すぐに売却可能か、利用価値の高いところのみらしい)

 

 

たとえば、
相続財産管理人が選任されたとして債権者に土地を売却してその土地は代物弁済ということで債権者の名義にできたとしても、その他の土地は依然として死亡した被相続人の名義のままです。または、亡所有者の相続財産法人名義です

 

で、購入する人がいない土地は本来であれば
国庫に帰属するので、
その相続財産管理人は残余財産を国庫に
引き継ぐ義務があります。
つまり国庫(財務省)への帰属の登記を
されることになるのでしょうが、
寡聞にして、そのような登記簿をみたことがありません。

 

民法第959条
前条の規定(特別縁故者に対する相続財産の分与)により処分されなかった相続財産は国庫に帰属する

 

このほど、「かつては不動産の国庫帰属が難しいという実態があったが、財務局あての事務連絡によって、相続財産は適切な清算手続きの終了後は、不動産についても国庫に帰属することが確認された。」との文書を発見しました。「現在は、相続人不存在の相続財産については、相続財産管理人において清算を終了し、民法所定の手続きを経ていれば、民法第959条の規定により国庫帰属となる」とのことなのですが。
平成29年6月27日事務連絡文書理財局発出

 

実務上、一体どこまで
このような運用がされているのかは、
疑問です

 

相続財産管理人を選任してしまえばなんとかなるのでは?、と安易に考えるむきもありますが、

そもそも選任申立ができるのは、利害関係人か検察官と決められています

 

 

つまり、当該物件の隣地の人が気軽に買えるというシステムにはなっていないようです。

 

 

このような判例もあります

所有者不明の土地の所有権確認

所有者不明の土地であっても、それが民有地である以上、同土地を時効取得したとして国に対して提起された確認の訴えは、訴えの利益を欠き不適法である
(最判平23・6・3)

 

教訓としては、ほしい土地があったら、
所有者が元気なうちに買っておけ、ということですね。