国に土地を貰ってもらう方法?

いらない土地を国に差し上げるというか寄付するというか要は貰ってもらって、
自分は土地所有者としての義務から自由になる

 

土地の所有権を手放して
国に貰ってもらえる法律ができました

民法や不動産登記法が改正されたのではなく
新しい法律が創設されたのです

 

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律
(相続土地国庫帰属法)

これが正式な法律名です

 

令和3年4月28日公布され、
施行は令和5年4月27日

相続開始の時期にかかわらず、この日から適用されます

 

この法律は、
所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的としています

所有者不明土地問題の解消は国としても焦眉の急らしく、あの手この手で必死ですが。

そのわりには、国に貰ってもらうのは、かなり大変そうです。

 

土地を放棄したい、という悩み

 

土地を放棄したいというご相談は、けっこう多いです。管理に労力や費用がかかる(年に何度も草取りが必要とか、固定資産税とか)などの理由により、持っていても負担になるだけなので、いらないわ、ということなのでしょう。何より、昔のようには、土地に対する愛着そのものがない印象です

ですが、土地を放棄することはカンタンなようですが、原則としてできません。なので、どうしてもいらない、何とか処分したい、という場合は、どなたかに贈与するか、安い価格で売却するか、いずれしかありません。

自治体に寄付するというようなこともできないわけではないでしょうが、それを試みる人は多いですが、成功したという話は寡聞にしてききません。なかなか、寄付を受けつけない、という話です

おそらく、その管理コスト等の負担が大きいために自治体も二の足を踏むのかもしれないですね

 

そこで、贈与するか売却するかということになるわけですが、
農地などは、当事者がどんなに乗り気であっても、農業委員会の許可が必要ですし、場合によっては、許可を得ることができない農地もあります。
また、宅地などで評価額が高額なとき、たとえば、非常に低額で売却すると、(500万の土地を2万円で売却するなど)贈与とみなされて予定してなかった贈与税が課せられることもあると言われています

 

土地を放棄したいという人の気持ちや事情はわかるのですが、ですが、しかし

所有権の放棄は原則として、できないようです

相続の放棄をするのとは、根本的に異なります

 

このような事情の土地については、
遺産分割協議のときからこうした問題があるものです。
誰も不動産の相続を望まないという。

ご先祖様が聞いたら、
とんでもないと思うでしょうが。

世の習いなのでどうにも仕様がありません。

 

宅地はともかく(価格を問わなければすぐに売却することが可能なので)
山奥の山林や、ましてや農地などは、
相続人全員が相続を拒んだ結果、
協議そのものが暗礁に乗り上げる、というようなこともままあります

被相続人の財産が土地だけであるならば、
いっそ相続放棄をするのも手だと思いますが
預貯金があったり、
母屋と敷地だけは相続したいとか、
家庭裁判所での相続放棄という手続きを選べない事情をお持ちの方は、数多くおいでです

 

ご注意;農地だけ放棄する、とか不要な財産だけを相続放棄することはできません

相続放棄するということは
相続開始の時(死亡したとき)にさかのぼって
相続人ではなくなることです
結果、すべての権利も義務も相続しない、ということになります

 

新しい法律はこのように

 

そんな方たちにこのたびの新しい法律は

朗報です!

と言いたいところですが。

実際どうなのでしょう

かなり、条件が厳しいような印象があります

 

ちなみに、この法律には、

最後の附則部分2に検討として、

政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

というものがあります

 

それはそうでしょうね、という感じです

条件がきびしくて、
使い勝手が実情にそぐわないのでは?と素人ながら感じます。

手続きも面倒な感じ。
新しい法律ができたからといって、

カンタンではありません

 

当職の幻想

 

土地の国庫帰属という言葉を聞いたときに浮かんだイメージはこんな感じ。

土地を放棄したい所有者が
印鑑証明書を添付して申し出をして、
放棄意思と不動産の確認ができれば、

所有権放棄は認可されて、
その所有者のない土地は国庫に帰属する

民法239条2項
所有者のない不動産は、国庫に帰属する
というような感じ。

当職の希望的幻想でした

 

 

相続土地国庫帰属法

 

この法律は、次のように、
基本的要件が定められています

なので、

誰にでもできるわけではなく、
どんな土地にでも適用されるわけでもありません

 

  • この申請が許される人は?
  • 適用を受けられる土地とは?
  • 必要とされる負担金は?

 

これらがしっかり厳格に(!)定められています

 

〇 国に対して土地を手放せる人

・相続または遺贈(相続人に限る)で土地を取得した人(相続の時期は問わない)に限られます

単に隣の人から土地を遺贈された人は該当しません(相続人ではないから)

また
生前贈与・死因贈与・信託等も含まれません

将来のため予め相続人に土地を譲ったときはこの法律の適用はない、ということです

 

〇 手放せる対象土地

・土地持分は不可

共有者が50人いたら、全員が手放すのはOKです

・建物が建っている土地は不可

・担保権や地上権、質権等がついているのは不可

明治時代の10人共有の抵当権がついていたりすると厄介ですね

・土壌汚染されているのは不可

・境界が明らかではない土地は不可

・所有権の存否、帰属または範囲について争いがないこと

以上は、承認申請自体が認められず、
いわゆる門前払いの扱いになる土地です

 

さらに、上記の問題がクリアできて、承認の申請ができたとしても、

次のものは、状況次第で認められない、と定められています

・管理に過分の費用または労力を要するもの

・土地上に管理処分を阻害する工作物樹木そのほかの有体物がある

・地下に、除去すべき有体物がある

等の土地については、承認されません

 

 

 

かなりきびしい条件ではないでしょうか

 

さらに、

〇負担金を前納して、それで完了
(負担金の納付時に所有権が移転する)というわけです

 

負担金は、
土地の管理費相当分(国有地の標準的な管理費用10年分)とされていて、

その目安は

原野 約20万円
(粗放的な管理で足りるもの)

市街地の宅地(200平方メートル)
約80万円

とされています
(詳細はまだ公表されていません)

 

手続きの流れを復習

 

つまり、

  1. 法務大臣に対して承認申請をして(申請時に手数料がかかります)
  2. 行政庁(法務大臣)による審査と必要なら調査があり
  3. 法務大臣から承認をうけて
  4. 負担金を納付する

 

それで手続きが完了するというわけです

 

共有の土地は

 

なお、共有の土地についてですが、
共有者全員の意見がまとまれば、この手続きは選択できます

そして共有者が50人いたら、全員からの承認申請が必要です

ただし、この時は、50人全員が
相続又は遺贈による取得であることは要求されてはいません。

持分の贈与や、持ち分の売買を受けた共有者がいても可能です

いても可能ですが、最低一人は、
相続等で持分を取得した共有者の存在が求められます

いやはや、たいへんです。

 

「放棄」するのも一苦労

 

遠くの土地や耕作しない農地はいらないから気軽に「放棄」を考えている、
という方が多いのだと思いますが、
それはちょっと無謀かも、です

所有者側の意識としては放棄なのだと思いますが、法律としては、放棄ではなく所有権を国に帰属させる手続きです

 

かりに、国庫に帰属させる土地の条件を満たしているとしても、
負担金の支払いも必要なのです

全部厄介払いができるなら、
20万円払ってでも、という方はおいででしょうが。。。

 

どうなのでしょう。

 

 

新しい法律が受け入れられ、
未来の見える仕組みが出来上がっていくことを祈ります