全員が相続放棄したら?

もしも相続権のある人が全員
相続放棄してしまったとしたら

空家はどうなる?
どうすればいい?

もしも何かあったら
誰が責任をとるの?

 

推定相続人全員が放棄したら
普通に考えてその財産を引き継ぐ人は
いないということになります

 

ですが、だからといって
それをそのままにしておいても
大丈夫ですか?

特別な法律とか、ありますか?

 

という疑問はよく聞かれるところです

 

全員が放棄するということ

 

数人いた、相続順位1から順位3までの
全員および配偶者が放棄してしまったら

亡くなった方を相続する人は
この世にいない、ということになります

 

わかりやすく言うならば

 


たとえば

  • Aさん(被相続人)死亡
  • 妻あり 子どもあり
  • Aさんの父親生存
  • Aさんの姉と兄あり

    こうした家族関係においては

・死亡時点での相続人は
妻と子どものみです

・この2人が相続放棄をしたとしたら

放棄時点での相続人は
お父さんだけ です

・お父さんが放棄をしたら
姉と兄が相続人となります

・そこでこの二人も放棄したら
相続人はいない、ということに
なるわけです


姉にも兄にもそれぞれ
子どもはいますが

この人たち(被相続人から見て甥姪)は
相続権を得ることはありません

 

注 意

姉が相続放棄をしたら
その子(Aさんから見て甥姪)が
相続人になることはありません

ですが、

Aさんの死亡に姉が死亡してい
たら
姉の子には代襲相続人として
相続権があります  

 

このように推定相続人が
全員放棄してしまったら

これ以外の親戚に
相続権が移るのではないか

と勘違いなさる方もおいでですが
そんなことはありません

 

相続人の範囲はこんな風に決められています

 

相続人の範囲


(相続に関する胎児の権利能力)
民法886条
胎児は、相続については、既に
生まれたものとみなす

(子およびその代襲者等の相続権)
民法887条
被相続人の子は、相続人となる

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
民法889条
第887条の規定により相続人となるべき
者がない場合には、次に掲げる順序の
順位に従って相続人となる

1 被相続人の直系尊属
(親等の異なる者の間ではその近い者を先にする)
2 被相続人の兄弟姉妹

(配偶者の相続権)
第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる
この場合において887条889条によって
相続人となるべき者があるときは
その者と同順位とする

 

相続人の範囲について民法が定めているのは
以上の条文だけです

 

ということで

相続人の範囲は民法で定められています

その範囲内の相続人が全員いないとき
結果として
被相続人の財産を引き継ぐ人は
誰もいないということになるわけです

 

 

相続人がいないとは

相続人となるべき可能性があるとして
法律で定められている範囲の全員が

子孫なく死亡したか、または
全員が放棄したということです

少なくとも相続人がいることが
明らかではないというか
判明しないということです

 

通常は、戸籍を調査することで相続人を
探索しますが

戸籍に載らない相続人の存在を
完全には否定できないため
相続人がいることが明らかではない
というような表現になるようです

 

全員放棄の結果

 

無主の不動産は国庫に属するという
民法の条文があるので、そしたら

不動産は国のものでしょ?
その不動産の権利義務も国に移るのでは?

というわけなのですが

そこで、ご注意です

 

(無主物の帰属)
民法239条
(1項省略)
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する

 

民法上、確かに
国のものになる可能性はあるのですが

自動的に国の名義になるのではなく
それなりの手続きを踏む必要があります

私も初めてその条文を知った時は
国は大変だな、と思っていたのですが
そんなに大変な手続きをわざわざというか
いちいちやってくれるわけがありません

それなりの面倒な手続きを経て初めて
国庫に帰属します

 

相続人全員が放棄して
無主の不動産が出現したとき
ここで覚えておく必要があるのは
ふたつです

 

1 無主の不動産が原因で何かあったら
(屋根が飛んで人に怪我をさせたとか)

相続人は(放棄してしまっていても)
損害賠償請求される可能性があります

 

2 正式に国に引き取ってもらうには
時間も費用もかかります

手続きをする人がいないときは
相続人(放棄してしまっていても)から
行う必要があるかもしれません