保証人として名前だけ貸す、ということ

保証人として、名前だけ貸して、と言われました

 

名前だけでいいのなら

親戚づきあいとか、或いは、親子間で、または、ご夫婦の間で、
「ぜーったいに迷惑をかけないから名前だけ貸して」
と泣きつかれて、保証人の欄に署名捺印してしまうことが、有ります。

 

いや、私はありませんけど、世間によくありがちな展開ではあります。

 

ですが、自分の子供の身元保証はしかたないとしても、

借金の保証人になるのは、一考を要します。

 

いざとなったら、自分が替わりに返してやる、と思っているのであれば、

全然OKだと思います。

それだけの覚悟があり、資力があるのであれば、

保証人になるのに何の問題も有りません。

名前だけ貸す、はアリなのか

しかしながら、

  • 本当はなりたくないのに、
  • いざとなっても替わりに返済出来るわけもないのに、

名前だけ貸す、

ということは、非常にまずいです。

 

署名捺印をしたら、それは即、その法律行為に同意した、ということなのですね。

お金を返せなかったら、保証人はどうなるのか

 

保証契約の内容にもよりますが、殆どの場合、共通するのは、

債務者がお金を返せない場合は、保証人が代わりに全額返す。

 

もしそれができなければ、どうなるかというと、

自分の給料や、自宅、財産等を差し押さえられたり、
競売にかけられたりしてしまう。

 

ということです。

 

ですが、これではあんまりひどい、ということで、

上記の悲惨さをよくわかってない保証人を守るために、

いくつかの法改正がなされることになりました。

 

2020年4月1日から、保証人保護のために、

 

  • 債務者の経済状態を保証人に通知しなければならない、ことになりました。
    それを怠るとその保証契約が無効とされることもあります。
  • もしも事前に知らされた情報の中で見過ごしていたことがあったりした場合などは、保証契約を解除することもできる、とされました。
  • さらに、債権者には、保証人から求めがあれば債務者の弁済状況等を伝える義務が課されました

これらによって、保証人になろうとする人は、
債務者の経済状況を検討熟考してから保証するかどうかを決めることが
できるようになったわけです。

というか、そうすることを期待されての法改正なのです。

が、とかく、人は、情に流されるものです。

情に流されたいと思ってる、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 

そのようなご相談をお受けしたことがあります。

 

「名前だけだから大丈夫ですよね。」

 

最初のご相談は、開業して間もない頃だったので、ソフトに

「できれば、やめておいた方がいいです。」

とお答えしました。

でも、どう考えても、それだと言葉にインパクトが無い分、
不幸な人を増やしてしまいかねない、と思ったので、
次に同様のご相談があったときからは、

何かあったときに、名前だけ、で許されることは絶対にありません

絶対にやめた方がいいです。

と、きっぱりとお答えすることにしています。

 

こんなふうに怖いハナシが

 

お礼の電話を戴いたこともあります。

 

「あのとき名前を書くだけでいいからと言われて、もしも保証人になっていたらと思うと、ぞっとします。とめてくれて、ありがとう」

という内容でした。

保証を求めてこられた方は、借財を残して、失踪したとのことです。

 

法律行為の中に、名前を貸す、ということはあり得ません。

 

かつては、保証人の欄に勝手に他人の署名捺印をしてしまう、ということがあり、いつの間にか連帯保証人にされたり、それが元で、自己破産にまで追いつめられたり、ということが有りました。

今は、金融機関や金融業者には
「丁寧な本人確認及び意思確認」が要求されているので、
さすがに一昔前のように本人の知らない間に保証人にされていた、
ということはないと思います。

 

さらに、法改正によって、事業用の資金の保証には公正証書の作成が義務付けられることにもなりました。(これも2020年4月1日からの実施です)

 

もっと怖いハナシが

 

ですが、保証人になることの危険性を、
まだよくご存知ない方がいるのではないでしょうか。

 

保証債務は相続の対象になるのです。

 

親が保証債務を残したまま死亡したら、

相続放棄をしない限り、相続人にその債務は引き継がれてしまいます。

親の負った保証人としての責任を、相続させられてしまうことになるのです

挙げ句、保証債務のために自己破産という選択をする方は多いです。

 

保証の判子を求められたら、

一歩下がって、自分に聞いてみて下さい。

 

この借金、肩代わりできますか。