司法書士の本音~取引

司法書士の本音
司法書士業務も実際のところ
ボランティアでやっているわけではないので
こうして言ってしまうと身も蓋もないですが
仕事です
こっちも商売なんでね、というものです)

なので
ご依頼頂いた仕事は全て
お断りすることなく
ウエルカムでお引き受けしたいと
思うものです

ですが、にも関わらず

お断りせざるを得ない仕事
というものがあります

代表的なのが
微妙に怪しい取引です

 

怪しい取引というのは

 

怪しいというのは
ざっくりとこの言葉を使っていますが
一体何が怪しいのでしょうか

 

  • 取引自体(何となく胡散臭い)
  • 当事者(売主または買主が微妙)
  • 仲介業者(微妙)
  • 不動産(秘匿した瑕疵がある)

 

以上のいずれか、または、全て
ということになろうかと思います

 

近頃は
マネーロンダリングに絡んだ取引
というものが我々専門職の間で
注意喚起の対象になっています

これについては、司法書士は
特別の確認および当該記録の保存という
義務が定められているため
その注意を怠るわけにはいきません

ただし、私は、これらしき取引に
関わりそうになったことさえもありません。

取引額の高額な特殊な決済ではないでしょうか。
まさかぼんやりしていて気が付いてないだけ
ということはないと信じたいです

 

ただ
売主も買主も本人に間違いなさそうな上
売買契約書もきちんと
作成されているようだし、代金も
無事に振り込みがなされたようなのに

なんとなく、しっくりこないものがある
というようなものが
全体的に見て怪しい取引というものかも
しれません。

これも当たったことがないので、わかりませんが。
ぼーっとしていて
問題点に気付かなかった可能性はあります

 

○所有者にここを売却する意思があって
本人またはその代理人が
売買代金を受領する

○買主にここを購入する意思があって
売買代金の支払い後
所有権名義人となれる

上記の条件が満たされれば
当面の課題はクリア、というか
一見、問題が生じなそうに見えます
これが通常の取引です

平たく言うと

ここを売ります。買います。
お金払います。登記します。

これだけです

 

 

この条件が満たされないときは
たとえば

売主ではない人の偽造書類によって
登記をしたら
買主はお金を払い
登記を受けたとしても
所有権を得ることはできません

もっとも、偽造書類が早い段階で
発見されれば登記はされることがなく
登記却下されます

ですが、通常は

司法書士が登記書類を全部預かった段階で
残金(売買代金)は支払われてしまうので

あとの祭り、ということになります

 

また、売主が悪い業者に騙されていれば
この一部を売却するはずだったのに
全部を一部の値段で売らされた
ということになります

または、巧妙に言いくるめられて

全額ではなく、一部金を渡されたまま
決済金のほとんどを悪い仲介者に
奪われることもあります

見るともなく見ていて
(現金授受の場面はあまり凝視するのも失礼かな
と思いつつ現金が授受されたかどうか確認することは
司法書士の職責の一部であると思っているので
見ないふりをしつつ見ているものです)

あまり危なそうなときは
「それで大丈夫ですか?
全部もらってないみたいですけど」
(このストレートな言い方!)
と確認するのですが

「大丈夫あとで渡してもらえることに
なってるから。心配いらないよ」
という感じなので
単なる司法書士として発言できるのは
ここまでです。

全く問題のない事例だとしたら
これ以上失礼な憶測をすることは
控える必要があります

その区別をするのは困難なので、一応
当方としてできることは

注意義務を尽くして、さらに
売主様への注意喚起はしました
というあたりまでです。

 

ですがこのようなときは
いずれであっても業者さんと売主の間に
わりと強固な信頼関係が
構築されていることがほとんどです。
もう30年も付き合っているとか。
幼馴染であるとか。

 

 

そもそも本当に怪しいとき

 

本当に怪しいというか、詐欺もどき
という案件であれば

司法書士を介入させずに
行われるものです

曰く

  • 司法書士代金は高い
    (ウチで登記やってあげます)
  • 司法書士はうるさいことを言って
    やってくれない(高齢者等の意思確認が
    微妙なとき)
  • 司法書士に頼まなくても登記は簡単
    わざわざ高い費用を払うことはない
    (自分でできますよ)
  • 司法書士に頼むと
    ああでもないこうでもないと
    時間ばかりかかってらちがあかない
    (ウチでやれるからすぐ済む)

 

不動産の取引に全く不案内な
買主売主であると
こうした業者の甘いささやきに
手もなく乗せられてしまいます

実際に、司法書士上がりの業者さんも
いるというハナシで
登記も自分のところでやってしまう
ということはありますが、それなら
登記に関しては問題はない
(登記はきちんと完了する)わけです。

 

私もここだけ聞いたら
そんな暴利をむさぼる勿体付けた
司法書士になんか頼まなくても
そうよね登記は自分でできるもん!
と、勘違いしかねません

 

たまに、そうした甘言にも関わらず
「何かあると困るからやっぱり登記は
司法書士に頼みたい」
という
ご希望のある方がおいでになるので

こうしたとき、怪しげな案件にも関わらず
司法書士にお呼びがかかるわけです

 

物件に隠れた瑕疵があって
それを知っていながらあえて売却する
などというハナシについては

契約締結上の問題なので
ここでは除外します

それを私たちに期待する当事者の方もおいでですが
司法書士には現場を確認する義務はないと
思われます

申し訳ないですが、ご了承ください