カンタンではない?抹消

カンタンではない、抹消登記

 

住宅ローンの返済が完了して、銀行から抹消書類一式が郵送されてきたら、即、抵当権抹消登記をしたいものです

 

・金融機関から送付されてくる一式

そこには、抵当権抹消に必要な書類一式と住宅ローンを組んだときの金銭消費貸借契約書や、火災保険質権設定に関する書類などが入っています

そして、その封筒には、このような文書が同封されています

 

1 司法書士にこのまま書類を渡して抹消手続きをしてね

  時間が経過するとこの書類では難しくなるから、早くやって

 

2 自分で登記することも可能。そのときは管轄の法務局はここなので(法務局の地図が入っている)疑問点は法務局に確認のこと。ただし、早めに手続きをしてね。

 

などと書かれています

 

受領したばかり(ここがけっこう重要)の抹消書類一式であれば、次の点をクリアしていれば、実際カンタンにできます

 

1 不動産所有者の住所氏名が登記簿のまま変更がない

2 借りたときの金融機関と現在の金融機関が同じ商号で同じ本店所在地

  もしも変更されていたとしても、合併などをしていない

  または、すでに合併の登記がされている

3 解除証書(弁済をうけました。とか、抵当権を解除しますと書いてあるもの)が白紙でなく、物件、日付、等が全部書かれている

4 設定したときの登記済証、または登記識別情報通知が添付されている

 

これらが問題ありだと、カンタンではありません。

状況によっては多少難度が上がるだけで、腕に覚えがある人であれば、なんということもない、ということもあるでしょう

しかし、一人でできるもん!というノリで初めてセルフ登記をしてみる人にとっては、少々ハードルが高いことを覚悟してください

 

カンタンな場合とは言っても、最低限の作業は必要です

勘違いしている方が多い印象ですが
銀行から来た書類をそのまま法務局に持参すれば、それで手続きが済むというわけではありません。
それなら司法書士に依頼するまでもないです

登記申請書を作らなければなりません

 

これは

  • 私(住所氏名)は
  • このような土地建物(どこの何番地面積は何㎡)について、
  • こういう事情(何月何日弁済など)で
  • この(年月日受付第何号)抵当権を
    抹消できることになったので、
  • 登記抹消してほしい(管轄法務局の表示が必要)

ということを決められた様式に従って作成するものです

 

・手書きで大丈夫です

・用紙はA4のコピー用紙が一般的ですが、和紙でも更紙でも。または登記所の窓口で無料でもらえるようなのでもちろんそれを使用することもできます。

または、インターネットで、書式を取り出せるので、お好きな紙にプリントしてください

・シャチハタスタンプではない、ハンコが必要になります

実印(役所に登録した印鑑)である必要はありません

・あとは、鉛筆ではダメなので、ボールペンがあれば、大丈夫。(万年筆でもガラスペンでも)
そして情熱を少しと。

 

というような具合で、実際に、以前、法務局の登記相談が今よりも丁寧で手取り足取り教えてもらえていた頃は、かなりの人がご自身で手続きをなさったようです

その気になれば、インターネットで懇切丁寧な説明が読めるので、カンタンな抹消であれば、問題ないかと思います

そもそも抹消するわけですから、登記簿からその登記が抹消されてしまえばそれでよいわけです。その申請書の書き方が多少どうであったとしても、将来、問題が生じる恐れは皆無だと思います

 

難度の高い抹消登記はこれ!

 

ただ、カンタンには済まない抵当権抹消というものがあって、それだと、本職の司法書士であっても、お手上げに近いこともあります

ほとんどは、あきらめずにがんばります
でも努力が必ず報われるわけではありません

 

たとえば、5年くらい前に銀行が設定した抵当権を
昨日受領した抹消書類一式で抹消するのはカンタンです

ところが、50年前に設定した抵当権を30年前に弁済したという抹消をこのほど登記するというのはかなり難しいです

まさかこれをご自身で抹消するという猛者はあまりいないと思いますが、

これを難度が高い、と判断できるのは、やはりプロであるからこそ、かもしれません。

このような方が法務局相談窓口に相談に行くと、まず、司法書士に任せた方がいいです、とアドバイスされるようですが、それでも
いや私がどーしても絶対にやるのだ、とがんばる人はおいでです

その気持ちはわかりますし、妨害する気もありませんが、一言でいって、
それは無理というものです

毎日登記にかかわっている私たち司法書士であっても、頭を抱える案件というものが存在します。判例や先例をあたり、分厚い参考書を何冊も調べ、法務局と何度も折衝を重ね、それでもどうにもならない、ということさえないわけではないのです

 

大概、協議の結果、落としどころを見つけて抹消登記をすることが可能です。

確かに、弁済の終わっていることが確実なものなら、抹消したからといって後日問題が発生することはないでしょう

しかし、

状況証拠(いまだに競売を申し立てられていない、いずれにしてもとっくに時効消滅してるなど)だけでは、万が一ということがあるわけなので、

無理やり力づくで抹消してしまえ、というわけにはいきません

 

抵当権がついたままだとマズイ理由

 

抵当権とは、返済の約束が守られなかったときに、その不動産を競売することによって返済に代えるというものです。お金を返せなかったら、代わりに不動産を差し上げますということですね。(余剰が出れば、もちろん返却されます)

つまり、抵当権がなぜ問題なのかと言えば、競売されて所有権を失う恐れがあるからです

とっくに返済の終わった抵当権であっても、たとえば、自宅土地建物にそのような抵当権がついていたら、あまり気分がよいものではないです

しかし、登記簿を見ない限りそれはわからないことですし、また、誰かに売却するとか、贈与するとかいうことがなければ、通常それが問題になることはありません。

また、返済をしたかどうかわからない古い抵当権がつけられていたという場合であっても数十年が経過していれば、時効消滅しているので、ほとんどの場合は競売にかかる心配もないわけです

 

そこを担保にお金を借りるとしたら

 

ただし、抵当権登記が抹消されていない不動産を担保にお金を借りるときは、多くの場合は、銀行は難色を示すことと思われます。
念のため。ということでしょう。

なにしろ、一番先頭についた抵当権の権利が最優先で、一番強いのです。

つまり、その不動産が競売にされて落札価格が1000万円だったとしたら、

順位1番の抵当権者に1000万円の権利があったら、
2番の抵当権者は、一円も弁済を受けられない、というわけです。

だから、金融機関からは、弁済が終わっているとかには全く関わりなく、
登記簿上の抵当権抹消をすることを求められます

 

 

ここで、朗報です

 

不動産登記法の改正によって

このような古い抵当権について、より簡便な抹消方法が新設されました

 

これまでも休眠担保権の抹消の特例として

  • 抵当権者が行方不明で、
  • 弁済期から20年を経過している抵当権等については、
  • 返済すべき金員全額を供託することによって
  • 所有者からの単独申請で、

抵当権を抹消できるという方法がありました

明治時代などの抵当権であれば、債権額は10円とかです

そうすると、供託額も100円~どんなに高くても1万円足らずで済むので、なんということもないわけですが、

これが昭和50年につけられた債権額300万円の抵当権となると、供託すべき金額はかなりのものになることが予想されます ほとんど現実的なものとは言えない金額でしょう

計算しました元金300万円利息損害金5パーセントで計算すると50年分として
なんと1050万円。。。これを供託するのは少し大変かも。。。

 

ということで、まだ施行前(たぶん令和5年4月1日施行)ではありますが、
(新不動産登記法第70条の2)

 

  • 解散した法人の担保権であって、
  • 清算人の所在が判明しないとき
  • 法人解散後30年を経過し、かつ
  • その債権の弁済期から30年を経過したときは、

 

供託することなしに、

土地所有者が単独で

抹消登記をすることができる

 

というものです(詳細は未定です)

 

 

カンタンではない抵当権の抹消に挫折した方も
そうでない方も、

どうぞお気軽にご相談ください
登記手続きの代理をいたします

なお、
ご自身で手続きをなさる方は、当方ではなく
管轄法務局に直接お問い合わせください