新しい瑕疵(かし)担保責任とは

新しい瑕疵(かし)担保責任???

 

2020年4月の民法改正によって、
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)と
されていたものが、
契約不適合責任けいやく・ふてきごう・せきにん
民法565条
として、責任の内容が変わりました

 

契約不適合責任

 

売買の種類品質または数量に関して
契約内容に適合しないものがあるときに
売主が責任を負い、
買主は保護されるという法律です

 

つまり、契約内容と違うものを売った時に
売主が債務不履行責任を負います

 

この改正によって、
売主の責任が重くなります

そして、その分、
買主はより安全な買い物ができるように
なりました。

 

さで、では、どのように、
責任が重くなったかというと、

かつての瑕疵担保責任は

 

売主は、隠れた瑕疵について、
売主に過失がなくても責任を負うべきと
定められていました。売主が個人の場合は、
全部免責という特約も有効ではありました

ただ、隠れた瑕疵、について、
隠れた、の部分の判断基準が様々であり
また、
瑕疵の意味合いが、
通常有すべき品質を欠くこと。と
されていたので、この判断の基準が
かなり曖昧だったために、これもまた
裁判などでも争いになることが多い
部分でした。

特に、
隠れた瑕疵が問題とされるわけですが
これを証明するのは
(証明義務は、買主にあります)
非常に大変でした。

そして、仮に認められたとしても、
要求できるのは、
契約解除が損害賠償かに限られており、
しかも、損害賠償は、
信頼利益に限られていました
(契約の履行を信頼して行われた登記の費用など)

 

そして、契約不適合責任は

 

契約内容に適合しないものがあるときに
売主が責任を負うと定められているので
非常に判断基準が明確です。

このときに買主が請求できるのは、

  • 追完(不動産の場合は修繕要求)
  • 代金減額
  • 契約解除(催告あり。催告なし)
  • 損害賠償 の5つです

損害賠償の範囲は、
瑕疵担保責任の場合よりも広く、
信頼利益のみならず履行利益も含む
されています
その契約が履行された場合に
期待できる利益のこと。
転売利益、とか、営業利益のこと

 

 

まとめると、

契約不適合責任とは、
契約内容に適合しないものがあるときに
生じる責任、ということになります

売買契約書の書きかたは?

 

契約内容とは、すなわち契約書のことです

契約書に細かく当該物件の瑕疵について
書いてあれば、売主はそれについては、
それ以上責任を問われない
ということでもあります。

 

つまり、
いろいろと瑕疵(不具合なこと故障とか)
があっても契約するからには、買主はその
不具合等を知って、なおかつその上で
売買契約を締結したということになります

それだと、売主はそれ以上の責任を
負うことはありません。
知っているのに告げなかった場合は
責任があります!

契約書に書いてあるのに、あとから、
そんな話は聞いてない、とは言えません
もしも、本当に業者からその説明を
受けてないとしたら、それは
宅建業法上の問題で、その業者は
説明責任を果たしてなかったということになります

 

それを契約書に何も書いてなく
雨漏りがするとか、シロアリ対策をとってないとか
2階の雨戸がしまらない、などなど 
しかも、
契約不適合免責についての特約も
ないとすると、将来、
不測の事態が生じたときは、
売主はかなりの責任を負うことになります

 

従前にもまして、
契約書の重要性が増した、
ということでもあります。

 

仲介業者を入れないで合計〇〇円の節約ができたと喜んでいる場合ではありません。

きちんとした契約書を
作成しなかったことのツケが、
一体いつどこでまわってくるか、
想像するだに、
恐ろしいことです。

 

仲介業者にしても日々のアップデートを怠っている業者さんはこの4月からの法改正に対応できていない可能性があります

すでに2018年の時点で
これに先立つかのような
宅建業法の改正があり
宅建業者は契約書の作成にあたって
微に入り細に入り、というしかないような
細かい容認事項を書き込んでいます。

 

容認(ようにん)事項とは

 

これを知っての上で(容認して)契約する
という意味合いで書かれる条項です。
契約書の最後の方に特約事項として
載せられていることが多いです。

 

こんなことが書かれています


第〇〇条(特約)

本建物は築30年を経過しており、
買主は以下の状況を了承した上で、
本物件を購入するものである。

または、

買主は、下記事項を確認・了承の上
購入するものであり下記事項を理由として
売主に対し、解除、損害賠償、修補、
代金減額請求等の請求をしないものとする

1 2階の押し入れに雨漏りのあとがあります

2 表玄関の鍵のうち下部分はこわれています 

3 シロアリの防虫処理を最後にしてから10年以上経過しています

4 地盤調査は未了です

5 地下の埋蔵物の有無については一切不知です

6 自治会があり加入は任意ですが加入を勧められることがあります

7 玄関鍵はスペアを含めて5本ありましたがそのうち3本は行方がわかりません。


 

面倒な責任を負いたくないと思う売主と
しては、
これは問題アリかな、と心配に
なるようなことは全て容認事項として
リストアップしておくのが吉です。
とにもかくにも
契約書と物件の状況が
適合しているかどうか、が大事です。

ここまで売買契約書に書いていいの?
というようなことでもとりあえず
書いておくのが安心です。
実際、当方で見る限り、
何でもかんでも書かれています

中古住宅は全部書くのが大変

 

なお、中古の建物等については、
その全てについて書き出すことは
現実的ではないので、
次のように書かれることが多いと思われます

住宅の付帯設備の故障や不具合については修補・損害賠償その他の責任を負わないものとする

 

これだと買主に不利にならないのか

 

このように、
売主を保護する条文だけをリストアップ
していると、買主はどのように
保護されるのか、という話になりますが
そこは、もちろん、大丈夫です

 

売買契約書とは別に、宅建業者が仲介に
入るときは重要事項の説明義務があります

ここには、まさしく、
土地の細かい制限、境界、建物の不備、不具合等について細かく丁寧に書き込まれています これに隅から隅まで目を通せば、ご自分の購入する物件の全容が見えてくるはず。

ここで、
良い買い物だ、とか、
いくらなんでもこれでは高すぎる、など

最終判断はここで出来ます

買うのか買わないのかは、
この時期までに最終判断をしてください

契約してから気が変わると、
契約書に書かれてあるように
いろいろととてもすごく面倒です。

 

でも私は責任をとれない

 

契約不適合に際して、
責任を一切負わないという特約は有効です。

 

売主が宅建業者であるときは全面的な免責特約は許されないですが
普通の個人(これまで住んでいた自宅を売るとか)
この免責特約をするのは問題ありません

 

契約不適合について責任を負わない旨の
定めは書いてありさえすればOKですが

もしもこの特約を定めてなければ、
全面的に契約不適合責任を負うことに
なるので、
特に責任を取れないと自覚のある売主にとっては非常に大事な条項です

絶対に忘れないように契約書に
書いてもらってください

 

こんな感じです


第○条(契約不適合責任の免責特約)

買受人は、本物件を現況有姿(地上・地下)で購入するものであり、今後売渡人に対して追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償請求等の一切の責任を求めないものとする

 

 

この時も責任をとるべきか

 

原則は、契約内容と異なるものを
売った時に、売主が責任をとると
いうことです。

が、例外があります

 買主が、この瑕疵(たとえば、シロアリ被害があるなど)のことをたまたま事前に知っていたとしたらどうでしょうか。
契約書には、運悪くその記載が
漏れてしまっていたとします。

 

この場合も、そんな馬鹿な!と思いますが
買主が知っていたにも関わらず、
契約書にかかれていなかった以上
売主は責任を負います

 

その瑕疵が
契約書に書かれてなかったということは
売主は契約内容と違うものを
売ったことになり、責任が生じます

 

 免責特約あれば必ず免責されるのか?

この場合、
実は、売主がシロアリ被害について
知っていたのにも関わらず、
わざと告げなかったとしたら、
どうでしょうか。

このときは、
この売主は責任を逃れることはできません

 

民法572条

売主は第562条第1項本文または第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定しまたは第三者に譲り渡した権利についてはその責任を逃れることができない。

 

○不適合責任の通知期間

買主が
契約不適合が有ると知ったときから
1年以内に通知しないと、
不適合責任は時効消滅します。
売主が引き渡しの時にその不適合を
知っていたときは消滅しません
または、売主が
重大な過失によって知らなかったときは
消滅しません

しかし、
1年は長すぎるということであれば、
もっと短い期間を定めることが可能です。
知ったときから3ヶ月というのを
よく見かけます

いずれにしても、(通知しないときでも)
この不適合責任は10年で時効消滅します

 

民法566条

売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において買主がその不適合を知ったときから1年以内にその旨を売主に通知しないときは買主はその不適合を理由として履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし売主が引き渡しの時にその不適合を知りまたは重大な過失によってしらなかったときはこの限りでない

 

たとえば、土壌汚染を発見してから5年で
不適合責任は追求できなくなります

また、引き渡しのときから
10年経過すると同じく、
その責任は追求できなります

 

民法166条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する

1 債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年行使しないとき
(上記だと、土壌汚染を発見したとき)

2 権利を行使することができるときから10年間行使しないとき
(上記だと、引き渡しのとき)

 

最後に ひとこと

 

契約書を丁寧につくることが、買主売主
双方の権利を守ります

宅建業者の負担は大きいですが、
将来の争いを避けることができることを
思えば、その代償としては
決して大きくはないと思います。

 

当方も契約書の作成を頼まれることが
ありますが、やはり、餅は餅屋。というか
不動産の売買契約書は、
宅建業者に依頼することをおすすめします

そもそも売買の仲介なしで、契約書だけを
作ってくれるかどうかはわかりませんが。

できれば、仲介も、経費はかかりますが、
可能な限りきちんとした宅建業者に
おまかせしてしまったほうが
よいと思います。

まだ、法律が施行されたばかりで、
実際上、どのように運営されていくのか
未知数のところは多いです。

が、

完璧な売買契約書が
転ばぬ先の魔法の杖となりますように。