協議に失敗したら・・

遺産分割協議に署名をもらうにあたって

礼を尽くして丁寧にお願いしたり
事情を説明するなどの手間を省いて

いきなり司法書士から協議書を送らせた結果
けんもほろろに断られたとしたら

もう、話し合いは

圧倒的に不利な状況です

 

実際に、直送した結果、残念ながら
玉砕したケースは
ゼロではありません

 

このあと、手続きを進めるのであれば

 

ご自身が
すでに相手方の心証を
甚だしく害してしまっている
(傷つけてしまっている)ということを
念頭においてください

 

こうなってしまったら、できることは
まずはともかく謝って
お願いすることです

 

 

出向いて平身低頭お願いする

 

目的は、状況を説明して
協議内容に
同意してもらうことです

そのためには、先方にまずは
平身低頭お詫びをすることが先決です。

協議の内容に入るのは、幾分かでも
先方の気持ちが和らいでから
ということになります

怒り心頭に発している状況では
何を言っても同意してもらえる見込みは
ありません

火に油を注ぐようなものです

 

そうしてようやく、多少なりとも
本題に入る準備が整ったら

遺産の総額を書面で示してから
話を進めます

そのうえで

納得してもらえる協議案を
提示しなければなりません

 

パターン1 
法定持分価額で納得してもらう

恐れながら・・・
法定持分相当の金銭の支払いを提案する

 

パターン2
法定以下で、納得してもらう

大変に心苦しいのですが・・・と状況
(代償金が払えない・借財が多いなど)
くわしく説明します

本来支払うべき法定持分には満たないが
そこを何とか、それ以下で助けてもらう
勘弁してもらう

などです

パターン3
代償金なしで、何とか納得してもらう

唯一の相続財産が
被相続人名義の土地建物であって
そこに配偶者が住んでいる
(住み続けたい)
しかし、現預金はほとんどない

このような場合です

代償金なしで
配偶者名義にするという内容の協議です

 

日頃親しくしていた人であっても
こうした状況であってさえ
自己の法定相続分を主張して
譲らない人もいるくらいなので

そもそもただで(代償金を支払わずに)
すべての遺産を相続しようというのは

心情としてはわかりますし
事情もわかりますが
特に現代においては、難しいこと
この上ないです

しかも、一度、
何の説明もせずに
司法書士から書類を送り付けた、という
過去があれば

問題はさらに複雑というか
簡単には済まない状況にあるわけです

なかなか合意には至らないかもですが
すでに 相手の方に対しては
非常な無礼を働いてしまっていることを
くれぐれも忘れないようにしましょう

後悔先に立たずと言われるように
よほどのことをしないと
この失敗を挽回するのは
難しいかもしれません

 

ひとりだけが相続する

 

自分が家の跡継ぎなのだから
全てを独り占めにできるという考えは

現代の法律はそのようには
決められてはいないので

残念ながら時代遅れというよりは
法律違反です
相続人全員が同意しているのであれば
全然問題ありません

 

なので、このようなタイプの方は

兄弟姉妹が各自の取り分
(法定相続持ち分)を主張し始めると

驚天動地、世界がひっくり返ったように
驚きますが

そんなことは
今や通用しないということなのです

 

 

家を継いだ(家制度・家督相続制度の名残で)
という意識の強い人(長男など)は

よそに嫁いだ(よそに養子に出た)
兄弟姉妹にまで相続分があることが
納得できていないようです。

もちろん法律としては理解していますが
全然納得できていないのです

 

仕方ないです。諦めましょう。
法律でそのように決められているので。

私こそが跡取りだぞ!
という意識のままで話し合いをしても
結局物別れに終わることは
けっこう多いです

遺産分割協議、というくらいなので
協議がまとまらなければ
相続登記どころではありません

 

ではどうするか

 

弁護士に相談に行っても

弁護士はまず
法定相続分程度の金銭は支払う必要がある
と道理を説くのではないでしょうか

それでうまくいかなかったときは
おそらく、家庭裁判所に
調停を申し立てます

そうすると

相続人全員が裁判所に呼ばれて
言い分を聞いてもらうことになるわけですが

結局そこでも話がまとまらなければ

諦めて調停を取り下げて
またしばらく皆の気持ちが変わるのを待つ

または

調停不成立からの審判へ移行して
裁判所の判断が下されるのを待つ

 

ほとんどはそのようなかたちで
終焉を迎えることになります

 

ここでご注意いただきたいのは

裁判所の判断は、特に事情がなければ

基本
法定相続分が原則だということです

特別な事情

特別な事情というのは
それはたとえば

一人だけ、結婚の際に
多額の贈与を受けている、とか

一人だけ海外留学を
2年もさせてもらっていたとか

という特別受益に該当する事情

 

または

ずっと、大学進学も諦めて
家業を手伝ってきた

というような寄与分の主張がある
などの場合です。

こうした場合は、いずれも
利益をうける側が
それを主張する必要がありますが

裁判所が認めれば

法定相続分を越えて相続できる
という判断が示されることになります