仮登記での売買
仮登記での売買
農地を売買したい、というご相談が
あります
まず、一番大事なことは
農地(田・畑など)は
農業委員会が発行する、
農地を移転することの許可証がないと
登記の名義を移転することが
できないということです
許可証は
農地法第〇条により
所有者○○○から買主〇○○へ
所有権を移転することを許可する
というようなものです
相続や時効による取得など
許可のいらないものもあります
また、市街化区域などで
農業委員会の許可ではなく
簡単な届出で済む農地もあります
農業委員会から許可証を得るためには
時間も手間もかかります
なので、今すぐにも
残金決済をしてしまいたい、というときは
(売買代金を支払ってしまえば何となく
安心するからだと思います)
「では、ここはまず仮登記
(所有権移転請求権仮登記)をつけて
おいたらどうですか。
仮登記をつけとけば安心なので
それで決済してみては?」
というアドバイスが業者さんからされる
という流れになることがあります
仮登記をつけておけば絶対に安心というわけでは
ありません! ご注意ください
ただ、絶対安心ではないにしろ
何も権利をつけないで
代金だけを支払うことに比べたら
全然よいです
どうしても今
代金全額を支払っておきたい
という方にはわりと遭遇します
そのような時は、一応止めますが
どうしてもというのであれば
仮登記(請求権です 登記原因は
売買予約ということになります)
または
抵当権をつけておくことが次善の策
となります
もくじ
仮登記(所有権移転請求権仮登記)とは
仮登記はあくまで、仮の登記であって
順位保全効果しかありません
仮登記をつけたとしても
真の所有者(というか登記簿上の所有者)
は依然として以前のままです
毎年課せられる固定資産税の請求先は
以前のままの所有者です。
仮登記を付けた人に
何かしらの税金(固定資産税・不動産取得税)が
かかってくることはありません。
所有権が移転しているわけでは
ないからです
農地でなくても山林や宅地であっても
仮登記がされることはあります
農地だけの登記ではありません
仮登記を売買することも可能
農地については、わりとよく見かけるのが
すでにつけられている仮登記を売買する
というものです
所有者A
仮登記権者B
新しく仮登記を買う人D
だとすると
所有者Aの意思は全く関係なく
Bは自分のもつ仮登記された権利
(多くは所有権移転請求権)を
Dに売却することができます
ですがあくまで、Dさんは
仮登記を買っただけです
ここをお忘れなく。
依然として、登記上の所有者は
Aさんのままです
仮登記、いつ本登記になるのか
ときどき、問い合わせがあります
「この仮登記はいつになったら
本登記されますか」というものです
「本所有権になるまであと何年
かかりますか」というものもあります
仮登記の売買時におそらく
仲介業者なり、司法書士が
説明しているはずなのですが、そこは
不動産売買の素人さんの悲しいところで
それが意味するのが
実際にどういうことなのかを
理解できる人ばかりではありません
- 仮登記は、何かしらのアクションを
起こさない限りそのまま仮登記です - 仮登記は、5年(または10年)
そのままで放っておくと時効で
消滅してしまうものです
登記記録上は、職権で抹消が
されることはないので
そのまま残ります - 仮登記は、自動的に
(又は登記官の職権で)
本登記になるということは絶対に
ありません
本登記にしたい
仮登記を本登記にするときは
(仮登記を設定した時の)所有者の
印鑑証明書と権利証等が必要です。
さらに、仮登記を設定した以後、所有権が
売買等によって移転していたとしたら
その新所有者の承諾書(印鑑証明書付き)
もいります
(この新所有者の権利は職権で抹消されるのですが
それについての承諾が必要です)
農地であれば
まず農業委員会の許可を得てから
当事者間で本登記(仮登記の本登記)を
することになります
「仮登記で買ってもう15年になるが
一体いつ、本登記になるのか(怒)」
このように怒られても困ります
当事者(特に仮登記を買った人)が
その気で行動を起こさない限り
いつまでたってもそのままです
それどころか、請求権は
5年で時効消滅ですから
仮登記抹消の裁判を起こされたら
ほとんど負けます。
勝ち目はあまりありません
時効の完成猶予事由や更新事由が
あるときを除きます
すなわち催告・協議合意・承認など
ちなみに、5年とされたのは
2020年4月1日からです。その前は
10年で時効消滅でした
早目にアクションを起こさないと
仮登記で買った人から
本登記を望むことが多いですが
事情はいろいろです
売却した所有者側から
「もう売れたと思っているのに、毎年
固定資産税がかかってきて迷惑だし面倒だ。
一日も早く本登記をしてほしい」との
要望が出されることもあります
仮登記した側も
同じ思いでいてくれれば
双方で許可の申請をすればよいだけなので
問題はほぼないのですが。
そうもいかないのが世の習い。。。
まれに転用がからむと、許可が下りない
こともあります
ともかく時の経過とともに諸事情は
変わっていくので
うかうかしていられません
たとえば、仮登記を付けた側も
購入時のような情熱を失ってしまい
(年齢を重ねるとともに、田舎で畑をやるというような
壮大な夢を放棄せざるを得ないこともあり)仮登記は
無かったことにしたい
抹消してもらいたいと
お思いになる方もおいでです
さらに両者に共通する近頃の事情として
いわば終活の一環でしょうが
相続人たちからいらない土地(仮登記)を
遺されても困るので
抹消するように言われている
というものです
所有者は本登記して権利を手放したい
と思い、
仮登記権者は抹消して
仮登記の権利を手放したい
ということです
「使わない土地を遺されても困る!と
子どもから言われているから。」
そうなると、権利の押し付け合いです
話し合いがまとまらなければ
へたをすると訴訟に持ち込まれることに
なります
仮登記がついていても
ところで仮登記がついていても
所有権の移転はできます
農地であれば
所有者Aと新しい買主Cさん間の
所有権移転についての農業委員会の許可が
おりていれば
Bさんの仮登記がついていても
AさんからCさんへの所有権移転は
普通に可能です
農地でなければさらに簡単で
許可書がいるわけではないので
そのままAさんからCさんへの
所有権移転ができます。
Bさんの仮登記はついたままで。
で、将来
このような場合どうなるかというと
- 仮登記が抹消されたとしたら
Cさんへの所有権はそのまま大丈夫です
なんら問題になるようなことは
ありません - ところが、仮登記を本登記にする際は
Cさんの所有権は
職権で抹消されることになるので - Cさんの承諾書が必要となります
これは
仮登記の順位保全効果が生きる場面で
Bさんの仮登記の順位に
Cさんの所有権は対抗できないからです
おまとめ
仮登記を理解することは
けっこう難しいです
私がわかっている範囲でまとめると
- 本登記しない限り、所有者には
なれない - 固定資産税は所有者に
支払い義務がある - そのままほおっておくと
5年の消滅時効にかかる - 本登記する際は
当時の所有者の協力がいる - 農地であれば、許可証が必要
といったところでしょうか
遺産相続 生前贈与など
不動産登記のことは
どうぞお気軽にご相談ください
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。