外国人が遺言をする

日本に国籍がない人であっても
遺言を遺すことは可能です

 

しかし、問題がいくつか

 

自筆遺言

 

外国語で書いても大丈夫なのですが
問題は、裁判所での検認手続き

これは外国人であろうとも必要なので
しかるべき書類をそろえて
裁判所に申し立てをします

日本人であれば、
被相続人および相続人全員の
戸籍と住所が必要です

これは、相続人を確定するためと
相続権のある人全員に
検認期日を知らせる必要があるため
要求されているものです

ところが一方、外国籍の方の場合は
戸籍がないので
それに準ずる書類が必要とされています

こっちが面倒です。

そもそも日本国内では
取得ができないのではないか、とさえ
危惧します

出生証明書、死亡証明書、婚姻証明書など
現地(!)に足を運ぶ必要が
あるのかもしれません

 

公正証書遺言

 

日本語のわからない人でも可能です

ただし、公正証書は日本語で作成する
という法律があるため

日本語がわからない人は、
通訳を同道する必要があります

  1. 外国人が通訳人を介して遺言を口述し
  2. それを公証人は書面にし
  3. 再び通訳人を介して遺言を読み聞かせ
  4. 間違いのないことを確かめます

 

このような手順を経て遺言が作成されます

また、遺言作成時に必要な保証人2人は
外国語のわからない普通の日本人で
大丈夫です
(欠格事由に該当しない限り)

適当な人が周りにいなければ
役場に依頼すれば
保証人は用意してもらえます
(別途費用がかかります)

 

遺言執行

 

遺言を公正証書で作成したり、または
自筆遺言の検認が無事に済んだとしても、

遺言執行の問題が残ります

遺言を作成できても執行ができないのでは
そもそも遺言自体無意味だったことに
なりかねません。

(その気持ちは遺せたとしても。)

 

ここからが難物ですが、

国によって
相続や遺贈、贈与に対しての考えが異なるため

遺言が方式に従って作成されたとしても

その内容が本国法に適応していないとか

つまり、

その遺言では、
せっかく作ったのに遺志を実現することが
できない、という事態も

大いに考えられるということです

 

 

ここまで来たのに、という
膝から崩れ落ちるような事態にならないように、

遺言作成時には、
そのあたりまで含めての対応が求められます

素人がやたらに手を出すな、ということでもあります

 

近年、外国人の方の登記をする機会が
増えました

売買の権利者になる方や
相続人として名義人になる方も多いようです

この先、その方たちに相続が発生したときに
その支援のできる専門職でありたいものです
が、
道 は 遥 か に 遠 い

という気がします

 

都市部には、外国人の登記を専門に扱う
渉外登記に特化した司法書士がいます

大変、心強いことではありますが
事の性質上、費用はどうしても
高額にならざるを得ません。

特に、書類の取寄せ関係および
その翻訳については、すでにその段階で

数十万円はかかるとされています(嗚呼・・)