ハンコだけ、くれ!(相続)
協議書ここにあるから
ハンコだけくれ!実印で!
などと
自分以外の相続人を恫喝するような人が
たまにいます。
ご本人は特に
脅迫しているつもりはないのでしょうが
内容が内容な上、話し方が高圧的なので
そばで聞いていると、まるで
映画の暴力シーンの一歩手前を
見せられているような気になります
遺産分割協議書
相続登記の際に必要とされるのが
遺産分割協議書ですが、ここには
原則として相続権のある人全員の
署名捺印(印鑑証明書つき)が必要です
言うまでもありませんが
内容に同意してもらうことが大前提です
本人の知らない間にハンコだけ押したり
勝手に代筆(これは代筆ではなく、偽造ですが)
してしまったりなどは、いけません
仮にこのままで登記が完了したとしても
(登記官には実体上の調査権限はないので
書類さえそろっていればそのまま完了します)
非常にマズイです
同意していない相続人から、後日
無効の訴えを起こされる可能性があります
よくお問い合わせをいただくのですが
サインする人が高齢な場合または
病気で手が不自由な場合に、
誰かが代筆しても大丈夫ですか?
あとで問題になりませんか?
というものです
代筆ならば、問題ありません
ですが
ご本人の同意がないのに
勝手にハンコを押したり
勝手に代筆(これは代筆とは言いません)するのは
ダメです。
これは私文書偽造という犯罪です
高齢の母親のためにさらさら気軽に
書いてしまう、などは
いかにもありそうな問題のなさそうな
ハナシではありますが
ご本人の同意なしでこれをしてしまったら
私文書偽造に該当します
これは懲役刑のあるけっこう重大な犯罪です
(私文書偽造等)
刑法159条
行使の目的で、他人の印章もしくは署名を
使用して、権利、義務もしくは事実証明に
関する文書を偽造した者は、3か月以上
5年以下の懲役に処する
つまり
代筆ならば問題ありません。
勝手に書くのは絶対にダメです
ついでに言うと
判断力が衰えている人の「全部任せる」
という言葉を信用(?)して
勝手に署名捺印するのもマズイです
判断力の衰えた人が後日能力を回復して
こんなハンコを押した覚えはないぞ
という訴えを起こすことは
あまり考えられません
訴えを起こす可能性があるのは
その相続によって
利益を得られなかった他の相続人
または
相続債権者です
一方、協議書が不要な場合もあります
協議書がいらない場合
- 相続人がひとりだけ
(協議の必要がない) - 相続放棄した人は不要
(相続人ではないので) - 特別受益証明書(印鑑証明書付き)
がある人は不要
ハンコをもらう時には
遺産分割協議書に
ハンコをもらうにあたっては
相手の方から、遺産を開示するように
求められることが一般的です
具体的には
不動産等の資産証明書
預貯金の残高証明など
被相続人がどれほどの財産を
所有していたかがわからないのに
全部を相続人Aに相続させる
などという協議書に
同意するのは難しいからです
細かいハナシですが
全遺産合計が80万位であれば
全部譲渡放棄してもよいけれど
これがもしも遺産が1億円位あるならば
少しは欲しいかな、ということです
ですが一方
全部がどれほどであっても(1億でも2億でも)
本当に
Aが相続することに異論はない、ときは
もちろん同意しても大丈夫です
何の問題もありません
土地の評価が安い
遺産はほぼ土地だけ、という相続のとき
特に田舎の不動産は
都会とは評価額の桁が違います
しかも、多くの場合は
遺産が、住んでいる家と
周りの農地だけだったりするので
ハナシさえきちんと通せば
快くハンコは貰えたであろうケースも
よくあります
事情によっては、
法定持ち分を主張する方もいます
それなのに
いきなり、「全部放棄する」という
遺産分割協議書にサインするように
迫られたら
それは納得できないのも
当然ではないでしょうか
放棄譲渡をすることは問題ないにしても
いきなりこれはないのでは?
という反応は多いものです
オレ様が相続する
いくらなんでも非常識だと思うのですが
「全部をオレが相続して当然」と
思い込んでいる人は、わりと見かけるので
これをやってしまうと
まとまるものもまとまりません。
いきなり
全部よこせ、と言っているのと
いっしょなので
これは非常識の誹りを逃れることは
できません
事情さえ分かれば
きちんとお願いすれば
快くハンコを押してくれる人は
けっして少なくはありません
丁寧にお願いする
きちんと礼を尽くして丁寧に
お願いするというのは
まずは
丁寧なお手紙を書いて事情を説明して
日を改めて、挨拶のために訪問し
感触が良ければ
再度書類をもらうために訪問する
という感じです。
いきなり
初対面の家に押しかけて
ハンコを要求するのは
ちょっと
問題行動かと思われます
礼を尽くすことによって
傷を負うこともあります
遠方に住んでいて
会ったこともない配偶者の兄弟姉妹に
何人分かの直筆の手紙を書いて
腱鞘炎になった方がおいでです
これはいくら何でもお気の毒だったと
思いますが
ここまでではなくても、直接会えないときは
まず、ご自身で手紙を書くのがよいです
できれば、印刷したものではなく
直筆の便りをお書きになることをお勧めします
そんな効率の悪いことをするのはイヤ
面倒!無意味!というご意見も
あるでしょうが
実際こうしたときは頼りになるものです
千葉県茂原市の司法書士・行政書士です。お客様の、本音のニーズに応えられるような仕事を展開したいと思っています。 ご実家の土地の相続登記が終わってない、ローンを完済しているのにその登記を行っていない、昔、親が買った隣の土地の名義を変えてない、という状況の方は、お気軽にご相談ください。司法書士経験20年超のプロが、問題を解決いたします。お問い合わせは全国対応の片岡えり子事務所までどうぞ。女性スタッフによる丁寧な説明ときめ細やかな対応に定評があります。