地面師と闘うのだ その2

地面師と闘うのだ その傾向と対策

まず、傾向について。

 

ホンモノの事件に遭遇したことがないので
あくまで
第三者として見聞きした範囲に過ぎませんが

 

事件に発展しそうな取引には
共通した雰囲気があります

地面師が介在していてもいなくても
同様です

(怪しげな)ハナシのあった時点で
回避できれば
犯罪に巻き込まれずに済みます

 

もしもこのような詐欺というか
犯罪的な匂いのする依頼があったときは
司法書士はいくら何でも
「怪しそうだからお引き受けできません」
とは言えないので

多忙とか何とか適当な理由をつけて
断ることになります

私も何回かお断りしたことはあります。
でもそれが実際に犯罪だったかどうかは
わかりません。

犯罪だとわかった時は、もう手遅れです。

 

ただ、危ないかも、と思ったとしても
○○銀行支店長さんの紹介、とか
○市長(県会議員、どこかの会社の社長)
直々の紹介などだったりすると

直感が
「危ない、やめた方がいい」
告げていたとしても

そうした仕事を断るには
かなりエネルギーが必要です

 

特に、お世話になった方からの紹介だと

目に見える重大な懸念があれば
その旨ご説明してお断りできますが

何となく胡散臭いだけ、では
お断りするのは人情として
かなり抵抗があるものです

ですが抵抗があっても
どう考えても怪しい取引
というものはあって

私では力量が不足していると
感じられるものについては

「難易度が高すぎて、当方では力不足です」
とお断りできます

 

難易度の高い案件というのは

  • 物件数があまりにも多い
  • 決済まで時間の余裕がない
  • 決済場所または物件が遠方である
  • 売主の人数が多い
  • 抵当権や差押えがいくつもついていて
    抹消書類を決済日中に
    回収できる見込みがない
     

などです

田舎なので
まさか地面師というのは
活躍の余地はないと思っていますが

他の不動産詐欺に巻き込まれる可能性は
どこにでも
常に
あります

 

なりすまし(代役)

かつて、怖い事件がありました

司法書士が
高齢者である地主の自宅にまで
本人意思確認に行き、実際そこで
本人の意思確認をしたにも関わらず

それは身代わりというか
本人になりすました第三者であって

さらに後日
本人は殺害されていたことが判明

というようなとんでもない不動産犯罪です

どうしてこんなことが起こったのでしょうか

 

 

そもそも通常の取引というか決済は
銀行か不動産業者か司法書士事務所などで

当事者全員が顔を合わせて行われることが
ほとんどです

その方が話が分かりやすく
間違いも起こりにくいし
諸事万端、その取引にまつわる全てを
一度で完了させることができるからです

 

本人自宅での意思確認

ですが稀に売主が高齢のため現地に来れない
とか
都合が悪いとか、特段の事情があるときは

事前に、司法書士が
売主の自宅にお邪魔することになります

 

そこで書類等を預かりがてら
売却および登記意思を確認するわけですが

そのような事情のある高齢者は
ほとんどの場合
写真付きの身分証明書を
持ち合わせていません。

近年では個人番号カード(マイナンバーカード)を
お持ちの方が増えてきましたが。

やはり写真のない身分証明書は
身分証明書とは言えないのでは?と
思わざるを得ません

 

写真があっても

写真があったとしても

あまり似ていなかったり
髪型が変わっていたり
同一人に見えないこともあります。

女の人に対しては
それを指摘することは控えますが

ともかく写真があまりにも似ていないときの
私の気持ちをご想像ください

しかしいずれにしても
ご本人の写真であろうことを前提として
本人の確認をします

そもそも写真と本人の同一性は
こういうことが得意な人は良いですが
あまりはっきりとは
わからなくないですか?

知り合いであれば
本人と写真が
同一人であるか別物であるかはわかりますが

初対面の人とその顔写真が
同一人であるかどうかは

判別するのは難しくないですか?
私だけ?

 

それでも先天的にこのようなことが得意な人がいるらしいです
警察官とか、特に入管の担当官などは
写真(パスポート)と実物のその同一性または
相違がわかるらしいです

経年による変化や
メーキャップやヘアスタイルの状況によって
かなり影響を受けているはずにも関わらず
そのあたりは大丈夫だということだとしたら
一般人の理解をはるかに越えています。

 

つまり、写真は似ていることもあるし
そうでないこともあるので

似ていればよいけれど

似ていないからと言って
本人ではない
とは言えないわけです。

このジレンマをどうしましょう
ということです。

写真がついていない証明書は
とうてい身分証明書とは言えない、とは
思っていますが

写真付きの身分証明書があったとしても
必ずしもそれが本人であることの
確認手段にはならないかもしれない、と
思っているわけです

ただ、モノがあればよいのでしょうか?

と文句を言い立てても、ともかくも
実際に写真付証明書がないとしたら

それはもう仕方ないので、そうすると
年金証書とか保険証などで
確認するしかないわけでそこにやはり
一抹の不安が生じるわけです。

でもしかし
その確認をした場所が本人の自宅であれば
おそらくご本人である蓋然性が非常に高い

と判断してしまいがちです。
これを油断というのかもしれません

 

何度も
ご本人自宅で意思確認をしてきましたが

表札の名と住所と、面前の人が
少なくとも書類上同一であれば
安心できます。

違うこともあります。

初心者の頃はギクリとしました。

先代が死亡しているのに
表札の名前が以前のままだった
それだけです。

 

こんな情けないことで
なりすましが出現したとして
それを見破ることができるものでしょうか

 

怪しいとき

 

写真付きの証明書がないものは
しょうがないです。

権利証もあるし、年の頃もそれくらいだし
嘘を言っているようには見えない。

ですが
こういうときこそ、怪しい
という説もあります。

 

疑うべき、合理的な理由が
見当たらないとき

そんな時でも
人を見たら泥棒と思え、とばかりに
いったんは疑うべきでしょうか

 

詐欺師は嘘つきには見えない、と
言われています

理由は
いかにも嘘をついているような人は
普通に考えて詐欺師としては
やっていけないからです。

 

ですが
人間が嘘をついているときは
嘘をついているように見えるものでは
ないでしょうか

また
真実を告げているときは、やはり
真実を語っているように見えるものでは
ないでしょうか。

 

難しいです。