成立できない調停
調停で、当事者間で合意したのに
成立できない???
それはなぜ?
一体どういうこと?
せっかく当事者間で合意が整ったのに
なんと裁判官がストップをかけたことで
合意があるのにも関わらず成立できない
そんなことがあるとしたら
まさに不条理そのものです
まあ何というか
当事者は通常、法律の素人なので
また
調停委員も法律の専門職とは限らないので
法的に問題のある合意が
成立してしまう可能性が
ないわけではありません。
そのような時は当たり前というか
仕方ないかと思うのですが
そうだとしても多少のことは、
当事者が納得していれば
瑕疵は治癒される(!)のではなかったのでしょうか
当事者が合意したときは、あとは
裁判官が認めれば調停は成立し
そうすれば、調停条項が作成され
めでたく終わることになっているのです。
だというのに。。。
状 況
遺産は、居住していた土地建物だけ
(時価2400万円)
相続人は、そこに住んでいた配偶者と
子ども2人。
配偶者は土地建物の取得を希望
子どもはそれぞれ法定持分を金銭で要求
(しかし、現預金は見るべきものはない)
しかし、600万円ずつ、つまり
合計1200万円という現金はどこにもない
といった具合です。
子どもは
代償金の600万という数字は
絶対に譲れない、と主張。
配偶者も
子どもの気持ちはもっともだと思うが
でも先立つものがないのだと
涙ながらに主張。
一見話し合いは平行線かと思いきや
丁寧に期日を重ねた話し合いのなかで
次のような打開案というか、解決案が
とりあえずはどこからともなく
浮上しました
解決案
その1
土地建物をいっそ売却して売却代金を
3人で法定持分で分ける
その2
3人で土地建物を共有で相続する。
住み続ける配偶者は子どもたちにそれぞれ
相応の家賃(家賃相場の4分の1ずつ)を
支払う
ですが、いずれにも難点があります
その1案
不動産を売却してしまうと、配偶者は
住まいを失うことになります
引っ越し費用および月々の家賃を
年金暮らしの中から負担するのはきびしい
その2案
共有で相続した場合、
売却するにしても
相続が発生した時にしても
いつかはまた争いが再燃することが
懸念されます
共有案はほかの解決策に比べると
その時点では
非常にカンタンな解決方法なので
選択されることはたまにありますが
問題の先送りをしているだけです。
できれば、せっかく調停をしたからには
避けたいところです
合意に至る
このような話し合いが何度かもたれた結果
子どもたちがついに折れました
配偶者(お母さん)に家を相続してもらう
子どもたちは今回は相続分を諦める。
そして将来のいつの日か
お母さんが亡くなった時に、子ども2人で
家を売却しよう、という合意が
まとまったのです
これで調停成立、と思いきや
なんとなんと
裁判官からストップがかかるという、
不測の事態に!!!
・・・などということも
考えられないわけではない
ということです
裁判官が同意しない以上、
その案で調停が成立することはありません
調停成立させる
この場合、成立しやすい条項の内容は
このような感じです
遺産の全てである自宅土地建物
(時価2400万円相当)を配偶者が単独で
取得して、子ども2人に代償金として
それぞれに600万円ずつを支払う
これはよくみかける調停条項です
子どもたちが本当に、実体上合意したように
今回の相続では何ももらわなくていい
と思っているのであれば
とりあえずこの条項案を
受け入れれば調停は成立するので
そのあとで、代償金のやりとりを
しないで済ませるのもアリかも、と
思いますよね。
条項には代償金の記載がありますが
実は払わなくても
罰則があるわけではありません
(当初から主張されているように配偶者は
現預金の持ち合わせがありません。
払いたくても払えないわけです)
条項内容が実行されたかを確認する
チェック機関というようなものも
ありません
民事裁判と同じです
ところが、です
少なくとも現在のところは
子どもたちが代償金なしで良いと
譲歩しているので
すぐにどうのこうのということは
ないでしょうが
ですが、万が一、将来
子どもの気(または経済状況)が
変わってしまったら怖いことになります
「やっぱり代償金は貰うべきなのでは?
調停調書には書いてあるし!」として
それを債務名義として
強制執行される可能性は残ります
(配偶者名義の土地建物が競売に付され
その結果、配偶者は所有権を失う)
先のことはわからないので
子供たちの愛情と善意を前提として
払えない代償金を謳った調停合意は
危険だと思われます
いっそ、そこまで合意できたのであれば
ここでやりたいことは
土地建物の名義をお母さんにすること
だけなので
ひとまず
この先どうなるかわからない
調停は取り下げて
3人の間で遺産分割協議書を作成すれば
裁判所の力を借りずに
相続登記が可能となります
その際の協議書には、念のために
「子ども2は何も取得しない」
の一文を載せておくのがよいかと思います
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。