登記の住所を変えるとは?

 

 

引越しすると登記の住所は自動的に変わりますよね?

と聞かれることがあります。このネットワークシステムの時代、そんなの当たり前じゃないかとお思いのあなた。

ところが、そういう訳ではないのですね。

なんと、絶対に変わりません!

大事なことなので、何回も言いたいです。
絶対に変わりません。
そもそも、現在の日本で、登記が自動的にされることはありません。

町が市になるとか、隣の市と合併して新しい市の名前になるとか、そのようなときは職権で(登記所が、勝手にというか、所有者の意向に関係なくやってくれる)、
登記簿の表題部(不動産の住所みたいなもの。人の住所とは違います)が変更されます。

あとは、不動産登記法という法律で、職権で抹消できる、と定められているいくつかの登記は、(こちら側の感覚としては)、自動的にやってもらえることがあります。

===ただし、2020年以降に導入が検討されている「登記簿と戸籍等との連携システム」が可動すれば、かなり状況は代わってきます。おそらく、住民登録の変更をすれば、それに併せて自動的に登記簿の住所も変更してもらえるのかもしれません。(詳細未定ですが期待されています)===

しかし、現在のところ、所有者として登記されているお客様の住所は、
絶対に、自動的には、変わりません。

引越ししたんですけど登記の住所も変えたほうがいいですか、

というお電話を時々いただきます。
これまでは、
「いつでもできるし、それなりの費用もかかるので、あとでも大丈夫ですよ。」と
お伝えしておりましたが、
近頃180度、考えが変わりました。

ご自分の権利が大事だと思うのであれば、
絶対に、
すぐ、
変更登記をしましょう。特に引越ししたら、5年以内に、ぜひ!

引越し後5年以上たっていますが、それが何か?

実は、引越しをして5年経過したら、住民票は役所の記録から
消されてしまいます。

住所の変更登記をする際には、住民票(または、住民票の除票など)によって、
登記のときの住所と現在の住所を証明します。
何回か引越していれば、その間のつながりを書面上証明しなければなりません。

そのため、手続きには、それらが必要になるのですが、
原則、5年経過をもって、廃棄処分にされるようです。

役所によっては10年あるいは20年くらい廃棄せずに記録を残したままにしているところもありますが、原則、5年。です。
あっと言う間ですね、5年というのは。

住所変更登記を怠ったデメリットは?

最大のデメリットかなと個人的に思うのは

その登記がすぐにできるわけではない
予想外に時間が
かかってしまうこともある

ということです。

たとえば、30年近く前に買った土地をご売却することになった時に、そのあと、
引越しをしてるという方は、まず最初に、住所の変更登記を経なければなりません。

土地の売買登記と同時に登記申請をすることはもちろんできますが、
そのためには住所の変更登記に必要な書類が一式全部そろっている必要があります。

住所変更登記に必要な書類とは?

一般的には、「登記をしたときに住んでいた住所から現在の住所まで」の
変遷がわかるような
「住民票除票」や、「戸籍の附票」
が必要です。

が、30年も経っていると、すでに保存年限の経過・廃棄ということで、
役所では発行してくれないことが多いです。

なので、登記簿上の30年前の住所地にはお客様の住所も本籍もありません、という、「不在住証明書」「不在籍証明書」という書類をとりよせて、
(他にもいろいろと必要な書類はありますが)
変更登記に持っていくわけです。

ところが、ところが、です。

(ここから、恥ずかしくも申し訳ない本当にあった話です)

売買の登記の前提として、住所変更登記が必要になりました。
(これだけだとありふれた話で、この時点では特に問題がある感じではありません)

司法書士は、お客様に代わって住民票とか戸籍とかの取寄せをすることができます。
なので、登記上の住所地の町役場に郵送で(かなり遠くの島です)
不在住証明書と不在籍証明書を請求しました。

ところが、  なんと。 なんと。

ローカルルールに阻まれる

5年の保存年限どころか20年以上もたっているのに、
「記録がまだ役所にあるので、住民票除票しか出せません」という、扱いでありました。

(引越し回数1回なら、この住民票除票があればもうそれで充分なのですが、
この方は5回くらい転居してる方。なので、不在住不在籍証明書さえあれば、その方が非常に楽に早くできる)

それしか出せないということならば仕方ないので、それを発行してもらい、そこに記載された転出先でも同じことをします。(郵送です。遠い島なので)

同様に保存年限経過しているはずなのに、ここでも、不在住証明等は発行してもらえません。出してもらえるのは住民票除票です。
お客様に確認したところ、彼の地では数年おきに引っ越しをしていたとのこと。
おーローカルルール恐るべし!!!

不在住不在籍証明がどこでも発行してもらえると思っていたこちらに非があるのは
もちろんです。

もっと怖いことも、、、

余談ですが、このように住所の変更を怠って何年も経った土地は、
詐欺事件の対象になってしまうことがあります。
地面師の暗躍、などという新聞記事をご覧になったことがありますか

そもそも住所が繋がらない、本人でさえ、書類上その住所の変遷をたどったり、証明することができない、ということは、とても怖いことなのですが、

そればかりではなく、悪意ある人というか、誰かに勝手に所有者のふりをされて、
土地を勝手に売られてしまうこともある、ということです。(殆どの場合そのようなことは起こりませんが、可能性として。)
そんなふうに犯罪を誘発することもある、ということですね。

いまや、運転免許証でさえも、わりと簡単に偽造ができると聞きます。
権利証も偽造という話は枚挙に暇がありません。
(研修で偽造権利証を見せてもらうことがあります。見た目は本物そっくりです)
少なくとも、登記簿の住所の変更さえ済ませておけば、このような恐れは、かなり少なくなると思うのです。

ただ、住所の変更登記を適切に行なっているからといって、「土地が勝手に売られてしまう」ということが絶対ないとは、言い切れません。
いまや、何でもあり、の時代ですから。ご自分の権利は、自分の手で守りましょう。

住所の変更登記はお早めに。いえ、できるだけ速やかになさることを、おすすめします。


==なお、除かれた住民票等の保存年限は延長されることになりそうです。現状の5年から、なんと150年へ。しかし、法務省の研究会での提言のなかでされたことなので、実現までにはまだ時間がかかるかもしれません。待たれます。==