権利証?登記識別情報?

権利証とはそもそも何だったの?
登記識別情報?通知ってなに?

平成17年3月に、登記識別情報というものが法律上発明施行されて、すでに丸17年にもなるわけですが、
権利証という言葉の認知度はいまだに非常に高いです

このたった17年間という年月では、百年以上の歴史をもつ権利証という言葉に太刀打ちするのは難しいのでしょうね

そもそも登記識別情報という言葉は知らない人でも、ほとんどの人が、
権利証という言葉はご存じです

 

権利証とは

 

売買の登記に権利証が必要ですと説明して、
え?それは何?と聞かれたことはほとんどないです。

考えてみれば、これは奇妙なことです。
かなり専門的な用語ですから。

おまけに通常、人があまり目にしないものではないですか

まあ、目にしないだけで、
耳にすることは多かったと思われます

 

テレビで見た

 

権利証というものが存在することを私も子供のうちから知っていたような気がします

その昔は、テレビドラマで、
土地の権利証をだまし取られて云々というような話があったり、
漏れ聞く大人たちの会話の中に権利証がなんとか、という形で時々登場したり。

いろんな権利証

 

権利証は登記識別情報通知と異なり、いろいろな形状をしています

高額土地の権利証だからといって金箔の表紙がつけられているとは限りません。
立派なファイルに仰々しく入れられたものが
権利証とは限りません。

くれぐれもご注意ください。

さらに、表紙に登記済み権利証などと書かれているので、
余計に誤解を招きがちです

登記済証という紙の権利証時代が長かったため
当時の権利証素材は和紙だったり、
コピー用紙のようなものだったりしましたが

おそらくそのままだと愛想がないと思ったものか
成果物を綴じてさらに表紙がつけられていることがほとんどです。

登記を受けた人が不動産業者さんだと、
「場所をとるから(邪魔ということです)識別情報だけでいい」と言われることもあります

成果物(せいかぶつ)?

 

成果物というのは、登記においては、

権利証一式すなわち
登記済証(これが大事)
登記簿謄本
評価証明書
家屋証明書など

あまり厚くなると、物理的につらいため
登記簿謄本は別冊とされることもあり

というようなものです

まあ、本当は、権利証(登記済証)以外はなくてもよいようなものです

がそれを言ってしまうとあんまりなので、通常は、そこまでは言いませんが

その登記に際して使用した書類、登記の結果生成されたものなどを
依頼者の利便のためにまとめて提供しようとするものです

これらはその気になれば再取得はわりと容易な書類です

特に登記簿謄本は、登記所に行けば誰でもいつでも取得できます
(印紙代がかかります)

ただし日付をさかのぼって取得することはできません
閉鎖された登記簿以外は、常に最新の状態のものしか発行されません

 

 

登記識別情報にかわった

 

平成17年の新不動産登記法の施行によって
それまで権利証(登記済証)と言われていたものが、単なる電子データになったということは知識としてお持ちの方は多いと思います

データのままで受け渡しをするのは困難なので
通常は、その情報を登記識別情報通知というかたちで、紙に印字したものとして交付をうけます
データ部分はシールで見えないようになっています

しかし、それは、法改正以後の登記においては
権利証ではなく登記識別情報というデータが提供されることになったということに過ぎません。

それまでに存在した権利証(登記済証)が何らかの手続きを経て電子データ化されるということではありません

このあたり間違いやすいです

 

うちは、まだ変えてもらえない・・・

「うちはまだ古い権利証のままなのですが
一体いつ、その識別情報はもらえますか」
というようなお尋ねをいただいたこともあります

たとえば、過去の
紙の健康保険証(世帯ごとに発行される)が
いつの間にか、個人別に発行されるプラスチックカードに変わったようなイメージをお持ちなのだと思いますが

昔も今も、
権利証(登記済証・登記識別情報)は、
その登記(売買をうけた、贈与を受けた、相続をした等)の時に発行されるものです

その時にしか発行してもらえないものです

なので、たとえば、
平成15年に贈与をうけたときの権利証(登記済証)が平成17年の新法の施行をうけて新しく登記識別情報通知にしてもらえる、ということはありません。

 

結局、何だか面倒なのでは?

 

ちなみに、登記識別情報通知は、
登記の申請時にそれを発行しないように申し出ることができます
管理にご不安のある方は、登記前に司法書士に申し出てください

しかし、あとで、やっぱり欲しいとなっても
もう発行してもらうことはできません。

 

また、一度発行されてしまっても
効力を失わせる(失効)措置をとることも可能です
こちらも、やっぱり必要になった、
といっても、再発行はできません。

 

権利証は登記に必要です

 

登記に必要な書類はなんですか、と聞かれて

登記識別情報と言っても通じないことはいまだに多いです。

不動産業者さんは躊躇なく、
「しきべつ~」と言っていますが。

私はそんなように呼び捨てにすることはできないので、(なんか失礼な感じがする)登記識別情報と言いますが。
いずれにしても、お客様にお伝えする際は
識別情報ではなく、権利証と言い直す必要があります。

で、最初から権利証が必要ですと言ってみると、
「識別情報しかないですが、」と言われてしまうこともあります
(特に若い人はその傾向が強いです)

まあ言い方は、どうでもよいのです
不動産に関する権利を証するという意味合いにおいては、登記済証も登記識別情報通知もおなじものと考えて大丈夫です

 

登記済証・登記識別情報はあった方がよいです
制度上、それらの再取得・再発行は不可能ですから

そして
権利を譲ったり、担保を付けたりする際に必要となるものです

もちろん、なくても手続きは可能ですが
別途費用が発生することがあります

 

権利はどこにあるのか

 

しかしそもそも、権利証といいながらも、権利それ自体ではありません

権利を証明するのは法務局のコンピュータの中に格納された情報です

その記録に、
○○番地の土地の所有者は、どこの誰で、
〇〇銀行から3000万円 の融資を受けている、
ついでに利息は、年に3パーセントである、というようなことまで記録されています

これが、権利の証明部分であって、
権利証をもっているからといってその所持人が権利をもっているということではありません

そのように登記がされたからその人が権利者なのであって、
決して権利証がその権利それ自体ではないのです

まあ所持している人が所有者である蓋然性は高いですが。
それらしいだけで、そうでないかもしれないです。

 

つまり逆からいうと、
権利証(という紙)を紛失した場合に、
もうその人は権利を失ったことになるかというと、そうではないという単純なことです

昔のドラマではこのパターンがあまりにも多かったように覚えています
そうではないにしてもそのような認識を与えかねない描写が多かったですね
権利証(という紙)を奪い取った人が、新しい権利者(不動産の所有者)になるのかといったら、全くそのようなことはありません。

 

また、登記識別情報通知にしても、
ほとんどの場合は、登記識別情報というデータのままで管理していることはされてないと思います

ご本人がオンライン申請で権利を取得したときはそのような道を選ぶかもしれませんが、

通常、多くの場合は

司法書士が
不動産の権利移転や相続登記を申請する結果
登記識別情報は紙におとした登記識別情報通知(青い銀灰色のシールでふたがされています)という目に見える形にして、
さらには、表紙をつけて
そのタイトルを(不動産)登記権利情報として
お客様にお渡しすることが多いようです

 

 

識別情報のシールをはがしてみた!

 

ちなみに、ときどき相談のお電話をいただきますが、

識別情報のシールをはがしてしまったのだがこれはもう無効なのか
といったものです

登記をする予定がないのであれば、
全然問題ないです。
はがして中を確認しようが、加工しようが大丈夫です

 

あした、売買の決済です

 

ですが、
これから所有権の移転(売買など)をするのであれば、手続きをする司法書士に確認することをお勧めします

確かにシールをはがしただけで無効になるものではありません。

が、すでに情報が
露出というか流出してしまったということなので
これから残金の決済をするという司法書士にとっては、寸前にどこかに売却されてしまっているのではないかという疑いをもたざるを得ないことになります

このあたりは、司法書士の職業病とでもいうべき部分で、まあ、そのようなものだとご承知ください。
決して、その人を疑っているわけではありません。
単純に取引の安全のために心を砕いているだけにすぎません。

 

シールさえあれば絶対に大丈夫?

また、

無傷の(シールが貼付されたままの)登記識別情報通知があったからといって、これがまた大丈夫とは言いきれないこともあるということはご理解ください

 

1 すでに売却されているかもしれない
(識別情報がなくても登記は可能です)

 

2 すでに失効手続きがされているかもしれない
(識別情報の失効手続きには、識別情報通知は不要なので、無傷のまま手元に残ってしまいます)

失効していると売買に際して通知書がそこにあったとしてもシステム上、その登記識別情報を提供することができません。
つまり識別情報があったとしても登記には使えません

いずれにしても、司法書士であれば、
そのあたりを確認する手段はあるので、

ご心配の方は早めに司法書士までご相談なさることをお勧めします

 

いきなり告白されても

 

売買の決済の現場でそのようなご相談をされても、現場でできることは限られており、
最悪の場合、その日の決済は中止、という事態になることさえあります。

所有権に全く問題がないのだとしても司法書士がそのような確信を持つことができない場合は、
決済を中止するという判断に至ることもあるわけです。

所有者は何の気なしにシールをはがしただけでも、
(そういう方はわりと多いです)
決済の場ではそれが命取りになりかねません

 

識別情報通知に書かれた説明

 

ちなみに、私は、
識別情報通知をお渡しするときに、
できるだけシールは剝がさないように、
ご説明していますが、
シールをはがしたからと言って無効になるものではない、ということも併せてお伝えしています

なので

じゃあ、ちょっと何が書いてあるのか見てみたい、という気になってしまうのは人情かもしれません。

のみならず、お客様からの指摘で気が付きましたが、「情報通知には、シールの剥がし方の説明があるから、開けろということだと理解した。」とおっしゃるお客様、けっこういらっしゃいます。確かにそのように書かれています

 

原文はこうです

識別情報通知にはられたシールの上部に

 

登記識別情報はこの中に記載しています。開封方法は裏面をご覧ください

 

で、裏面には、
非常に懇切丁寧な開封方法が書かれている、
という具合です

 

これは
わたしを開けて!と言っているのと同じかもと私も思います

 

いっそ
「権利は無効になります!絶対はがさないでください」とでも書いてあれば、とも思いますが。
まあそれは事実と異なるので論外であるし、

剥がせば無効になるようなものを剥がす方法と同時に提供するのは明らかにおかしい、(だからそんなはずはない)との指摘をうけることになるかもしれません

これもまた実際にはがした所有者の方の発言です

ではどうするのか

 

・不動産を担保にお金を借りる

・売却、贈与等の可能性がある

このような方は、
お手元の権利証または登記識別情報通知にご不安があれば、
事前に司法書士にご相談なさることをお勧めします

事前にファクスやメールなどで送っていただいたものをチェックすることはありますが、
これはこれでけっこうリスクが高く、
なんとそもそもコピーしか所持していなかったということもあります。
カラーコピーなどだとさらにわからなくなります

また、権利証等を紛失した場合は、
司法書士は、きちんと対処する手立てをもっていますが

だから安心と思うのは、早計です

事前の準備が必要なこともあるので。

 

売買の当日になって決済の現場であわてふためくことのないよう
ぜひ余裕をもってご準備ください

決済が平和に滞りなく進行することを
お祈りいたします

 

決済のご相談はどうぞお気軽に