売買契約書にどうか日付を!

売買契約書に日付を入れる

 

日付(契約書の作成日・契約締結日)は契約の要素の重要部分だと思いますが、印象としては一番ないがしろにされがちな箇所でもあります

 

契約内容は、当事者が何度もよく読み考えて自ら調査したり果ては専門家の意見を聞いたりなどして熟考に熟考を重ねて作成されるわけですが、日付については、特に考慮されてないものなのか、この部分が空白なものをわりと見かけます

考慮されていないというか、
単純に書き漏れなのでしょうか?

 

どうして契約日付がないのか

 

契約締結日付は、
ここで気が緩むのかあるいは、契約さえできればどうでもいいと思っているのか(まさか!)不動産の売買契約書に限って言えば、書かれていないことは多いです

本文中の代金支払い期限とか、
決済はこの日まで、とか
この日までには境界立会を終わらせるとか
そのあたりの日付は丁寧に書かれてあっても
契約締結日が空欄!

 

 

不動産売買契約書の
誤記・遺漏のベスト3(多い順当社調べ

 

1 作成日付が入っていない

2 当事者の氏名が微妙に違う

3 物件の表示が少し違う

番外 売買代金が一桁違う(うおっ!)

 

 

大会社(多くの人に知られている大きな会社という意味)が作成したものであっても、契約日が入っていないことはよくあります。

漏れ聞くところによれば、
法務部(契約書を作成・精査する)と
営業部(契約を取ってくる、契約内容を履行する)との間で譲り合いの結果、
文字通りの空白が生じてしまう、らしいです
(真偽の程は不明)

確かに、契約書の中身 たとえば、
それが売買契約だとしたら、
売買価格や支払い方法等に比べれば、
日付はどうしても重要度は落ちます。

契約書案の中でもおそらく、
「○月○日」扱いであり、
常にいつでもそうなので、
契約当日にそこに意識が向かないのも仕方ないかもです。

 

 

結局あとまわし?

 

どうでもいいとは絶対に思っていないと思うのですが、特に、売買金額が低廉な不動産などに顕著ですが、契約即登記(契約した日にそのまま残金決済登記まで行うこと)というときに、契約書の作成と残金決済が併せて行われるので、不動産仲介の人の煩雑さは大変なものがあります

さらに、作成しただけではなく(作成するにあたってもチェックポイントはいろいろあります)署名捺印箇所にも気を配りコピーも必要なだけ作成し現金をうまく数えられないという売り主のために数百枚の紙幣を数えたりもしその合間に泣きわめく幼児の機嫌をとったりするわけです

その煩雑さは、おそらく
決済現場に立ち会ったことのない人にはわかりません。
(当事者の習熟度にも大きく左右されます)

まあデリケートな金額や期限のことではなく
単純な契約締結日なので、
あとで気がついた時に入れておけばよい話かもですが。

 

あとで日付を入れる

 

それぞれがあとで勝手に日付をいれたとき、

同一の契約書(正副だったり、写しだったり複数枚出来上がることが多い)の日付がいろいろだったり、

1枚しか作成してない原本に日付がないため
もらった写しの方にも日付がないとか。

これではマズイのでは?と思います

 

日付がないと無効?

 

作成日が空欄であることをもってその契約を無効とまでは言えないと思いますが、契約文言中、「本日より発効するものとする」とあった場合は、日付がなければ、どんなに立派な契約内容であったとしても考えものです

その「本日」は、永久に到来しない
という事態にならなければよいのですが。

世の中、善人ばかりではありませんから
契約書に日付のないのを奇貨として悪事を
はたらく人がいないとも限りません。

 

争いになったとき

 

締結日付が将来問題になって
裁判にでもなったときには
どう考えても証拠としては弱いのではないでしょうか

単純な売買ならば、
領収書の日付から契約日を推認することも可能だと思いますが領収書がない契約(雇用契約とか、請負契約など)だったらかなり困ったことになりそうです。

不動産の売買契約書については、見聞する限り、あまり困ったことにはならないほうが多いかもです。

だから、油断して日付を入れ忘れるのかもしれません

だからといって、意図的に日付を入れないのはもってのほかです。

契約内容等で裁判になったとしたら、
作成日(締結日)の入っていない契約書は弱いです

弱いというのは、証拠能力が低いということです

せっかく、将来のために後日の証として
印紙まで貼って契約書を作成するわけなので
ここはきちんと日付までしっかりと記入してしまいましょう

 

遠隔地間での契約(面談なし)

 

仕方がないかも、というパターンがこれです

当時者同士が面談できないために郵送でのやりとりをする場合。

 

最低でもこれだけは

 

言うまでもないことですが、
実物の契約書を郵送する前に
メールや電話で重要事項やその他もろもろの細かいことはきちんと合意しておきます。
それこそ、面前に契約書がないだけで
当事者間での合意は100パーセント成立している状態が望ましいです。
あとで細部をつめるとか考えていると泣きます。対面してないということは想像以上に大変です。

また
「細かい箇所はそちらにおまかせします」で
おまかせしたものが意に沿わないときは作成し直し。

または、
それが面倒だからという理由で後日
覚書(おぼえがき)を交わす約束などしますが、うやむやになってそのままになってしまうこともあります。
なので、
事前に漏れや抜けのないように打ち合わせを万全に済ませて、一枚の契約書にすべてを盛り込みたいものです

 

 

実際のやりとりは、次のような感じでなされることが多いようです

契約書のやりとりは具体的にはこのように

 

  1. どちらかが契約書を2部作成
  2. 2部とも自分の署名捺印をする
  3. それを相手方に郵送
  4. 相手方は契約内容を確認した後
  5. 2部とも署名捺印し日付を入れる
  6. 1部は手元に残し
  7. あとの一部を先方に返送。

    これで、完了です

 

このような感じで返送してくれるように相手方に頼んだとします。
ところが、おそらく他意はないのでしょうがその契約書が契約日空欄のまま返送されることがままあります。

面談なしで契約書が作成されることが
これからますます増えると思うので、
この日付問題については、もっと、必要性を
声を大にして伝えたいと思うものです。

 

この郵送型の場合、
どちらかが主導して
契約日をはっきり記入すべきです

 

郵送する前に、

「では、本日、契約が締結されたので
(多くの契約は、口頭でOK)
契約書はこれから郵送します
本日契約締結日ということで、本日、
2020年10月13日、と
お入れしますね。いいですか」

とひとこと断った上で郵送すればいいだけです。

 

この方法が何だか押し付けがましくてイヤ
と感じるのであれば
到着後に電話かメール等で打ち合わせて

「では契約日は○日にしましょうか。
契約書に○日と日付をいれてください」

日付にこちらとあちらとで齟齬がないようにするという手もあります。

しかしこの方法だと相手が日付をきちんと記入したかどうかわかりません。どうしても事務仕事が苦手な人というのが一定数存在していてそのような人は悪意はないにしても聞いたそばからその日付のことを忘れます。

しかし、それをいうなら、
相手から返送されてきた契約書に日付が記入されていたからといって、先方が自分の分にも同一の日付を記入したと信じる根拠はないことになります。しかしここは、あえて、それを言ったらおしまいよ、というスタンスでいきます。(性善説を採用)

やはり、間違いないのは、
最初に作成した契約書を2部送る際に
相手方の了承の上、
日付を入れてしまうことでしょう。

で、相手方は自分の署名した分を手元におき
さらに、署名したもう1部を返送すればいいだけです

 

通常、このように日付を入れて返送するという行為は、契約の申込みに対しての承諾という意味を持つものとされています。
日付を書き忘れても1部を返送するという行為を申し込みに対する承諾とみなすことは問題ないと思われますが。

そもそも契約の合意というか締結自体は、
契約書の作成とは関係ないわけで。

それにしてもわざわざ契約書を作成するのであれば、日付のない契約書は、いまいち、すっきりしない感じ。日付を入れて。

 

まとめましょう

 

多くの場合、契約は口頭のみで有効です
口約束だけで有効な契約として成立するということ

文書にするのは後日の証(あかし)のために
するのであって、

契約の有効性、
証拠としての契約書、
別物です

 

ですが、

 

口頭で有効だからといって、人から
覚えのない契約を主張されたときには
「そんな約束はしていない。そんなに言うなら
じゃあ、契約書を見せてよ」
と誰でも反論するはずです。

 

そんなことのないように、
または、
細かい箇所については
お互い記憶力には限界があるので、
きちんと書面で残したほうが合理的で安全だというわけです

せっかく、書面にして残すのだから、
画竜点睛を欠くということがないように
日付いれましょう。ぜひに。