実印を押すことの意味

実印を押すことの意味

 

不動産登記においては、
実印を押すことを
義務付けられている書類が
いくつかあります

 

所有権移転(売買とか贈与とか)において
権利を失う側のひとは実印を押します

売り主とか贈与者ですね。

権利を受けるだけの人は(買主とか受贈者)
実印を押してもいいですが、
印鑑証明書の添付は不要なので
印鑑は何でも大丈夫です。

 

あとは、
相続における遺産分割協議書にも実印
必要です。

 

たとえば、
全ては長男が相続するという協議書
長男は実印を押す必要はないですが
この場合は、
財産を何も相続しないということことの証として、
これに同意したほかの相続人全員
(次男、三男、長女、次女など)は
実印を押します

すなわち、
自分の権利を譲りわたすときや
自分の権利を失うときに

要求されているわけです。

すごく、大事ですよね。

知らない間に大切な自分の権利が誰かに
奪われてしまうことのないように
本人意思の表明の証(あかし)として
実印・印鑑証明書は使われます

 

一方、会社法人の登記では、
すべての登記の委任状に
会社の実印が求められています

 

会社の登記とは、

  • 本店場所を変更したり、
  • 役員を変更したり、
  • 事業目的を変更したり、

これらすべてが会社運営上非常に重要な
登記だから、実印が必要なのでは

と理解しています

 

では実印とは?

 

実印とは、登録された印鑑のことです

さて、どこに登録?

 

個人の場合

 

個人の印鑑は住所のある市町村で
登録します
(概ね15歳以上は登録可能)

印鑑を登録すると、
印鑑証明書を取得することができます

遺産分割協議書に実印を求められて
初めて印鑑登録をする人もいます

 

市町村の窓口で
運転免許証とかパスポート、
マイナンバーカードなどで
本人確認されてから登録をします
そうすると、その場で印鑑証明書を
発行してもらうことができます

 

しかし、
顔写真付きの証明書を持っていない人は
もう少し面倒な手続きを
踏むことになります
自治体によって、扱いが違うようですが

 

会社・法人の場合

 

会社の印鑑は
本店所在地を管轄する法務局で登録します

茂原とか、いすみ市の場合は、
千葉地方法務局が管轄です

 

現在のところ、
印鑑の届けは会社設立時に必要なので
会社であれば必ず印鑑登録はされているので
印鑑証明書はどの会社でも取ることができます

申請書に必要事項を書き込んだり、印鑑カードを提供したり
というのはもちろん必要です

 

印鑑登録自体は独立した行為ではありませんが、同時に行う設立登記には、代表者の個人の印鑑証明書(市町村に登録したもの)と個人の実印が必要なので、こちらも個人のときと同様、いい加減なことでは登録できません

 

実印は何のために

 

つまり実印は同時に提出する印鑑証明書と
照合するために押すのです。

 

決済のときなどに
何をパタパタやっているの?
と聞かれることがあります。

 

いえ、遊んでいるのではないです
押印した書類と印鑑証明書を2枚重ねて
細かく素早く印影の照合を
しているのです。

 

  • 不動産の売却や、
  • 多額の借入(ローン)
  • 遺産の放棄、
  • 車輌の譲渡など、
    重要な権利の喪失の際には、

本人であること
本人の意思に基づく行為であることを
証明する必要があります

 

そのために
通常の本人確認のほかに
実印を押し、印鑑証明書を添付させる
のが、実務上の慣行となっています

 

すなわち、

 

押した実印の印影と、
印鑑証明書の印影を
照合するのが、目的。

 

言い換えると、
せっかく実印を押しても
印影が印鑑証明書と同一に見えなければ
実印を押したことにはなりません。

反対に、実印(登録した印鑑)でなくても印影が印鑑証明書と同一であるように見えるのであれば実印を押したことになります!怖いぞ!!

 

司法書士には、
本人の意思を確認するという
法律上の義務がありますが、登記は本来
書類審査のみなのです。

なので、本人申請で登記を出す際には原則として本人の意思確認は一切されません

よって、
売却の意思がどんなに強固であって
かつ
本人確認がどんなに念入りにされていても
書類に押した印鑑が実印でなければ
登記はできない仕組みです

 

逆に本人の意思を無視して
登記を申請したとしても
書類さえ整っていれば登記は進行し
完了してしまうという怖いことにも
なるわけです

 

ただし、申請人以外の者が申請していると
疑われるような相当な理由があるときは、
登記官による本人確認
なされることがあります

 


不動産登記法第24条

登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、当該申請を却下すべき場合を除き、申請人等に対し、出頭を求め、質問をし、または文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。


 

照合を阻むもの

 

ごみ・ホコリの問題

 

印面にごみやホコリが入りこんでいると
結果として印影が同一になりません

掃除をしましょう。
(決済に立ち会うときは、掃除用の小さなピンを持参しています)

 

柘植(つげ)など、
柔らかい印材でできた印鑑を
掃除するときは、ご注意ください。
一生懸命に掃除しているうちに、
印面の一部を破壊!してしまうことが
あります(滅多にないですが。)
ご注意ください。
細い縦の線が取れてしまうとか。。。

 

もっと問題なのは、
印鑑登録の際のゴミやホコリです。
それらが付着したまま印鑑登録してしまうと
かなり困ったことになります。
一回掃除をしたら、
二度と印鑑証明書と同じ印影は
得られません。

 

ゴミの付着によってまたは撤去によって
同一の印影を得ることが
できなくなってしまったら、再度、
印鑑登録をして、
新しい印鑑証明書をもらいましょう

 

朱肉の問題

 

印鑑は、スタンプインクではなくて、
朱肉をつけて押印します

・古い朱肉

さて、その朱肉なのですが、
新鮮で凹凸や角度のない良いものを
使いましょう

古い朱肉は酸化して
ひどく劣化してしまっていることが
多いです。

 

押印した紙によっては、
押したときは美しい印影であっても、
どんどん油分が出てきて数日たつと、
朱肉の油分のため、
印影照合ができないくらいに
なってしまうことがあります。

 

・印鑑ケースの中の朱肉

印鑑を買ったときから
ケースに入っている朱肉があります

去年買ったばかりならばともかく、
10年も20年も前に購入したものならば
その朱肉はとっくに酸化していて、
重要な印鑑を押すという役目に
耐えられません。

 

また印鑑ケースに入るような小さな朱肉は
均等に朱肉をつけることも難しいですし、
印鑑の縁を傷めてしまうことさえあります

・銀行等の応接室の朱肉

銀行や会社での決済の際に、応接室に
備え付けられている朱肉があります

これもまた。。。

酸化、劣化または、
捺印不適状態(ごめんなさいですが、使えない)
であることがよくあります

大体ケースの蓋をとった途端に
新品とは違う、
明らかに酸化した匂いがするのですぐに
それとわかります

特に銀行では、
新しい朱肉液?を足したばかりで
捺印不適状態のこともあります
(水分過多・どろどろ)

 

というようなわけで、決済時には、
必ず朱肉を持参します

新鮮で凸凹もなく、
素晴らしい印影が得られる、
よい朱肉なのです

が。

中には、
わざわざご自身の印鑑ケースの朱肉を
使いたがる人。もいます

。。。。。。。。。。。

ただ、こちらは、
印鑑証明書との照合のために
適切な印影が欲しいだけなのですが。

 

押印箇所の問題

 

個人であれば、名前の後に

法人であれば、代表者の名前の後に
押しましょう
(法人名のあとに押すのではなく)

印鑑証明書と印影照合をするので、
文字と重ならないように、かつ、
名前とあまり離れないように

押してください

 

「印鑑は、名前に必ず
3分の1かかるように押せと習った」
と主張する方がおいででした。
某役所で勤続30年。
ずっとこれでやってきたので変える気はない
とのこと。

このときは、
そのようにしても照合できる印影だったので
大丈夫でしたが。

基本、文字にかからないように、
名前のすぐ後ろに
押していただきたいものです。

3分の1説は主張する方はわりといますが
大抵の場合は印影照合の説明をして
納得していただいております。

 

たかが、ハンコ

されど、ハンコ

です。

よろしくおねがいします