完全無欠の遺言書作成

将来、遺言者が死亡したのちに
せっかく死力を振り絞って作成した遺言書
だというのに

それを
無効だとか、偽造だとか何だとか
失礼なことを言われたくはないものです
(当然ながらあくまでも本人が
ご自分の意思で作成した遺言書、という
前提です)

 

後日の争い、を避けるために
つまり遺言書の有効性を疑われたり
受贈者が謂れのない誹謗中傷をされたり

さらには裁判沙汰にされたりすることを
避けるために

遺言する人は
それなりの配慮をしておいた方が
良いです

 

そこで、遺言書を作成する際には
形式上もそうですが

内容もできるだけ
相続人間で争いが起きにくいように
作れるとよいのです

かつて犬猿の仲だったはずなのに
末っ子に全財産を遺すなどという遺言を
作成してあると
絶対あとで問題になります

末っ子が勝手に遺言書を偽造したのでは?
という疑念を抱かれることでしょう

また逆に、ひとりで
(半ば皆の犠牲になって)
最後まで介護をした次女に
すべてを遺すという遺言も
それはそれで問題になります

身近にいた次女が
そそのかして書かせたのでは?という
疑いをもたれるからです

各相続人には必ずそれぞれ言い分というか
自分の正当性を主張する根拠があります
たとえそれが客観的にみてどうであったとしても、です

付言条項を追加する

 

このようなときにできるのは
遺言書のいわば付言条項として

このような遺言を書くに至った経緯
のようなものを書いておくのがよいと
言われています

特に
自分の取り分が少ない!と嘆き悲しみ
暴れそうな相続人に対して

それに至った理由を
キチンと遺しておくわけです

 

たとえば

「長女、三女は外国に長期留学をしその後も一人暮らしの援助として長年にわたり生活費を渡してきた。
一方、次女は地元の高校卒業後、家業を手伝い私が病を得てからはずっと私の身の回りの世話をしてきてそのためずっと未婚であった。
次女は私がいなくなったら生活費を得る手段もないことは明白であるので
これまでの苦労に報い、かつこれからの生活に不便のないように遺産を分与するものである

だから、3人の娘たちに対する私の愛情は誰に対しても平等ではあるものの、
長女も三女も、経済的に恵まれた状況にあることに鑑みて、このような結論に至った事情をどうか理解してほしい。
2人がそれぞれ立派に独立して社会に貢献している状況は有難くも喜ばしいことであり、
私が心から誇りに思っていることを忘れないでほしい」

などというものです

 

どうして遺言者が
客観的にみれば不公平にともいえる遺言を
したのか

わかるように書いておくだけで
納得度は違ってくると思います

納得できる材料(付言条項)を
用意してあげるのは

今や
思いやりというかマナーかもしれません

数字で愛情を量るのは
間違っているとは思いますが

量ってしまうのが
悲しいかな、
私たち人間なので。

 

やはり公正証書で

 

あまりに大胆な遺言書の場合は
やはりできる限り
公正証書で作成することをお勧めします

どうしても自筆遺言書
偽造や
教唆等の
疑惑を招きやすいので

内容が過激であればあるほど
その遺言が実現されることや
遺言が間違いなく執行されることを
望むのであれば
公正証書の方がよいです

公正証書遺言については
無効とされる心配をなさる方は少ないとは
思いますが、念には念を入れましょう

特に、公証役場に出向かず
自宅等まで公証人に出張してもらって
作成するときなどは

満足に歩けないのに
意思をきちんと伝えることが可能だったのか
まともに判断できる状況だったのか

などと
痛くもない腹を探られることがあるので

その遺言書作成シーンを
録画しておくことをお勧めします

さらに、保証人の選択ですが
へたに親族関係があったりすると
万が一
欠格事由に該当しないとも限らないので

このあたり自信がないときは、いっそ
公証役場にお願いしてしまいましょう

2人分の日当を支払う必要がありますが
役場に頼めば手配してもらえます

 

また保証人として
遠縁の人や、友人、仕事関係の知人に
依頼すると

おそらく大丈夫でしょうが
遺言内容が世間に漏れる恐れが
全然ないとは言えません。

遺言の内容は言うまでもありませんが
公証役場で遺言書を作った
という事実さえも
外部には知られたくないという方は

公証役場に保証人までセットで依頼する
のがベストです

 

 

自筆遺言のときは

 

時間や体力がないなどで
公証役場での手続きを
とっている余裕がないときは

自筆遺言を書くほかありません

 

そのときでも後日のために
できるだけのことはしておきましょう

自筆遺言書を作成するときは
基本的な形式的要件を満たすことは
もちろんですが、これにさらに

  • 押印を実印で行う
  • 印鑑証明書(新しいもの)を添付して
  • 一体化しておく(契印を押すとか)

などはいかがでしょうか

自筆遺言に押す印鑑は
実印である必要はないのですが
これをわざわざ実印で押してさらに
印鑑証明書を合綴することで
その真正を担保させるわけです

実印を押した(印鑑証明書付き)書類は
訴えられても強いです

 

さらにダメ押しするのなら、こちらも
遺言書作成シーンを録画しておく
という手を使います

紛れもなく遺言者本人が
遺書をしたためている場面
記録しておくわけです

これも、裁判になったときに強いです

第三者ではなく、遺言者本人が
おそらく自分の意思で書いたことが
わかります