契約書に日付がないと無効なの?

契約書に日付がないと無効なの?

 

売買契約書は、このようにつくります

 

まず、契約書といってもいろいろあるので、たとえば、不動産売買契約書だと、
こんな感じで作ります。

 

  1. 「いつ 」  2018年9月9日
  2. 「誰が 」  片山りえが、
  3. 「誰に 」  堀井武文に
  4. 「何を」   千葉県茂原市上の林1丁目84番の土地を
  5. 「どうしたのか」売り渡した
  6. 「いくらで」 金2000万円で

最低限これだけのことが書かれていれば大丈夫です。

何がどのように行われたかが、たったこれだけで、明確になります。

 

これだけでも本当にいいの?

 

しかし、通常は、もう少し、細かい条項についても書き入れます。
これだけだと、
万が一何かがあったときや、双方の思惑が違っていたときに、
困ることになる、  
からです。

 

いわゆる一般の契約条項

 

次のようなことをさらに付け加えます

 

  • 契約解除するときはどうするとか、
  • いつまでに解除できるのか、
  • その時違約金は、とか、
  • 契約から引き渡しまでの間に何かあったらどうするのか。
  • 固定資産税は精算するのか
  • 売買代金はどのようにいつ支払うのか。
  • 登記費用は誰が負担するのか、
  • いつまでに決済をするのか
  • 瑕疵担保責任は?
  • 裁判になったとしたら管轄は?  云々・・・たくさんあります。

 

しかし、ここに書いてないことは、
慣習法或いは、民法等に定めがあるので、心配はご無用です。
それらによって決められることになっています。

 

書かれてなければ約束してないのと同じ

 

ただ、この契約に特有のことだけは、特約等として、必ず、書いて下さい。

書いてないとわかりません。


将来、これが問題になったときに、
書かれていなければ口約束だけではどうにもなりません。

書かないとわからないのは、例えば、こんなときです。

 

  • 隣に変わった人が住んでいるけど、これを了承の上の売買である。とか、
  • 鳥のふん害がものすごいけど、このために売買価格を15%下げてあるので、これに対して苦情は言わない、とか。
  • 即引き渡して即売買登記をするのだけど、代金は今年末と来年末の2回に分ける、とか。

このような特殊な事情がないのであれば、若干さみしいですが、
上記の最低限の6個のことだけでも、契約書がないよりはずっといいです。
(契約は口約束だけでも有効に成立します!)

なお、慣習にも民法にも契約書にも記載のないことについて、
将来、争いが生じ、当事者で解決できないことが起こったら、
裁判所の助けを借りることになります。

 

で、この6個しかない大事なことなのに、

 

日付がはいってない。誤記もある。この契約書は無効?

・・・

実際問題として、不動産売買の残金決済の現場で、

契約書に日付が入ってないのを発見することもままあります。

 

 

契約書はとても大事なものなのですが、
とりあえずつくってみました的な作られ方をしたものが多いです。
(仲介業者さんが入っている時は法律で作成義務があるので問題はないですが)

ついでに言うと、日付が入っていないだけではありません。

誤記もあります。けっこう、多いです。
(あったからといって大勢にほとんど影響はありませんが、
仕事柄、気になるもので。)

  • 平米数(㎡・広さの単位)特に小数点以下、は誤記が多いです。
  • 不動産の表示の小字(こあざ)部分はよく間違っています。
  • 売買代金が一桁違っていることもあります。(多い方に)

    また、市販の文房具店で売っているような契約書を使うのはよいのですが、
    誤記だけではなくて、一番肝心と思われる特約事項が、
    全く書かれていないことがあります。
    そもそも、書きいれるスペースがなかったりするのです。

    明らかな誤記は訂正するまでもないです。元号とか、買主売主が逆とか。
    直した方が良いのは言うまでもないのですが、そのあたりを厳格に訂正していくと、契約書が訂正印だらけになってしまって、これはこれで別の問題が生じます

 

特約条項もしっかり書きたい

 

当事者は実際は、口頭でしっかり約束をしています。

それこそ、

  • 支払いは10年分割であるとか、
  • 固定資産税の精算はしないわけではなく、後日両者が直接行うとか、
  • 瑕疵担保責任は売主が個人なので、一切負わないとか、
  • 建物がいろいろ傷んでいるがそれを了承のもとで格安で売買するのだ、とか。

いずれも、とても大事な特約です。

 

このように大事なことが口約束のままでは、あとで何か問題になったときに戦えません。そんなことは聞いてない、言ってない、という果てしない水掛け論に終止し、消耗するだけです。

自分の権利を守るためには、戦わざるをえないこともあります。
そのときに文書の証拠がないのは、素手で軍隊に立ち向かうようなものです。(少しオーバー)

 

「それって、すごく大事なことだと思いますが契約書に書かれてないですよ?」
必ず私は、そのように言います。

「いやあ、書かなくたってここにいる人みんなが証人みたいなものだから大丈夫、心配しすぎ。司法書士さんは気が小さいねえ」というような感じで、
追加記入してもらうのは、大変です。
しつこく追求するので、よく嫌がられますが。

 

不足があったら、直してしまおう

 

ですが、

近頃、開業20年を過ぎたあたりからようやくわかってきたことがあります。

~当事者が、契約書の誤記訂正や特約の追加記入をしないのは、
ほとんどの場合、単に面倒だからである。~

なぜなら、
「何なら私が直しますけど」
この一言を言うようにしてから、断られたことはないので。

もう少し、早く気がつけばよかったです。

 

日付問題をまとめると

 

そして、日付がないからと言って契約が無効かというとそんなことは有りません。

ご安心下さい。

 

他に資料があるはずなので、それらから判断することは充分可能です。

裁判になったときは、

登記簿や、領収書、仲介業者さんがいる場合は、重要事項説明書等の記載から、
契約日付を推定することは難しいことではありません。

預金通帳の記載(売買代金の出金、入金)なども有力な資料となります。

ただ、これらの記載から契約日付が明確にならないこともあり、
それが、裁判の争点の重要部分だった場合、
書類上で立証できないのは戦略として苦しいですね。

忘れがちですが、契約書には日付を入れましょう。やっぱり大事です。