仲良く分けてねという遺言

仲良くみんなで分けてねという遺言書

 

遺言書発見したら、
とりあえずは開封しないで戸籍といっしょに家庭裁判所に提出するらしいよ?

というような話を聞いたことがありますか

自筆遺言書は、
家庭裁判所で検認をうけなければ、
執行(遺言書のとおりに不動産の名義を変えたり預貯金をおろしたりすること)ができません。

そして、封をされている遺言書は、
勝手に開封すると過料(罰金)が課されます

 

遺言書の検認

 

検認手続きは、家庭裁判所で行われます

検認が済むと、裁判所が
検認済み証明書を作成し、遺言書に合鐵されます

それをもって不動産の名義を変えたり
預貯金をおろしたりするわけです

ただし、それは内容が
遺言書として問題がなければ、の話であって

いかに、検認をうけても、
内容的に遺言として適さないものは、
執行することができません。

 

たとえば、

  • モノがはっきり特定できない
  • 遺贈先がはっきり特定できない
  • 相続させるのか、管理だけを委任するのか明確な意思が不明など。

 

だから検認手続きの前に、一応、中身が
どのようなものかを知っておきたいのは
当たり前というか、人情です

ちなみに、

・遺言書は封筒に入ってなくても大丈夫です

・封筒に入れただけで封をしてないからといって
無効にされることはないです

・便せんにさらっと1枚。マジックで
書いただけのものも立派な遺言書です

ただ、封がしていないと、偽造変造がされる可能性を否定できません。

一方、
封筒に入れてぴったり封をしてしまうと、
事前に内容をしらされていない人が発見したとしたら。

あけてびっくり!

遺言書と思えば、実のあることは何も書かれてないという事態になることも。
(通常、みんなで分けてね。のタイプはあまりないと思いますが)

 

(遺言書の検認)
民法第1004条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

2 上記の規定は、公正証書による遺言については、適用しない

3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができない

 

(過料)
民法第1005条
前条(第1004条)の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外において、その開封をした者は、5万円以下の過料に処する

 

この検認手続きで、一番面倒なのが、戸籍の収集でしょう

相続人全員の戸籍を集める必要があるので、少々手間取るかもしれません。

たとえば父が亡くなり、相続人が母と未婚の子だけであれば、集める戸籍は基本、ほんの数通で事足ります

しかし、夫死亡、妻あり。子供がいない相続のときは、相続権は、亡くなった方の兄弟に移るのでこの方たち全員の戸籍が必要です

そうした場合は、戸籍はおそらく、本人たちに依頼しなければ取得することができません
妻からの取得申請も委任状があれば、可能ですが、まあ、このあたりが面倒なところです
(司法書士や弁護士は、依頼をうけて、これらの戸籍収集ができます)

 

というように、大変な思いをして検認期日を迎え、相続人全員で家庭裁判所の一室へ検認のために集合です

で、開封ののち、本文をあらためてみれば、

なんと

「私の遺産は、家族みんなで仲良くわけてください」

としか、書かれていない

という小噺のようなことが実際にあるようです。

おそらく、誰にも相談しないで、
遺言書をお書きになったのでしょう。

 

ただし、この遺言は無効ではありません。

ですが、残念ながら、無効ではありませんが
この遺言に基づいてできる遺言執行行為は何もありません

だって、何も書いてないのですもの。

 

遺言書あれこれ

 

遺言書は、どのような遺産があるにしても、

・不動産は、誰に相続させる

とか

・預貯金は、A銀行の口座の預金はすべてBに相続させる

・株券はすべてCに相続させる等々、

誰に何を遺すのか、そこを明らかにしてするものです

 

遺言書は財産をめぐっての死後の争いを避けるために書かれることがほとんどなのです。

それなのに、

みんなで分けてね、というのは、
あまりに無責任と思いましたね、一瞬。

でも、それはつまり、

死後の争いの可能性が全くない、と
信じているわけですから、
ものすごいことではあります

独りよがりという意見はあります

 

ほとんどの場合の分割協議は、
特段の争いもなく、仲良く分けるというか(そうせざるを得ない状況だったりも含めて)さほどの問題もなく、終わることが多いものです。
でも、100パーセントではありません。

生前、仲のよかった家族であっても、
大黒柱のご逝去とともに、それこそ
柱を失った家屋のように、皆の心がバラバラになることがあります

亡くなるまで表に出なかっただけかもしれませんが、大黒柱はそれだけの抑止力をもっていた、ということです

 

それを含めての、
「仲良く分けてね。」

何も書かれていないと思いきや
家族に対する絶大な信頼と大いなる感謝がそこには、記されているのです。

 

でも。

 

どうしますか

 

遺言書にそのように書かれていたら。

 

(ま、どうしようもないですけど)

 

 

 

それはそれとして、

通常の体裁で作成された遺言書(たとえば、全てを長男の○○に相続させる的な)に検認をうけたとしても、その遺言書がすべてというわけではありません

 

遺言書には必ず従うべきなのか

 

必ずしも遺言書のとおりにしなければならないのか、といったら

そんなことはありません。
大きく2つの例外があります

 

1 遺留分を無視して書かれていたら、侵害された額相当の請求をすることができます

2 相続人全員が合意すれば、遺言書とは全く異なる分割をすることが可能です

遺言書が公正証書だったとしても同じです

 

言わば、遺言書の存在を無視することになるので、遺言者(遺言した人)の遺志は果たされないことになりますが、
残された人たちの気持ちや暮らしの方が大事です。

そして、それこそが、
遺言者の本当の望みであったことは間違いないと思われます。
たぶん。

 

遺言書を発見しなかったことにする

 

遺言書を発見した人は、それを開封してみて
自分に不利だったとしても、
発見しなかったことにしてはいけません。

言うまでもなく、それは、犯罪です。

 

(相続人の欠格事由)
民法891条
次に掲げるものは相続人となることができない
5 相続人関する被相続人の遺言書を
偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

 

「みんなで仲良く分けてね。」

実際にこのような遺言書があったら、
私見ですが、
故人の遺志をできるだけ尊重するのがよいですね。

この遺言のキモは、分けてね、ではなく、

みんなで仲良くという部分にあると思われます。

仲良く相談をして、
仲良く分けることができると最高です

 

それは単なる理想だという意見があります
目の前の現実を見るべき、という意見も尊重します
そう、答えはいつも
風の中。